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━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2005年3月28日発行  ━

●━━ 若手国会議員メルマガ 『未来総理』 第129号  ━━━━━━●

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 3月も終わりに近づき、日中はだいぶ暖かくなりました。
毎日歩きながら歩道の桜を見ては、つい、つぼみが大きくなってきているか
チェックしてしまいます。満開の桜を見ることができるのは、一年でたった
1週間程度ですから、見逃すまいという気持ちがあるのかもしれません。そろ
そろお花見の準備などを考えている人も、多いのではないでしょうか?

 今回は松下新平議員から「憲法改正」についての原稿が届きました。

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   鈴木康友議員(民主党)、松下新平議員(無所属)にも
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  目次
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■「憲法改正について」
        松下新平(参議院議員・無所属・宮崎)

◎編集後記
◎次号予告
◎未来総理メンバーの紹介

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■ 「憲法改正について」
            松下新平(まつしたしんぺい・参議院議員・無所属・宮崎)
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 私は、参議院憲法調査会のメンバーでもあります。憲法改正についての論
議が毎日行われていますが、議論が白熱して何でもかんでも憲法に期待した
り、悪いことを憲法だけに押し付けたりと議論がエキサイトしておかしな方
向にいくこともしばしばあります。
「そもそも憲法とは」このことを常に念頭に置きながら、責任ある議論をす
るのは当然の役目です。そこで、今回は、憲法の存在理由、すなわち何故に
憲法が制定されたか、そして何故に最高法規であるのかについて考えてみた
いと思います。

「憲法には権利ばかり列挙されていて、義務が少なすぎる」とか、「憲法は
将来、この国が進むべき方向を指し示すもの」との発言に接する度に、私は、
私たちのこの国に「法の支配」を確立できるのは一体何時になるのか、と失
望感さえ覚えます。
 時折引き合いに出されます、聖徳太子の17条憲法は、今、私たちが議論
すべき対象である憲法とは、似て非なるものであることを確認したいと思い
ます。

 何故17条憲法が、憲法ではないのか、その答えはフランス人権宣言16
条の「すべての権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていない社
会は、憲法を持つものではない」という表現に尽くされています。すなわち、
憲法は国家権力という、リバィアサンを制限し、これによって、国民の人権
を保障するために、すなわち国家権力に対する制限規範として存在していま
す。国家権力に対する制限こそ、憲法の存在理由ですから、憲法は決して政
治の心構えや、将来の目標を表現したものではありません。
 かかる意味での憲法は、17条憲法などと区別するために近代憲法と呼ば
れ、政治が近代憲法に基づいて行われることを立憲主義と呼んでいます。

 私たちは決して1人で生きて行くことはできません。それ故に、共同生活
を営んでいますが、共同生活には一定のルールが必要であり、したがって、
ルールを定めて、それを人々に強制できる力、すなわち権力も、ある意味で
は不可欠です。
 しかし、権力は、権力を支配する者の利益のために濫用されるという、不
可避の性質を有しています。それ故に、権力を制限し、拘束する仕組みが必
要になります。その仕組みが立憲主義です。
 専制政治を否定し、個人の尊厳を中核とする市民社会が成立した後、広く
世界中で、この立憲主義が統治の基本原則として承認されるに至りました。

 立憲主義のもとでは、「人」による統治、すなわち時の為政者の恣意によ
って左右される専制政治に代わって、「法」による統治が行われます。この
法による統治の要請を、ヨーロッパ大陸では法治主義、特に法律に基づく行
政として実現しようとしました。
 しかし、法治主義においては、法律の内容の正当性は議会の判断に委ねら
れることになり、議会そのものが専制的勢力に支配されると、人権保障が空
洞化してしまいます。ナチスドイツによる人権侵害が、議会によって制定さ
れた法律に基づいて実施されたという歴史的事実は、法治主義の限界を指し
示しています。

 専制的勢力に支配されるまでに至らなくとも、全知全能の神ではない、我
々人によって構成される議会にあっては、善意に基づく過誤によって、例え
ばらい予防法のように、人権を侵害する内容を含む法律が制定される可能性
を否定することはできないという真実を、私たちは謙虚に自覚したいと思い
ます。

 法治主義に対して、英米法における「法の支配」は、法律の内容や、手続
きの正当性も要求し、法の支配のもとでは、人が生まれながらに、人である
ことに基づいて当然に享有する基本的人権は、行政権力によってはもちろん、
国会が制定した法律によっても侵害されてはならず、この意味で国会の立法
権も、憲法という最高法規によって制限されます。

 現行憲法は、第81条において法律を含めて憲法適合性を判断する権限を
司法裁判所に付与し、第98条第1項において法律も含めて憲法に違反する
国家行為の無効を宣言しています。したがって、現行憲法においても、法の
支配をその基本原理の1つを構成しています。

 私は、憲法改正に当たっては、この人類の歴史的所産と言うべき、法の支
配について絶対に後退させてはならず、むしろ、さらなる貫徹を図ることこ
そ、第9条も含めた憲法改正議論の大前提に位置付けなければならないと考
えています。

 以上の通り、国会の立法権も含めて、憲法が示した国家権力の限界は、国
民の側から見れば「人権」という名前で表現されています。したがって、人
権規定を列挙することにこそ、憲法という法の存在理由があります。
 憲法という法の成り立ち、歴史的経過に照らして、国民の義務を列挙する
ことは、近代憲法の役割ではありません。現行憲法第30条は納税の義務を
規定していますが、憲法という思想が誕生する以前の、太古の昔から人々は
税金を課されており、憲法第30条によって義務が創造されたはずもありま
せん。

 そもそも権利と義務の性質に照らしても、私法上の契約においては、例え
ば売買契約における売り主の代金請求権と、目的物引渡義務のように、権利
と義務は対になっています。
 これに対して、憲法第26条第2項が定める、義務教育を受けさせる義務
を果たしたとしても、同第27条第1項が定める、勤労の義務を果たしたと
しても、同第30条が定める納税の義務を果たしたとしても、法律上の対価
関係に立つ給付を受けることはありません。したがって、憲法上の権利と義
務とは対にはなりません。
 
 このように人権規定がいくつあるから、その数に応じて義務の規定も置か
なければならないという発想は、結局、憲法や立憲主義、法の支配の成り立
ち、憲法の制限規範性に照らしても、権利、義務の性質に照らしても、明ら
かに間違っていると考えます。

 これから、参議院憲法調査会では、4月の取りまとめに向けて最終段階に
入っていきますが、責任ある議論をして参りたいと思います。

 ◆松下新平ホームページ http://www.shinnpei.com/

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 編集後記                吉永歩 (ロゼッタストーン)
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 「聖徳太子の17条憲法」。私も歴史の授業で習ったと思うのですが、お
恥ずかしいながら、かすかに名前に聞き覚えがあるくらいで、どんなものか
というところはすっかり抜け落ちていました。どんなものだったか調べてみ
たのですが、基本的に官僚の心得を厳しく説いたものだったようです。

 今回松下議員の原稿にもあったように、私も「憲法」というものは、なん
となく国民の権利や義務を規定しているものかと思っていましたが、もとも
との位置づけは違うものだったようです。「国家権力に対する制限こそ、憲
法の存在理由です」という一文を見て、確かにそうだなと思ってしまいまし
た。どんな人であれ、何がしかの権力を持った時に、果たして感情や欲望に
惑わされずにいられるかといったら、難しいのではと思います。程度の差こ
そあれ、人間という生き物は、自分のいい様に力をふるいたいと思うのでは
ないでしょうか?

 そういう意味で、「憲法」というものが私たちの生活をある程度保障して
くれ、尚且つ権力の暴走を防ぐものになってくれるよう、議員の方たちには
頑張ってほしいです。


「未来総理」へのご意見、ご質問は souri@rosetta.jp までお気軽にど
うぞ。

 ※掲載を希望されない方、実名をご紹介してもかまわない方は、ひと
  ことお書き添えいただけると助かります。また、ご意見を紹介して
  もよい場合は、年齢、職業なども書いておいていただくと、参考に
  なります。ご協力、よろしくお願いいたします。

★☆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 次号予告
────────────────────────────────☆★
 次回の配信は、4月4日です。

 石破 茂議員(自民党)  近藤昭一議員(民主党) 
 鈴木康友議員(民主党)  福島瑞穂議員(社民党)
 達増拓也議員(民主党)

 が登場する予定です。

 ※登場する議員は、変更する場合もあります。ご了承ください。

◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 未来総理メンバーの紹介
  ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
 「未来総理」には、超党派の28名が参加しています。   (敬称略)

◇衆議院
  石破 茂(自民党・鳥取)    上田 勇(公明党・神奈川)
  大村秀章(自民党・愛知)    吉良州司(民主党・大分)
  楠田大蔵(民主党・比例九州) 近藤昭一(民主党・愛知)
  近藤洋介(民主党・比例東北)  鈴木康友(民主党・比例東海)
  達増拓也(民主党・岩手)     樽井良和(民主党・比例近畿)
  樽床伸二(民主党・大阪)    手塚仁雄(民主党・東京)
   中塚一宏(民主党・神奈川)   中根康浩(民主党・比例東海)
  長島昭久(民主党・東京)     西村康稔(自民党・兵庫)
   福島 豊(公明党・大阪)   三日月大造(民主党・滋賀)
   細野豪志(民主党・静岡)   丸谷佳織(公明党・比例北海道)
   山井和則(民主党・京都)

 ◇参議院
  荒木清寛(公明党・比例)    有村治子(自民党・比例)
  小池 晃(共産党・比例)   桜井 充(民主党・宮城)
   福島瑞穂(社民党・比例)   藤末健三(民主党・比例)
  松下新平(無所属・宮崎)

詳しいプロフィールを知りたい方、顔写真を見たい方は、
ロゼッタストーンWEBページで公開しています。⇒未来総理プロフィール
各議員のホームページにもリンクしています。

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発行人:弘中百合子 編集人:吉永歩
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