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◎芦田賞
合田 知世さん(香川県立観音寺中央高等学校3年生)


●選んだテーマ「怨望」


私がこのテーマを選んだ理由は、人間の悪い性質について書かれているところに興味を持ったからである。人間の良いところでなく、あえて悪い性質について諭吉の考えが書かれているのをぜひ読んでみたかった。内容は、想像していたものより、はるかに難しく納得のいくものだった。

まず、「怨望」という言葉を初めて目にした私は、一瞬にして疑問を抱いた。それは、私も、または私たち人間が生きているからするであろう他人の幸せを妬んだり恨んだりすることだと分かった。世界中の誰もが、少しでもこのようなことを思ったことがあるだろう。怨望は陰険な性質であり、少し恐ろしいものだと思った。

諭吉の考え通り、自分の不平を満足させようと思えば、ただ世間一般の幸せを壊すだけで、何の利益もない。たしかにその通りだと思った。そして、言っていいウソもあれば、言ってはいけないウソもあり、そのウソが全て、怨望から生じたものではない。

しかし、人間が行う悪事はみな怨望から生じるのだと思うと、人間は恐い生きものだ。そして怨望は何も利益はなく、逆に自分にとって損となるかもしれない。怨望という感情を世界中の人々が全て、コントロールできなくなってしまえば、互いに恨み合い、人間社会は一日も続かないで終わってしまう。しかし、実際にこうして生きているのは、多くの人が自分の感情をコントロールしているからだと思った。

しかし、よくニュースで目にする殺人やデモ隊などは、こうした感情をコントロールできなくて起るものだと思った。諭吉は、世間の最大の災いは、怨望であって、怨望の源が「自由のなさ」から生じていると言っている。よく考えるとそうかもしれない。同じ状況の人間がいるからこそ、その相手より上に立ちたいと思い、自然と怨望が生じるのだ。

もっと自由だと、それぞれの個性を活かし少しでも怨望という感情が表れなくなるのではと思った。元来では、人間は人間同士の交わりを好む性質があるが、それを嫌う人もいるのはたしかだ。そうした隠者は、そうなった理由はそれぞれあるだろうが、自分が苦手と感じたものや、いやなことから逃げているだけだと思った。

諭吉の言う通り、心が弱く、勇気がない。また、人を受け入れることができないのだ。そうなると相手にも自分を受け入れてもらうことができず、うまく人間関係を築くことができずに、世の中で大きな災いとなっていく。そのようなことをなくせば殺人などの事件も起らなくてすむと思った。諭吉は人間の当然の人情をよく理解しており、会えば情が湧き、我慢する気持ちが生れることをしっていた。

諭吉は、この文を通して、多くの人々に、人間関係のうまい築き方を示していたのではないかと思った。自分の周りの人と互いに、隠し事もしないで、互いの本音を出し合ったら、相手を許す気持ちになったり、思いやる心がもてる。そして怨望や嫉妬の感情が消え、誰もが気持ちよく生きていくことができる、と諭吉は教えてくれているに違いない、と感じた。

しかし、生きていくなかでは、さまざまな怨望や嫉妬の感情からは逃げられない。自分もそれを感じることがあれば、逆に自分も相手にそう感じさせていることもあるかもしれない。これを書いた諭吉は、人間の悪の部分も深く理解しており、それの解決策も知っていた。私は、彼の生き方はとてもすばらしいもので頭を使って賢く生きていたのだなと思った。

諭吉の考えは「ああ、そうだな。」と納得のいくものばかりだった。けれど、私は、人間は一人ひとり違う性質を持った生き物であり、みな違う考えを持って生きていると思う。だから、たまには怨望を抱いている時があっても良いと思った。

世界中の人々が自分と向き合い、怨望をうまくコントロールし、強い心の人間へと成長していけたらいいなと考えさせられた内容だった。





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