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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2003年7月7日発行 ━

●━━ 若手国会議員メルマガ『未来総理』 第44号  ━━━━━━━━●

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 今回は、民主党の近藤議員と社民党の福島議員から、「イラク復興支援特
別措置法案」についての原稿が届きました。「イラク復興支援特別措置法案」
は、4日、衆議院で与党3党などの賛成多数により可決。今日から参議院で審
議入りします。
 また、自民党の有村議員は「国連中心主義」の問題点を指摘してくれまし
た。
 みなさまは、イラクへの自衛隊派遣に賛成ですか? 反対ですか?

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  「闘い」について聞いています。自民党の大村秀章議員と、民主党の
  近藤昭一議員による「未来総理」対談も!

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  目次
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 ◎ 「イラク新法」
  ▼近藤昭一(衆議院議員・民主党・愛知)

 ◎ 「自衛隊イラク派遣法、衆議院通過へ」
  ▼福島瑞穂(参議院議員・社民党・比例)

 ◎「万能ではない“国連中心主義”に、現実的視点を」
  ▼有村治子(参議院議員・自民党・比例)

 ◎編集後記
 ◎次号予告
 ◎未来総理メンバーの紹介

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 ■「イラク新法」
      近藤昭一(こんどうしょういち・衆議院議員・民主党・愛知)
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 この文章が掲載される頃には与党の圧倒的多数で「イラク復興支援特別措
置法案」が衆議院を通過していると思う。この法案に対して、私の所属する
民主党は、「イラクの復興に対して何らかの責任を果たさなくてはならない。
しかし、それが自衛隊であってはならない」という立場から修正案を提出し
た。

 先の有事関連法案とは異なり、自衛隊をほとんど戦闘地域としか呼べない
ところに派遣し、武器・弾薬も輸送するという憲法違反の疑いのある行為の
既成事実をのこしたくて仕方のない政府・与党側は修正協議に全く応じるつ
もりはなかった。

 わが国として、自衛隊を派遣することになったのは本当に残念であるし、
今後の展開には大変憂慮しているが、党としてイラク新法に実質的に反対の
立場を表明できたことは正しかったと思う。

 もちろん、危険な地域だから自衛隊を出すべきという意見もある。しかし、
憲法をその都度の解釈や特別措置法によってなしくずしにしていくことは、
間違いだと思う。子どもたちの教育にとっても良いわけはない。さらに、今
回のイラク攻撃の理由として小泉首相が主張してきた「大量破壊兵器」は、
今なお発見されていないのである。

 そればかりではなく、最近になって米英両国では、「米国防総省の情報局
は『大量破壊兵器を持つ確たる証拠はない』という報告書をまとめていた」
「英国政府は、M16・情報機関の集めた機密情報を歪曲し、イラクの兵器が与
える脅威を訴えるため恣意的に使った」など、政府にとって都合のよい情報
操作のために国の情報機関が使われていたという証言の真相をめぐって大問
題が起きているのである。

 もし、そのような証言が事実だとしたら、罪のない多くの生命までも奪っ
た今回の戦争はいったい何だったのだろうか。

 戦争の悲惨な結果に対する何らかの人道的支援を私は全く否定する訳では
ない。しかし、イラクの人々が米英を中心とした、利権目当てとしか映らな
いような復興を心から喜んで受け入れているのだろうか。自分たちにとって
都合の悪い政権を力で撃ち倒し、自分たちの都合の良い政権を打ち立て(実
際は反発が強く打ち立てられないでいるが)、他国の資金を当てにしてその
政権を支援しようというのは間違っている。そんなデタラメなやり方が現地
の人々に受け入れられるはずがない。

 そんな折り、法案の審議の参考になればと東京都在住の写真家、土井敏邦
氏のビデオ(5月13日から2週間イラクのバクダッドにて撮影したもの)を何
人かの仲間の議員と一緒に見た。そこに登場するムスタファ君は、米軍の爆
弾により、両脚を負傷し、回復の見込みのないまま、病院に入院している。
唯一彼を救う道は、医療技術の進んだ国で手術を受けることだという。

 戦争でいつもつらい目にあうのは、弱い立場の子どもたちや普通の市民で
ある。彼一人を救うことは自己満足にすぎないかもしれないが、何とか彼に
手をさしのべたいと仲間の議員とともにカンパ募金の活動を始めた。彼のこ
とを通じてイラク市民にとってイラク戦争とは何だったのかを考えたいと思
うし、彼らのために行動をしたいと思う。

 もちろんフセイン政権によって多くの人々が苦しめられ、生命を失った人
もおられるであろう。しかし、だからといって、米軍のイラク攻撃は正当化
されない。

 ごくごく普通の人々の幸せを実現するためには、自立した民主的な政権が
必要と思うが、占領国イギリスによって、内紛をかかえるように故意にクル
ド人、シーア派、スンニ派を一つの国にさせたイラクが一つにまとまり安定
していく道は険しい。

 出口のない攻撃を米英はしかけたのだと思う。ただ、あるのは、イラクの
人々が自らの力で民主的な国家を立ち上げる支援をすることと思う。ただし、
それは、他の国から軍服を着た人間が出かけていっても決して実現できない。
今こそ、あるべき国連の姿を追い求めなくてはいけないし、そのための努力
を日本はすべきである。


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 ■「自衛隊イラク派遣法、衆議院通過へ」
          福島瑞穂(ふくしまみずほ・参議院議員・社民党・比例)
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 自衛隊派遣法案(イラク復興支援特別措置法案)が、7月4日、衆議院の本
会議で可決した。参議院で廃案にするようがんばります。

 第一に、この法案は「国連安保理決議第678号、第687号及び第1441号並び
にこれらに関連する安保理決議に基づき国連加盟国によりイラクに対して行
われた武力行使並びにこれに引き続く事態を受けて」としていることである。

 アメリカのイラクへの武力攻撃は、国際法違反である。ところが、この法
案によると、10年以上も前に出された決議などを理由に、「決議に基づき
国連加盟国によりイラクに対して行われた武力行使」として、アメリカのイ
ラクへの武力攻撃を正当化している。

 日本の法律で、あの違法なイラクへの武力攻撃を今から改めて「国連決議
に基づいていた」とわざわざお墨付きを与えるのだ。こんな法律はおかしい。

 第二に、自衛隊が地上戦を行うということである。

 日本は、朝鮮戦争にもベトナム戦争にも湾岸戦争にも日本の若者を戦争へ
送らなかった。9.11テロをきっかけに作られたテロ対策特措法ですらインド
洋に海上自衛隊を浮かべ、給油をすることにとどまり、武器・弾薬の輸送は
わざわざ除外されている(もちろん、反対をした法律だが)。

 ところが、今回のイラク新法案は、自衛隊を陸上に送り込むものである。
国会の答弁でも武器・弾薬の輸送は、除外されていない。また、さらに、国
会の答弁でも自衛隊が米軍の輸送をすることは、否定されていない。

 米軍の司令官は、「イラク全域が戦闘地域である」と述べている。米軍と
一体となって行動するのであるから、いつだって地上戦を戦うということで
ある。「人を殺すな、殺されるな」ということから大きく遠ざかってしまう。

 社民党は、イラクへ調査団を送った。イラクの人たちが必要としているも
のは、医薬品や看護師の人たちであった。イラクの人たちは、自衛隊を全く
望んでいないのである。

 第三に、占領行政に加わることは、日本国憲法の禁止する「交戦権の行使」
であり、許されないというものが、つい最近までの政府の解釈であった。こ
れを変更すべきではない。

 第四に、イラクの復興はどうあるべきだろうか。米英軍が石油利権を牛耳
るのではなく、早くイラク人による暫定政権を作るべきではないか。現在は、
全くそうなっていない。「イラク人の、イラク人による、イラク人のための
政治」がなされることを目指して、日本が手伝えることは自衛隊派遣以外に
一杯ある。

 第五に、国会の審議のひどさである。こんなに重要な法案であるにもかか
わらず小泉首相がイラク新法案の国会提出を指示したのが6月7日。法案作り
から衆議院通過まで1ヶ月かかっていない。公聴会も開かれず、衆議院は終
了してしまった。参議院でがんばるしかない。


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 ■「万能ではない“国連中心主義”に、現実的視点を」
           有村治子(ありむらはるこ・参議院議員・自民党・比例)
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《聞こえの良い「国連中心主義」だが・・・》

 こんにちは!有村はるこです。今日は、国連の機能について、考えてみた
いと思います。イラク危機を契機に、私の事務所にも、連日のようにアンケー
ト調査の依頼が、マスコミ各社から殺到しました。調査結果を、統計的に処
理するための便宜上、AかBかの極端な二者択一を迫ってくるアンケート設問
が多く、YESかNOかの二項対立的な設問に対して、持論の意図を正確に伝えら
れないもどかしさを感じることも少なくありません。

 例にもれず、全国の新聞社に記事を配信される大手通信社から受けたアン
ケートの設問に、「今後の日本の外交方針としてあなたは、国連中心主義と、
日米同盟の結束と、どちらをとりますか」という主旨の質問がありました。
この問いに関して私は、「日本の安全・安定を図っていくためには、どちら
も重要な国家戦略であり、両者は、決して取捨選択できる問題ではない」と
の考えを持っています。基本的には、「取捨選択の問題」ではなく、国際情
勢における日本の立場と国益を勘案してウエイト付けする、「優先順位の問
題」だと、とらえています。

 以前野党議員が、「イラク危機は、国連を中心に解決せよ」という論旨の
寄稿をされていましたが、「国連こそは、信義や公正によって、正常に機能
してほしい」という私たちの思惑とは裏腹に、「どういう選択が、自国の将
来的な国益になるか」と各国がしたたかに思案し、国連が、その利害対立を
露呈させる場と化している現実にも、目を向けなければなりません。

《国連は、各国の国益が露骨にぶつかりあう交渉の場》

 最近の例で言えば、国家的に拉致をしてきた北朝鮮の人権状況に対する非
難決議が、国連人権委員会にて提案されたところ、拉致問題を「許されない
人権侵害だ」とする決議に賛成したのが、当事国の日本を含む28ヶ国(Aグ
ループ)。驚くべきことに、この非難決議に反対した国が、ロシア・シリア
・中国を含む、10ヶ国(Bグループ)。そして、この決議の採決に対して棄権
し、立場を明らかにしなかったのが、パキスタン・タイ・インドなど14ヶ国
(Cグループ)ありました。

 このBグループ・Cグループに属する国は、武器輸入を通して北朝鮮と相互
依存の関係にあったり、北朝鮮による国家的な拉致を非難すれば、自国内に
おける少数民族への人権侵害まで問題視され、国連で非難されることをおそ
れるなど、それぞれの「個別事情」を抱えた国であり、(北朝鮮自身が認め
た)国家的拉致すら、非難しない立場をとっています。

 一般的な日本人の感覚からすると、本人の意図とは関係なく突然日本国内
で誘拐され、家族や祖国と四半世紀も隔離され、北朝鮮で住まわされた人々
が、著しい人権侵害を受けてきた被害者だと判断するのは、当然のことです
が、こんな正論すら、まかり通らないのが、自国の国益を軸にして動く国連
加盟国の実態だということを思い知らされます。

《日本が多額の税金を拠出する国連と、その加盟国の現実》

 さらに驚くべきことに、中国・ベトナム・マレイシアなど、拉致を非難し
ない(できない)国に対して、日本からは100億円単位の巨額のODA(政府開
発援助)をしているケースも、少なくありません。私も含め、この事実に対
して問題意識を持つ自民党の「安全保障政策議員連盟」が、各国の駐日大使
館を通して、「国連の人権侵害決議にどうして賛成しないのか」を調査中で
すが、拉致問題の国際的認知度を上げていくことは、(北朝鮮による核疑惑
等への対応ばかりに追われて、国際交渉の議題から拉致問題が、かき消され
るような事態を未然に防ぐためにも)重要で、日本の国益にかなう行動です。

 国連の安全保障理事会(安保理)の常任理事国は、国連が創設された当時、
構成員となった第2次世界大戦の戦勝国───米・英・仏・ソ連(現=ロシ
ア)・中国となっていますが、日本が税金を使って国連に拠出している年間
の金額約321億円(2003年)は、米国以外の常任理事国4カ国の拠出金を全て
合算した金額よりはるかに多く、現在191ヶ国が加盟する国連の経費の約2割
を、日本からの拠出金が、まかなっているという計算になります。

 しかも国連憲章には、日本・ドイツ・ハンガリー・フィンランド等、約60
年前に連合国と交戦状態にあった国々を「敵国(enemy state)」と定め、
それら敵対国への対応について、当時のままの姿勢が明文化されている、い
わゆる「旧敵国条項」なる条文が、現存されたままになっています。

《万能ではない国連に抱く「幻想」を乗り越えて》

 誤解が生じないように明言しますが、私は今でも、理性を以って、国連の
機能を高めてもらいたいと願う日本国民、議員の一人です。しかしイラクを
めぐって国連の安全保障機能が空転し、機能しないことを世界に強く印象付
け、(国連による協働歩調が取れなくとも)アメリカ主導の一国主義によっ
て、「一定の結果(『勝ち組』・『負け組』)」が出された現実が世界的に
認知された以上、「この難題は国連主導で解決せよ」と決まり文句のように
唱えてみても、問題解決への手順を示し正論を述べたと評価される時代では
ありません。この現実を、与野党共に受け入れ、国際政治において日本が持
つ現実的な交渉力を高めていく方法を打ち出していくべき時期に来ています。

 日本から発信可能な国連改革の具体例を考えると、

●「旧敵国条項」の明確な削除も含め、日本の国連拠出金に見合った、発言
力を持っていくこと

●発言力が勝ち取れないのであれば、日本の国連拠出金の是非についても、
活発な議論を醸成していくこと

●国連が国際問題を解決する上で、難民救済や教育・医療分野など、人道的
な貢献で効果を挙げている分野は評価・支持する一方、「政治的解決を図る
場」という国連の機能に関しては、希望的な過大期待を持たず、万能でない
国連に求める機能を、現実的に選別していくこと

等が挙げられます。国連と日本の関係については、観念や印象論だけではな
く、事実に基づいた検証を交えて、最善の有り方を探り、今後とも引き続き
発信していきたいと思っています。


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  編集後記              弘中百合子(ロゼッタストーン)
────────────────────────────────☆★
 「国際的貢献をしたい」という気持ちは同じでも、具体的にどう行動する
か、という点で、与党と野党では意見が大きく違っています。視点の違う意
見がじっくり読めるのは、「未来総理」ならではですね。

 さて、みなさまは、「イラク復興支援特別措置法案」や国連の現実につい
て、どのように感じましたか?

 ご意見、ご質問は souri@rosetta.jp までお気軽にどうぞ。

 ※掲載を希望されない方、実名をご紹介してもかまわない方は、ひとこ
   とお書き添えいただけると助かります。また、ご意見を紹介してもよ
   い場合は、年齢、職業なども書いておいていただくと、参考になりま
   す。ご協力、よろしくお願いいたします。


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  次号予告
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 来週は、大村秀章議員(自民党) 山村健議員(無所属)
 植田至紀議員(社民党) 細野豪志議員(民主党)
 が登場します。

 ※登場する議員は、変更する場合もあります。ご了承ください。


◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  未来総理メンバーの紹介
   ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
「未来総理」に参加してくださったのは、次の19名の方々です。(敬称略)

 ◇衆議院
  石破 茂(自民党・鳥取)     上田 勇(公明党・比例南関東)
  植田至紀(社民党・比例近畿)  大村秀章(自民党・愛知)
  近藤昭一(民主党・愛知)    鈴木康友(民主党・静岡)
  達増拓也(自由党・岩手)    樽床伸二(民主党・大阪)
  野田佳彦(民主党・千葉)    春名直章(共産党・比例四国)
  細野豪志(民主党・静岡)    丸谷佳織(公明党・比例北海道)
  山井和則(民主党・比例近畿)  山村 健(無所属・比例東海)

 ◇参議院
  荒木清寛(公明党・比例)    有村治子(自民党・比例)
  小池 晃(共産党・比例)    福島瑞穂(社民党・比例)
  宮本岳志(共産党・大阪)

詳しいプロフィールを知りたい方、顔写真を見たい方は、ロゼッタストーン
WEBページで公開しています。⇒ http://www.rosetta.jp/
各議員のホームページにもリンクしています。


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発行人・編集人:弘中百合子
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