シネマの達人 ―最新映画星取表― バックナンバー一覧
【バックナンバー vol.2】

チョコレート
猫の恩返し
ピンポン

今回からNidaタキグチさん、山内彩子さん、高野麻結子さんに、 星取表のコメンテーターとして参加してもらうことになりました。いずれも映画が大変お好きな方々ですので、 よろしくお願い致します。なお、このコーナーでは次回から星取表で取り上げられなかった作品や、 映画祭・特集上映・イベントなどのルポ、映像関連の書評、サントラ評、監督や俳優、 映画会社の宣伝担当者のコメントなども紹介していきます。お楽しみに!
星の点数 :  = 1 = 0.5
チョコレート

監督:マーク・フォスター 
出演:ハル・ベリー、ビリー・ボブ・ソーントン
チョコレート

Nida タキグチ
 ★★★★
ハル・ベリーのセックスシーンが印象的。文字通り体当たりの演技はすばらしいけど、長すぎません? と個人的には思う。夫と子を同時期に失くして絶望の淵に立つ女、一方、息子を愛せなかったことを後悔する人種差別主義の男。 二人の心の暗鬱を“息もできない苦しみ”と表現しているのがいい。衝撃的事実を知り、失意の女が見たものは彼の息子のお墓だった。 愛しはじめた男もまた同じ穴の狢であることを悟り、ゆるやかな上昇気流の優しさで終焉。ラストの心の動きが美しい。20代後半以降におすすめ。
山内彩子   ★★★★
お子ちゃま向け映画に占拠されてしまったハリウッドが久々に放った、酸いも甘いも噛み分けた大人のための映画。 ハル・ベリーが、黒人として初のアカデミー賞・最優秀主演女優賞を受賞したことでも話題になったけれど、 ラストで彼女が見せる愛情、絶望、希望などあらゆる感情がこめられた表情を見れば、受賞は当然と納得。 でも、それにも増して素晴らしいのがビリー・ボブ・ソーントンの抑制された演技! もう少し人生経験を積んでから、改めて観てみたい。
高野麻結子  ★☆
「喪失と償いについての映画」と監督は言うが、結局主人公は自殺により息子と、老 人ホームに入れることで父親と決別し、自分が求める愛だけを追いかけていく。その点で償い とは何か、という問いに辿り着いていない。 原題のMonster's Ballは「処刑前の馬鹿騒ぎ」という意味だが、邦題のせいで全体がより甘く感じる。 良かったのは死が日常の一部として 静的に描かれていることとアメリカのアイスは大味だけどたっぷりあって大満足、という2点。
古東久人   ★★★★
「チョコレート」という邦題が絶妙だ。主人公の肌の色、息子の好物、そして愛し合うことになる中年白人男性の好物もなぜかチョコアイス。 ビターな味わい。しかし、ハル・ベリーが美しすぎるため恋愛ドラマとしては予定調和。もし美しくない女性が主人公だったら、ドラマになったかどうか。 男と女が反発しながらもわかり合うようになっていく過程は無理がなく、共感できた。

猫の恩返し

監督:森田宏幸
声の出演:池脇千鶴、袴田吉彦、丹波哲郎
猫の恩返し
日比谷映画ほか全国東宝洋画系ロードショーで公開中

Nida タキグチ
 ★★
ごめんなさい! ファンタジーが苦手な筆者にとってはちょっと退屈でした。ギブリーズの野中くんのほうが身近な存在で面白かったかも? 内容は他のジブリ作品に比べ、ちょっと感動が少ないような気がします。キーワードとなる“自分の時間を生きる”も、焦点がぼやけてる感あり。 凄みがないというか…。でも猫好きや多感な青春時代をおくっている方にはおすすめでしょう。
山内彩子   
前菜のおいしい店は、メイン料理にも期待できる…が、この映画の場合はその逆。「猫の恩返し」の前に上映される短編「ギブリーズ」の時点で、 稚拙な絵と下らないストーリーに続きを見る気を失い、「猫の恩返し」ではひたすら他人に甘えるだけの主人公にまったく魅力を感じられず。 若い世代に挑戦させるためといっても、このレベルの作品を「スタジオジブリ」の名前で出しちゃいけないでしょう、宮崎監督!
高野麻結子  ★☆
「自分の時間」を自分らしくもつ、という本来なら大人も難しいこのテーマがあまりに薄く片付けられている。 まつたけご飯ですよ、と言われてフタを開けたらまつたけ風味のふりかけだけ、のような。 今時の若者はもっときちんと深みにはまる人も多いのでは。ただ、つじあやのが歌う主題歌はよかった。 少し前の時代の間延びした住宅地のような印象。 京都出身で大学で結成したバンドでは鴨川でライブをしたそうで、その空気が曲から伝わってくる。
古東久人   ★★
「耳をすませば」のバロンと、このような形で再会するとは思わなかった。少女の冒険物語としては千尋と同系だが、生きるか死ぬかといった切実さが足りない分、 感動が薄い。このまま猫の世界から抜け出せなかったら、どうなるのだろうといった緊張感もあまり感じられなかった。 大人も楽しめるのがジブリの魅力だったけれど、今回は明らかにお子様向き。

ピンポン

監督:曽利文彦
出演:窪塚洋介、ARATA、サム・リー
ピンポン

Nida タキグチ
 ★★★
窪塚洋介のマッシュルームカットとにんまり笑顔、気味悪いんですよ(笑)。でも、笑い、ファイト、青春…いろんな要素が入った作品で飽きませんでした。 卓球って地味なスポーツなのに、マトリックスばりのカメラワークで(ほめすぎ?)、汗がふきとんだり、人が宙に浮いちゃったり。 軽快でプチ笑い豊富なセリフ回しは、脚本家・宮藤官九郎が手腕を発揮。才能のある人もない人も、人生いろいろ♪でんなぁ〜
山内彩子   ★★★
渋谷のシネマライズで見たせいもあるのかもしれないけれど、観客は若い人ばっかり。でも、この映画は子どもからお年寄りまで楽しめると思うんだけどなあ。 青春、男の友情、栄光と挫折、など極めて王道を行くストーリーだし。松本大洋の原作をできる限り活かしたという宮藤官九郎の脚本は相変わらず独特のおかしさで、 キャスティングも絶妙。とにかく純粋に楽しめる。あれはちょっと…と思っていたヅラの窪塚洋介も、最後は最高にかっこよく見えた。
高野麻結子  ★★★★
ヒーロー、ルービックキューブ、ビンのラムネ……記号的なノスタルジーも、音楽や切り方が現代に翻訳されているから作り手の自己満足で終わっていない。 完成度の高い郷愁、という点ではゲームの「ぼくのなつやすみ」に似たものを感じる。個性的な脇役が一番の魅力で、窪塚のアクの強さを良い意味で殺している。 配役の妙、という以前に市井の人がしっかり 描かれているせいで映画の枠からはみ出していく力を演じる側が持ち始める気がします。
古東久人   ★★★
この映画に期待したのは、脚本が宮藤官九郎だったということに尽きる。去年の「GO」が良かったので、以後、テレビ「木更津キャッツアイ」、 舞台「春子ブックセンター」と追いかけることに。期待通りの作品だったし、当然、これくらいのことはやってくれるだろうという思いもあるが、 試合に勝利したときの盛り上がりがもう一つ。俳優ではスマイル役のARATAが印象に残った。

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