| 本間 | 
「例えばどんなことを後ろ向きに考える?」 | 
 
| 池田 | 
「会社でのことが多いんですけど、最近は会社の直属の上司との折り合いがうまくいかなくて、向こうはどう思っているかは分からないのだけれども、『向こうもどうせ自分の事をよく思ってないから、いいや適当にやっちゃえ』みたいになってしまって」 | 
 
| 本間 | 
「例えば『どうせ好かれてねぇよ』という風に思う、上司との関係性の中で最低最悪の結果というのはどういうこと? 例えばクビになるとか」 | 
 
| 池田 | 
「そうですね……自分にとってクビになるのはそんなに最悪じゃないと。やっぱり(ホームページの仕事をやっているんで)仕事がちゃんとできない、お客さんに迷惑をかける、ということですかね」 | 
 
| 本間 | 
「そうなっちゃったことってあんまりないんでしょ?」 | 
 
| 池田 | 
「そうですねぇ、結局最後はみんなの助けをかりてなんとかやっているんで。ただ、気分的に一緒に仕事をするのがいやだな〜、っていっつも思っちゃってるから……」 | 
 
| 本間 | 
「誰と?」 | 
 
| 池田 | 
「上司と。その上司は仕事できるし、結構周りの事も考えてくれてるんですけど、気分屋なんですよ」 | 
 
| 本間 | 
「なるほどぉ」 | 
 
| 池田 | 
「だから、いいときもあれば悪いときもある」 | 
 
| 本間 | 
「んで、気分の悪いときに当るとどんな風になっちゃうわけ?」 | 
 
| 池田 | 
「怒りだす……」 | 
 
| 本間 | 
「へっへっへっへっへ(苦笑) ちょっとまねしてまねして」 | 
 
| 池田 | 
「『あんた、なんでこんなことしたのよ!!』」 | 
 
| 本間 | 
「それで、そういうこと言われたときにはどんな風に答えるんですか?」 | 
 
| 池田 | 
「最初は『どうしてそんなことをしたのか』って聞かれると『自分はこれこれこう考えてこうしました』って言ってたんですけどぉ、(上司が)聞いてくることが結構核心をついてズバズバ言ってくるんで、自分としては言い返す気力もなくなっちゃって、『はい、分かりました、分かりました』って言ってるだけですね」 | 
 
| 本間 | 
「バッド・コーチングの典型みたいなやつですね。(笑)『お前どうしてそんなことしたのか?』っていうときには、だいたい言いたいメッセージとしては『あなたはこうすべきではなかった』、『ホントはもうちょっとこういう風にやってほしかったのよね』っていうのが多いんだよね」 | 
 
| 本間 | 
「ところであなたが一番いきいきしているときって、どんなときかなぁ?」 | 
 
| 池田 | 
「仕事では、なにか案を考えているとき。自分が自信をもってやっているときはいいんだけど、自信がないとき、忙しくてやっつけ仕事になっているときにはなにか指摘されると、ダメ……」 | 
 
| 本間 | 
「なるほどなぁ。まぁ、あらゆる仕事に会心の出来ができるとはなかなかならないよなぁ。その打率が高いにはいいことはいいけどねぇ。だから、全体をみて考えてみると、うまくいかなかったことだけを考えると暗い気分になる。そういうときには『あっ、ここもうまくいってたな、そこもうまくいってたな、あれもうまくいってたぞ』というのを考えてみる。『自分の才能に酔う』という言葉についてどう思う? いいこと、いけないこと?」 | 
 
| 池田 | 
「どちらかというとあつかましい……」 | 
 
| 本間 | 
「……あのね、自分の才能に酔うことはとてもいいことだから。それはいけないことでもあつかましいことでもないし、自分の才能に酔ったような仕事をしたときにいいものができるし、それが新しい自信に繋がっていくから」 | 
 
| 池田 | 
「自分がこの分野は得意だというのはあるんですよ」 | 
 
| 本間 | 
「何が得意なの?」 | 
 
| 池田 | 
「ホームページで、アニメーションをつくる仕事があるんですよ。それが好きだったんですけど、最近はまわってこない」 | 
 
| 本間 | 
「上司はあなたがアニメーションの仕事をやりたいってことは知っているかな」 | 
 
| 池田 | 
「知っているとは思うんですけど、わたしはまだかけ出しなので、いろんな仕事させてと思っているのかも」 | 
 
| 本間 | 
「デザイナーの世界やアーティストの世界は駆け出しもへったくれもありません。会社全体としてはアニメの仕事は来るの?」 | 
 
| 池田 | 
「アニメといってもほんのちょっとですけど、来てもわたしは自分の仕事で精一杯だから他の人にまわされちゃって」 | 
 
| 本間 | 
「そういうとき、独り言をいうのはどう?『アニメの仕事やりたいなぁ』とか『このアニメかわいいなぁ』とか。そうやって上司の潜在意識に刷り込むように『なんかこの人はアニメ、アニメって呟いてるなぁ』って意識させるの。これはやれそうな感じ、それともそれもちょっと厳しそう?」 | 
 
| 池田 | 
「やってみてもいいかなと思うんですけど、うまくいくかは分からない」 | 
 
| 本間 | 
「とりあえずやってみようよ。……ところで上司は何が好き?」 | 
 
| 池田 | 
「一緒に食事に行くのは好きみたいですけど。食べ物の土産を買ってきたりすると機嫌がいい。職場にいる人はそんなにテンション高くないんですけど、その人だけテンション高め」 | 
 
| 本間 | 
「それじゃ、ちょっと浮いててちょっと寂しい思いしてるかな」 | 
 
| 池田 | 
「たぶん」 | 
 
| 本間 | 
「その上司の人は一人ひとりが熱心に仕事をしている中で寂しい思いをしているんじゃないかと思う。だから仕事中はあなたは仕事のことに集中してていいと思う。ただ、食べ物に弱い人であれば旅行に行くときにその人の好きそうなものを買ってくる。お土産とかは買ってきたことある?」 | 
 
| 池田 | 
「はい」 | 
 
| 本間 | 
「その時上司はどんな顔する?」 | 
 
| 池田 | 
「まぁ機嫌はよさそう」 | 
 
| 本間 | 
「あのね、食べ物につられる人に悪い人はいないから(笑)。そんなに高くなくてその人が喜びそうなものを数百円の予算でいいから」 | 
 
| 池田 | 
「そうなんですか?」 | 
 
| 本間 | 
「だから、仕事以外の時に月に一回くらい、『これ』なんていって渡す。機嫌を取るというといじましい感じがするけれども、関係を良くするために」 | 
 
| 本間 | 
「とりあえず話を整理すると、
 
1、 ミーティング時間の設定というのをあらかじめすること。これは様子を見ながら声をかけやすいときにやってみる。 
2、 『このアニメ、かわいい』と呟くのを続けてみる。 
3、 『こんなの買ってきたんですけど』と食べ物で関係の改善を図る。 
3つ並べてみたけど、僕の提案はおそらくこういうことなんだな。人とコミュニケーションを取ることは多少は面倒臭さが伴う。ただその中で一番面倒臭くない方法と面倒臭くないタイミングでコミュニケーションの量を増やしておいた方が、自分の仕事に打ち込めないよりはいいんじゃないかな」 |