「ヴィーナスはぁと」バックナンバー バックナンバー一覧
←次の号を読む 前の号を読む→
2002年2月7日発行(毎週木曜日配信)
    ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏

          女性国会議員メルマガ『ヴィーナスはあと』 第12号【後編】

    ┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏┏

  ***   ***  前編に引き続き、ヴィーナス議員たちが「田中真紀
 *****v*****  子外相の更迭」をどう見ているかをお伝えします。
 ***********  今回の更迭劇は、議員たちの間でも驚きの結末だった
  *********  ことがよくわかります。
   *******  後編では、共産党の吉川春子議員、社民党の福島瑞穂
     ***   議員、山内惠子議員、民主党の岡崎トミ子議員、共産
      *  党の八田ひろ子議員、中林よし子議員、自由党の武山百
    合子議員の意見をご紹介します。


■◇■=============================================================
「小泉総理の“女の涙”発言は、問題の本質のすり替え」
 吉川春子(参議院議員・共産党・比例)
--------------------------------------------------------------------
 1月29日深夜、田中真紀子外相、野上外務省次官が更迭され、また鈴木
宗男議運委員長も辞任しました。事の発端は1月21日から東京で開かれた
アフガニスタン復興支援国際会議で外務省が、日本のNGO(非政府組織)の
会議への出席を拒否したことにあります。

 国際会議に政府だけでなくNGOが参加するのはいまや常識です。アフガン
復興でも日本NGOの果たす役割が期待されています。それをアフガン支援で
も実績があるNGOが「政府に批判的」ということで参加拒否されたのですか
ら、日本の外交姿勢が問われてしかるべきものでした。

 ところが外務省に圧力をかけた鈴木議員、政治家の圧力に負けた事務次官
の辞任のみならず、NGO排除をやめさせた田中外務大臣まで更迭したのです
から、国民の批判は高まるのは当然と言えます。

 1月25日田中外務大臣は「野上氏や、中東アフリカ局長が鈴木氏の関与
を自分に説明した」ことを自民党国対委員長に説明。その直後記者に「残念
です。役所のつくったもの、言うことが全部正しく、国会議員の言うことは
正しくないんですか」と涙ながらに語りました(朝日1.25.)。気の強
い(失礼!)田中真紀子さんは相当悔しかったのでしょう。それをまた、小
泉総理は「女の涙は最大の武器、というからね」と茶化したのです。総理は
NGOを排除したことへの反省はなく、まるで他人事のようです。

 29日、私は野党女性議員20人と共に総理官邸に行き「これはセクハラ
発言である」と抗議し、撤回を求めました。私をがっかりさせたのは「女の
涙発言」の感想を問われた女性大臣達の予算委員会での迷答弁です。そこに
問題の本質のすり替えに協力するという、権力者の男性への迎合を感じたの
は私だけでしょうか。

「私はすばらしい男性の前で涙を流し『女性の武器だ』と言われてみた
い。」「(女性の涙は最大の武器とは)本当ではないでしょうか。男性に泣
かれると女性もとても弱い。」「感情を率直に表すのも魅力の1つ」などな
ど。

 後任の外務大臣は、緒方貞子元国連高等弁務官に断られ、件(くだん)の
迷答弁の当事者・川口順子環境大臣が任命されました。小泉総理はあくまで
女性登用で「高支持率」を維持したいのでしょうが、総理の女性観がこの程
度のものであったかとがっかりさせられた国民も多いと思います。


■◇■=============================================================
「今回の決着はケンカ両成敗ではなく、田中外相の切り捨て」
 福島瑞穂(参議院議員・社民党・比例)
-------------------------------------------------------------------
 1月29日、夜中の12時過ぎに更迭を聞き、驚くと同時に許せないと思っ
た。

予算委員会の審議の中で大激論になった重要な点は、外務省がNGOを排
除しようとしたかどうか、そのことについて国会議員の圧力があったかどう
かである。このことについて、NGOの人たちは、「鈴木宗男氏に挨拶に行
くように言われ」、行って怒鳴られたと述べている。

 役所と対等なパートナーであるはずのNGOを、役所や政権などへの批判
をさせず、役所の言いなりになるものと考える外務省は本当におかしいし、
21世紀の行政の在り方とは思えない。また、外務省に対して強い権限を持
ち、ODAなどに利権を持っているとも言われる鈴木宗男さんが圧力をかけ
たこともおかしい。

 この問題で田中眞紀子外相には、全く何も問題がない。むしろそういうこ
とを糺し、役所と政治家の癒着を改善していこうとしたのである。

 以前、田中外相が機密費のことを明らかにしようとしたことで、内閣、官
房、外務省とバトルが発生した。

 今回の件も、臭いものに蓋をしたとして真相究明をさせないようにしたも
のである。

 30日からは、参議院の予算委員会が開かれたが、結局田中眞紀子さんを外
相として出席させないために辞めさせたのである。福田官房長官と小泉総理
は、田中外相を辞めさせることで鈴木宗男氏を守った。

 ケンカ両成敗と言われているが、ウソである。鈴木さんは、議員運営委員
会の委員長を辞めても、いずれまた何かのポストにつくだろう。野上事務次
官も農水省の事務次官のように多額の退職金をもらって辞めて、その後また
別のポストにつくだろう。しかし、田中眞紀子さんは、外相をやめさせられ
たら、次はないのである。今回の人事は、とにかく田中外相は切り捨てなの
である。

 外務省も内閣官房も自民党も伏魔殿であり、福田官房長官も小泉総理も改
革を阻む抵抗勢力である。小泉改革の馬脚が現れたと思う。

 国会は、真実追及の場でもあるべきなのにむしろ蓋をしようとしたことも
少し前述したが、まったく許せないことである。NGOの大西さんと、鈴木さん
はきっちり国会に参考人招致をすべきである。

 小泉総理の「女の涙は、武器だ」発言もひどい。田中さんは悔しくて涙が
出たのにそういう言い方をするのは、結局、議員や大臣すらも「女」としか
見ていないのではないか。

 去年、「加藤の乱」の時に、加藤紘一さんも側近もみんなビービー泣いた。
あれを、「男の涙は武器だ」とは言わないだろう。小泉さんは、女性雑誌で
語っているように、「都合の良い女が好き」なのだ。(ところで、人のこと
をこういう言い方をするかな)。

 田中さんは、人気取りのために都合が良かったが、外務省改革をしようと
するので、都合が悪くなったのだ。今まで女性と対等な関係を築いてこなかっ
たのではないか、と思ってしまう。

 ところで、4人の女性閣僚が、参議院の予算委員会で、「女の涙は武器だ」
と言う発言について、問われて答えたことには、本当にあきれてしまった。
川口さんは、「私も素晴らしい男性の前で涙を流して、女性の涙は武器だと
言われたい」と、思いっきりわざと話をずらしたことには怒りを感じた。そ
の場にいた与党の男性議員たちはやんやの拍手。小泉総理もにんまり。まさ
かその功績が認められて、外務大臣になったのではないでしょうね。

 国会の中で、とことん真相を究明し、ODA疑惑についても大いにメスを入れ
たい。また、政治家と役所、政治家とお金の癒着を断ちきるべく、真の意味
の政治改革をやっていきたい。


■◇■=============================================================
「なぜ、田中外相は更迭で、武部農水相は守るのか?」
 山内惠子(衆議院議員・社民党・北海道)
-------------------------------------------------------------------
 時間がないので少しだけ、私の意見を書きます。

 今回の小泉総理の判断は、大きな間違いを犯したと思います。いま、世界
は、政府代表とNGO代表は対等な関係であることを大事にしています。特に、
アフガンの復興にむけて、日常的に、現地の状況を把握し、人々が何を求め
ているのかをよくわかっているのは、NGOの方々です。

 特定の政党の、特定の議員の圧力で、NGO代表の参加を排除してはならな
いことでした。具体的に活動しているのはNGOの方々だからです。田中大臣
は、排除したことを知らされていませんでした。このことは、官僚の責任で
す。

 そのことを知った田中大臣は、2日目だけでもと参加できるように努力を
したのです。NGO問題で、更迭されなければならない理由はありません。

 実は、今日(5日)の国会で、野党は、武部農林水産大臣の不信任案を提
出しました。与党の反対で否決されました。

 BSE問題(狂牛病)問題の責任をとらない大臣を守って、正しい主張をし
た田中真紀子大臣を更迭した小泉首相は、間違いだらけの選択をしてしまい
ました。今後の政局に大きな影響がでてくると思います。v

■◇■=============================================================
「外務官僚のまともでない国際感覚を知って、傷ついたのは国民です」
 岡崎トミ子(参議院議員・民主党・宮城)
-------------------------------------------------------------------
 小泉首相は「私が一番傷ついている」と発言しましたが、今回のことで傷
ついたのは国民です。報道各社が世論調査を行った中で、いくつか興味深い
アンケート結果をご紹介します。

それは、
 (1)田中前外相の更迭について「当然18%」「おかしい75%」
 (2)野上前次官の更迭について「当然72%」「おかしい15%」
 (3)鈴木議員の委員長辞任について「当然87%」「おかしい6%」
となっています。

「お上」意識丸出しの、とてもまともとは言えない外務官僚の国際感覚に
、 国民が恥ずかしさを感じていることが見えてきます。

 1000万個と言われているアフガニスタンの地雷撤去作業に主として関わっ
てきたのは世界のNGOです。18年前からパキスタン・アフガニスタンに病院
と診療所を設立して、年間20万人の患者さんを診てきた「ペシャワール会
(代表・中村医師)」をはじめ、NGOこそアフガニスタンを支えてきたのは
明らかです。

 中村さんたちが「テロ」への報道が始まる昨年の10月まで井戸を掘り続
け、空爆の真っ最中にもアフガン国内の住民に食糧を届ける努力を続けたこ
とを、外務官僚や鈴木議員は知っていたのでしょうか。NGOをどうとらえるの
か、このことが問われているのです。

 高野孟(インサイダー編集長)さんは、2000年からの大旱魃でWHO(世界
保健機構)が400万人を越えるアフガニスタン人が飢餓に直面していると警
告を発したのに世界の先進諸国が無視したと指摘しています。

 中村さんは「アフガニスタン中に小麦をあふれさせることが最大のテロ対
策」と主張されています。地道に活動を続けてきた日本のNGOは私たちの誇り
ですし、アフガニスタン復興こそ、日本が大いに力を発揮できる得意な国際
貢献の分野です。このことを信じて頑張っていきましょう。


■◇■=============================================================
「道理に合わない政治を変えるのが改革のはずなのに…」
 八田ひろ子(参議院議員・共産党・愛知)
-------------------------------------------------------------------
 田中外相を更迭したことは、ひとくちに言って、真相をヤミに葬る間違っ
たやり方です。

 国会の場(参院・予算委員会)での日本共産党の質問に、NGO排除をやめ
させた田中前外相の対応を「正しかった」と小泉首相は答弁しています。鈴
木宗男議員の関与についても、「まあ、そんなもんですね」(このようない
い加減な答弁もゆるせませんがー八田)と述べ、認めています。

 それなのに事を起こした張本人の委員長辞任には敬意を表し、正しい事を
した人を辞めさせるなんて、小泉首相の正体見たり! です。

 自民党の族議員が行政を私物化し、ゆがめてきた従来のやり方を国民にわ
からないよう、うやむやにし、隠し通せると思っているようです。

 自民党族議員が日本の外交まで私物化し、「言うことを聞かないNGOは排
除せよ」とゴリ押しする、こんな道理に合わない政治を変えるのが改革のは
ずなのに、小泉流「改革」はまやかしというのがはっきりしましたネ。


■◇■=============================================================
「真相をやみに葬らず、徹底的に明らかにするべき」
 中林よし子(衆議院議員・共産党・中国)
 武山百合子(衆議院議員・自由党・北関東)
--------------------------------------------------------------------
 このほか、共産党の中林議員と、自由党の武山議員からもコメントをいた
だきました。

「外務省に不当な圧力をかけた鈴木議員と、その圧力に屈服して大臣に相談
もせずNGO排除を決めた野上外務事務次官をやめさせるのは当然です。一方、
田中さんはこれを是正してNGOを会議に出席させるために動いたのですか
ら、正しいことをしたのです。けんか両成敗で痛み分けというのは,全く道
理にあいません。白黒をうやむやにして,真相をやみのなかに葬るという,
間違ったやりかただと思います」(中林よし子)

「本質を明らかにしないで、辞めさせて封印するのは自民党流の密室政治そ
のもの。公聴会を開き、真相を明らかにするべきです」(武山百合子)

 真相究明は誰もが望むところ。ヴィーナス議員の方々には、ぜひ頑張って
ほしいものです。


◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  「ヴィーナスはあと」参加議員一覧
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
「ヴィーナスはあと」に参加してくださったのは、次の18名の方々です。詳しいプ
ロフィールを知りたい方、顔写真を見たい方は、ロゼッタストーンホームページで公
開しています。⇒ http://www.rosetta.jp/

 ◇衆議院
  川田悦子(無所属・東京)  瀬古由起子(共産党・東海)
  武山百合子(自由党・北関東)  中林よし子(共産党・中国)
  松島みどり(自民党・東京)  水島広子(民主党・栃木)
  山内惠子(社民党・北海道)  山口わか子(社民党・北陸信越)

 ◇参議院
  有村治子(自民党・比例)  井上美代(共産党・東京)
  岡崎トミ子(民主党・宮城)  小宮山洋子(民主党・比例)
  千葉景子(民主党・神奈川)  西山とき子(共産党・京都)
  八田ひろ子(共産党・愛知)  広中和歌子(民主党・千葉)
  福島瑞穂(社民党・比例)  吉川春子(共産党・比例)

  計18名(敬称略)


◇◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  編集後記
 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━◇◆
 先週、「次回は『官僚改革』(外務省問題・狂牛病問題など)がテーマ」
と予告しましたが、スペースの関係で、今回は「田中外相更迭問題」に絞っ
て意見をご紹介しました(それでも、前後編に分かれてしまいましたが)。
みなさん、率直な意見を語ってくれたと思います。このパワーで、国会を
「真実を語る場」に改革してほしいですね。

 それにしても、国民が怒っているのは、自民党や官僚の旧い体質なのに、
小泉首相が追いつめられるほど「抵抗勢力」が元気になる、という構図は
やっぱり変だなあと思います。いっそ自民党が「改革党」と「抵抗党」に分
裂してくれればすっきりするのですが。

 また、小泉支持が減っても、野党の人気が高まっていないのはどうしてで
しょう。野党に足りないものがあるとしたら、どういう点なのでしょうか。

 みなさまからのご意見、ご質問は、私が責任をもって議員の方々に届けて
います。「ひとこと言いたい!」「これを聞きたい!」という方は、どうぞ
お気軽にメールをお寄せください。(ロゼッタストーン・弘中百合子)

 ご意見、ご質問は vheart@rosetta.jpまでお願いします。


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
■次号予告
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
次回は「日本の牛肉は本当にもう安全なのか?」「国会での質問や答弁は、
実際は官僚が作っているって本当?」といった質問にお答えします。

  ◆中林よし子(共産党)
  ◆川田悦子(無所属)
  ◆山口わか子(社民党)
  ◆松島みどり(自民党)
  ◆小宮山洋子 (民主党)
                  ほか


===========================================================================
女性国会議員メルマガ『ヴィーナスはぁと』
 編集長:ロゼッタストーン 弘中百合子
 発行 :株式会社ロゼッタストーン
     (〒171-0021 東京都豊島区西池袋5ー27ー9ー101)
Copyright(C)ロゼッタストーン 許可無く転載することを禁じます
←次の号を読む 前の号を読む→
配信登録・中止




▲ページTOPへ
Copyright (C) 1999-2004 ROSETTASTONE. All Rights Reserved.