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第19部 「足腰を鍛える」


女編集長起業奮戦記
ロゼッタストーン日記
ついに書籍化!
「ロゼッタストーン日記」第1部(ロゼッタストーンは本当に創刊できるのか)が、
『女編集長起業奮戦記』という本になりました!
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いつもご愛読ありがとうございます。

会社創立前から始めて、今年で19年目を迎えたロゼッタストーン日記。今年のテーマは「足腰を鍛える」にしました。
自分自身も会社としても、基礎を固め、少々のことでは揺るがない状態にしたいと思います。

なお、今年からロゼッタストーン日記は、毎月15日に更新します。「日記」というより「月記」になってしまって恐縮ですが、その分、中身の濃い情報をお届けできるよう頑張ります。

今年もハラハラドキドキ、ロゼッタストーン日記をよろしくお願いいたします。

ロゼッタストーン 弘中百合子


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◆テレビショッピングの誘惑…5月15日日記
決まった番組以外、そんなにテレビを見ないのだが、たまに深夜テレビをつけてテレビショッピングを見てしまうことがある。そこでは、紹介する商品がいかに素晴らしく効果が高いかをこれでもかと繰り返し放送している。(絶対こんなに効果があるわけないよね…)と思いつつ、(買うとしたら3000円以下かな…)とか(1万円以下でなきゃこんなのいらないわ…)と、価格をつい想定する。

そんな消費者心理をうまくついて「いまから30分以内に限り2980円!さらにおまけで…」とか、「なんと価格はいまだけ9800円!先着●名様限り」などと、番組ではちょうど手頃な価格を示して煽ってくる。「もし、効果がなかった場合は、●日以内であれば、全額返金します!」といわれれば、「気に入らなかったら返せばいいんだしね…」とさらにハードルが下がる。

……というわけでGW前に買ってしまったのです。私、「3分ゆ〜らゆ〜ら♪ながらウォーク」という器具。「倒れるだけで腹筋ワンダーコアー〜♪」の成果がまだ全然出ていないのにも懲りず、とほほ。

番組では、パンツがぴっちぴちでファスナーが上がらない女性が、3分ながらウォークするだけで、きつかったパンツがはけるようになる場面が次々に流れていた。もちろんテロップに「一時的な現象です」とか「個人によって使用感に差があります」という注意書きは書いてあるのだけど、本当にそんなことがあるのかしら…と、つい試してみたくなってしまったのだ。

で、私もぴっちぴちのスカートで試してみたのだけど、3分やったあとも、やっぱりスカートはぴっちぴちなのであった。ま、「個人によって使用感には差がある」からね。あと腰痛持ちの人はやめたほうがいいかもしれないなあ。

テレビで見るような魔法は、自分の身にはおこらないのだと改めて学習した私だが、返品期限までもう少しゆ〜らゆ〜らしてみようかと思っている。


◆ニッポンよ、どこへ行く…4月15日日記
「新学習指導要領」では、保健体育の武術の種目に新たに「銃剣道」が加わったそうである。聞いたこともなかったが、「剣道のような防具を身に付けて竹刀の代わりに木銃を用いて相手と突き合う競技」(ウィキペディアより)なのだとか。旧日本軍の戦闘訓練に使われていたそうで、競技人口のほとんどは自衛隊員だという。なぜ、そんなものが中学の授業に組み込まれるのだろう。選択肢の一つだし、教えられる教員もほとんどいないので広がることはなさそうだけど、いまさら明記する意味がわからない。

道徳の教科書検定の結果、「パン屋」が「和菓子屋」に変わったというニュースもあった。『我が国や郷土の文化と生活に親しみ、愛着をもつ』という点が足りないと指摘されたのだとか。

政府は、教育現場での「教育勅語」の取り扱いについて、「憲法や教育基本法などに反しないような形で教材として用いることまでは否定されない」という見解を示したという。

一つ一つのニュースは小さいことだけど、ムードというのは恐ろしい。日本の国はどこへ向かおうとしているんだろう。

でも、世界はもっとこわい。

シリアでは国民に対して化学兵器が使われ、それに対してアメリカは空軍基地へのミサイル攻撃に踏み切った。北朝鮮はアメリカへの警戒心を露わにし、核・ミサイル開発を推し進める考えだ。あの国だったら、何かの拍子に日本の米軍基地を攻撃するんじゃないかと心配になる。

米国家安全保障会議(NSC)は、核兵器を在韓米軍に再配備することをトランプ大統領に提案したという。うーむ。なんだかきな臭い。

世の中のあれこれを考えていると、無力感が募ってくるのだが…。

先日、ラジオで高山樗牛(ちょぎゅう)の言葉を紹介しているのを聞いた。「己の立てるところを深く掘れ。そこに必ず泉あらむ」(自分が立っているところを深く掘れ。そこから必ず泉が湧き出る)

私に世界は救えないけど、そばにいる人の役に立つことはできるかもしれない。本を通じて、誰かを元気にすることもできるかもしれない。私は私の井戸を掘ろう。できることからやらなくちゃね。


◆時にはひねくれ者の視点で……3月15日日記
日頃「物欲はあまりないの…」なんて言っている私だが、流行りものにはけっこう弱い。「発売以来●百万個の売上!」とか、「●●で、●年連続ナンバー1!」なんて宣伝文句を見ると、1回だけ試してみようかな…なんて購入してしまうことも時々ある。

ニュースで豊洲問題が取り上げられれば、「まったく豊洲はどうなってるのよ」と思い、森友学園の話題が盛り上がれば、「なんでこの学園がこんなに優遇されるわけ?」と憤る。世の中はもっと公正であるべきだと、正義が勝ち、悪が敗れるわかりやすい物語の結末を見たくなる。

「だが、ちょっと待て」と、私の中に住んでいるひねくれ者が、情動に流されやすくなっている私に突っ込みを入れる。世の中が一つの方向に流れようとしている時ほど、他の視点がないか、立ち止まって考える必要があるのではないか。

最近、「悪の原点」的な扱いで再び表舞台に登場してきたのが石原元都知事だ。それが魅力でもあったふてぶてしい物言いは相変わらずで、大物の悪役としては、申し分ないキャラクターだ。豊洲問題はすべて石原元都知事の責任である…という結論を、世間は求めているようにも見える。都知事時代の経費の使い方や、出勤日数の少なさなどについて言及する声もある。

が、豊洲問題はいまに始まったわけではない。土壌の安全性について疑問視する声は前から上がっていた。石原氏の働き方や、右翼的な考え方を批判する声もあった。それでも東京都民は、「石原氏がよい」あるいは「他の人よりマシ」と4回も選挙で石原氏を都知事に選んだ。いまになって石原氏にすべての責任をぶつけるのは、違うような気がする。石原氏に責任があるなら、都民にだって責任はある。

豊洲問題は、利権がからんでいないか、安全面は実際どうなのか、そういう具体的事実を着実に明らかにしてほしい。

森友学園も、叩きやすいのは、籠池理事長だ。中国韓国への差別的な発言、幼児への過激なしつけ、政治家へわいろを贈ろうとした疑惑など、次々にトンデモないような話が表に出てくる。ここまで騒がれては、小学校建設は難しいだろう。安すぎるといわれた土地の取引は、小学校を認可しないことで、国が買い戻して幕引きされるかもしれない。

けれども、本当に心配なのは、「小さな頃から愛国者教育をしたい」と考えている人たちの力が、予想以上に大きくなっているということだ。籠池理事長は、忠実にやりすぎて非難されたが、愛国者教育を行うなら便宜を図ってやろうと思う政治家、その意志を忖度する役人は、また別の道を探るだろう。

次々にミサイルを発射する北朝鮮にどう向き合うのか、軍備増強をすすめる中国に対して手をこまねいてよいのか、日本を守るためには必要な道だ、と彼らは言うかもしれない。でも、「日本万歳」と叫び続けて失敗してしまったのが、第二次世界大戦ではなかったのか。

大衆が敵に向かって熱狂する一番の例は戦争だ。みんなが同じ動きをするときは、自分の中のひねくれ者に呼び出しをかけよう。世間とは別に、自分にとって本当に大事なものは何かを考えよう。そんなことを思ったりする今日この頃である。


◆フェイクニュースの誘惑…2月15日日記
真実よりも興味が優先する時代になってきた。ネット上ではフェイク(偽)ニュースが飛び交い、アメリカの大統領選にも影響を与えたと言われている。

アクセス数をかせぐためにわざと嘘のニュースを書く人もいれば、嘘ときづかずそのニュースを拡散する人もいる。フェイクニュースは事実よりも面白い場合が多いし、人間は自分がそうあってほしいと思っている内容に飛びつきやすい。私だって気になる見出しがあれば、ついクリックしてしまう。面白い話はつい人に言いたくなる。フェイクニュースの拡散者になる危険性は誰にでもある。世の中にあふれている情報のなかで、何が本当で何が嘘かを見極めるのは難しい。

個人の情報が間違っていて、大手マスコミの情報が正しいというわけでもない。いくら正しいことを伝えようとしても、誰も興味を持ってくれなかったら商売にならない。「演出」と「やらせ」の境界線は結構あいまいだ。

政府だってよく嘘をつく。あるいは事実を隠す。南スーダンがどんなに危険でも、「戦闘行為はない」ことになっている。

トランプ大統領の誕生で最近注目されている、ジョージ・オーウェルの『一九八四年』という本をいま読んでいる。その世界では、過去のニュースも為政者に都合よく書き換えられ、何が本当なのか誰も知ることができない仕組みができあがっている。そんな世界は耐えられないと思うけど、実際に世の中がそうなったら、それになじんでしまうのだろうか。

いまロゼッタは大腸がんの本をつくっている。「これでがんが治る!」とか、「こんな治療は無駄!」といったセンセーショナルな内容のほうが売れるだろうけど、著者と意見が一致しているのは、患者にとって本当に必要な正しい情報を伝えること。

フェイクニュース全盛時代、小さな出版社ができることは限られているけれど、「ロゼッタストーンが出している本だったら信用できるね」と思ってもらえるように、せめて手の届く範囲で、ささやかに真実を追求していきたい。


◆今年のテーマは「足腰を鍛える」…1月15日日記
今年のロゼッタストーン&ヒロナカのテーマは「足腰を鍛える」にした。

お正月、実家に帰って88歳になる父親の世話をしたが、父が身をもって教えてくれたのが、足腰の大切さだ。年をとると、足で立つことが、歩くことが、起き上がることが、こんなにも大変なのかと切なくなった。

一方で思い出すのが、年末に友人が招待してくれた社交ダンスの発表会だ。そこでは、60代、70代の女性たちが、カラフルな衣装を身にまとい、ハイヒールを履いて、堂々と舞い踊っていた。

いつももっぱらウォーキングシューズで楽をしている私は、その日ヒールのある靴をはいただけで足がつりそうだったのに、年上のおばさま方はまるでシンデレラのように(?)、うっとりと楽し気に踊っていたのである。日頃から鍛えていれば、年齢に関係なく若々しくいることも可能なのね。

最近体のメンテナンスに目覚めて、太極拳やホットヨガを続けている私だが、太極拳は体の内部を鍛えるものだし、ホットヨガはストレッチ的な動きが多い。足腰の筋肉を鍛えるには、まだ不十分である。

そこで今年の目標。

1)一人のときはエスカレーターを使わず、階段でのぼりおりする。

2)毎晩の入浴時に50回のスクワット。

3)1日30分以上のウォーキング。

それ以外に、毎日30分の太極拳、月4回のホットヨガ、週1回の太極拳教室を続ける。お風呂の中ではストレッチ。時間があればラジオ体操。頑張って足腰を鍛えるぞ〜。

……と、宣言はしてみたものの、さてさて続けることができるかしら。続けたとして、効果はあらわれるのかしら。結果的にダイエットになると嬉しいんだけど、それは難しそうだなあ。

会社としても足腰を鍛えて、いまだにいつ倒れるかわからないようなヨロヨロ状態を脱したい。基礎を固めて、安定した経営にしなくては。

会社も、私自身も、表面的なことより、まずは基礎を固める。お相撲さんでいえば、ひたすらしこをふむのだ。どすこいどすこい。(結果的に体型だけが“どすこい”になったりして……)


◆ロゼッタストーンWEB リニューアル…12月31日日記
数日前、ロゼッタストーンWEBをリニューアルした。最近は、パソコンよりもスマホでネットをチェックする人が多いようなので、時代に対応して、ロゼッタストーンWEBもスマホ対応にしてもらったのだ。

アドレスは同じだが、パソコンで見ればパソコン用の画面が、スマホで見ればスマホ用の画面が開く。技術の進歩というのはすごいなあ。

連載陣は変わらないが、つきのみどりさんの「教育カフェテリア」が終了して、新たに「自信がつく! 日本語講座」が始まった。つきのさんは、最近、まだ日本に5人しかいない日本語検定公認講師【A判定】になったという。もともと高校の国語の先生だから日本語には詳しいのだけど、日本語を極めるために努力を続けている。私も見習わねば。

これまで原稿が届くのに合わせて更新していたロゼッタストーンWEBだが、来年からは更新日は5日、15日、25日となる。月1回くらいの更新になってしまっているこの「ロゼッタストーン日記」は毎月15日更新予定。「ロゼッタストーン月記」に連載名を変えようかとも思ったが、愛着がある「ロゼッタストーン日記」のままで続けることにした。

ロゼッタストーンWEBのリニューアルと、今年ロゼッタストーンが創業17周年を迎えたのを記念して、マンガ「不思議なぬいぐるみブーさん」を連載しているやまきさんにライン用の「編集者スタンプ」というのをつくってもらった。無料で配りたかったのだけど、ラインスタンプは最低120円からという規定になっているため、やむをえず有料に。編集者以外でももちろん使えます。とってもかわいいので、よかったらご利用ください。
http://www.rosetta.jp/linestamp/

さて、そうこうしているうちに、今年も残りわずか。

今年の私のテーマは「ゆがみを正す」だった。

太極拳、ホットヨガ、お風呂でのストレッチ、1日30分のウォーキングなど、今年はこれまでになく、体のケアに気を配った年だった。その成果か、体のゆがみは改善されてきた気がする。太極拳の先生にも、去年は「骨盤が少しゆがんでいる」と指摘されたのだけど、最近、「骨盤のゆがみがなくなりましたね」と言ってもらった。ゆがみは心がけ次第で元に戻るものなのね。

ただし、プロポーションは「バランスがよい」とはいいがたい。お腹をひっこめるのは、来年の課題だなあ…。

睡眠時間、運動時間、娯楽時間などを前よりも増やして、人間としてのバランスのよい暮らしにはなってきた気がするけれど、そうなると仕事が思うようにはかどらない。もっと集中して短時間によい仕事をすること。これも来年の課題だ。

日本人の勤勉さは美徳だと思っていたけれど、そうでもないなあと最近思うようになった。今年シドニーに行ったとき、ガイドさんが「オーストラリア人は、週2日しかまともに働かないんです。月曜日は遊び疲れでボーとしてるし、火、水働いて、木曜日からは休暇のことを考え、金曜日は職場で3時頃からワインが出るところもあります」みたいなことを言っていた。もちろん週2日しか働かないなんていうのはジョークだけれど、残業に追われる日本人と働き方がまったく違うのは事実のようだ。

ところが一人当たりのGDP(2015年)でいえば、オーストラリアは世界で10位。日本は26位。日本のほうが高齢化が進んでいるといった事情もあるのかもしれないけど、みんな一生懸命働いているのに、それほど働いていない国の人よりも日本人が貧しいって、何か間違っている気がする。

日本では少ない報酬でもサービスを過剰にしすぎるからだと指摘する人もいる。日本人ができるだけのサービスをする「おもてなし」自体は悪いことではないと思うのだけど、なぜ日本人は頑張っても豊かになれないんだろう。日本人の真面目な気質がなぜ生かされないんだろう。

そのゆがみは日本社会の構造にあるのかもしれないけれど、日本人である私の中にだってあるはずだ。ものすごく集中して仕事をする。そのぶん、しっかり他のことにも時間を使う。来年はそんな働き方をこころがけてみよう。

今年もロゼッタストーンを応援していただき、ありがとうございました。来年もよろしくお願いいたします。

みなさま、どうぞよいお年を…。


◆『凶刃』著者、矢野啓司さんの死を悼む…11月19日日記
弊社発行の『凶刃』著者で、ロゼッタストーンで「『凶刃』その後、裁判レポート」を連載してもらっていた矢野啓司さんが先月亡くなった。

啓司さんは私が時々顔を出していた会合の常連だった。2005年12月、息子の真木人さんが通り魔に襲われて亡くなった。加害者は精神科に入院中の男性で、一時外出中に包丁でいきなり真木人さんを刺殺したのだ。事件が起きたあと、矢野さんは奥様と一緒に会合に参加し、「このまま犯人が不起訴になってしまったら、真相が何もわからないまま終わってしまう」と、刑法第39条(心神喪失者は無罪)の理不尽さを訴えていた。「裁判で真相を知りたい、世の中の人にこの事件に注目してもらいたい」と必死な様子だった。

「1か月で原稿が書けるなら、事件に関する本を出版することはできますけど…」と私は時間的に難しいだろうなと思いつつ、提案してみた。「やります」啓司さんは即答だった。

「できるだけ詳しく具体的にその日の状況を思い出して書いてください」と、愛する息子さんを失って傷ついているご夫妻に私は残酷な要求をした。矢野さん夫妻と真木人さんの妹さんは、心の痛みに耐えて本当に1か月で原稿を完成した。本は2月に出版、いくつかのマスコミでも取り上げられた。

その影響があったのかどうかはわからないが、結果的に裁判は開かれ、加害者には懲役25年の判決が言い渡された。

それから矢野夫妻が取り組んだのは、加害者が入院していた病院の責任追及だ。息子の死を無駄にしたくない、少しでも世の中に貢献したいという思いで、精神科のずさんな治療を問題視し、民事裁判で病院を訴えた。最高裁の上告棄却まで10年間に及ぶ長い闘いだった。

医療裁判は知識の少ない患者側が圧倒的に不利といわれるが、矢野さんの奥様の千恵さんが薬剤師であったこと、外国に精神科の医者の友人がいたことなどから、裁判はかなりレベルの高い争いになった。裁判が長期にわたったこともあって、矢野夫妻は専門家顔負けの知識を身につけ、医者の薬の処方が適切になされていれば、そして薬の変更後に患者をほったらかしにしていなければ事件は起きなかったと訴えた。加害者の両親も原告に加わった珍しい裁判だった。

矢野啓司さんが脳出血で倒れたのは、高裁での判決が出る直前、今年の2月9日だ。1月29日判決の予定が急きょ2月26日に延期され、それを待っている間の出来事だった。「麻痺が残っていて喋れないが、判決内容は理解している」と奥様の千恵さんはおっしゃっていた。

啓司さんは地裁で争っている頃から、「おそらく最高裁までの争いになるだろうから」と、長い将来を見据えて裁判に取り組んでいた。「医療にも裁判にも問題がある。いずれは『凶刃』に続いて『法刃』『医刃』と3部作で本を出したい」というようなことも言われていた。個人的な恨みを超えて、精神医療を改革したいという思いが伝わってきていた。志半ばで終わってしまったことがさぞ無念であっただろうと心が痛む。

精神障害というデリケートな問題は、扱い方が難しい。それゆえ、表に出ないところで「精神障害者」=「危険」という差別感情も生まれがちだ。

「精神障害者をひとくくりにするのはおかしい、精神障害者への偏見をなくすには、犯罪者への適切な処罰や、具合が悪いときには外出させないなど、適切な治療が必要だ」というのが矢野夫妻の意見だった。

裁判で敗れても、奥様の千恵さんは、

「矢野がやりきらねばならないこと」は、この事件を礎として、日本の精神科医療のあまりのお粗末さを改善することです。(ロゼッタストーンWEBより  http://www.rosetta.jp/kyojin/report96.html

とまだ諦めてはいない。これから啓司さんは天国で千恵さんの戦いを見守るのだろう。

私には何ができるだろうか……。


◆エレベーター閉じ込められ事件…10月22日日記
先日オーストラリアのシドニーに行ってきた。シドニーはいま秋だが、ちょうど東京と同じぐらいの気温で、治安もよく、物価は少し高いけれど、美しい港町だった。

が、旅にトラブルはつきもの。あるホテルで、受付に行こうとエレベーターに乗ってボタンを押したところ、エレバーターがフリーズして、まったく押ボタンがきかなくなってしまった。上にもいかない。下にもいかない。扉も開かない。エレベーター内には、たまたま私一人きり。ピーンチ!である。

5分くらい、いろんなボタンを押して試してみたが、まったく何の反応もないので、とうとう非常ボタンを押した。子どもの頃には好奇心から「非常ボタンを押してみたい願望」があったけど、まさか大人になって本当に押すことになろうとは…。しかも外国で…。

押すとすぐに、ボタン横のスピーカーから流暢な英語。が、何を言ってるやらさっぱりわからない。
「プリーズ スピーク スローリイ」と言ってみたが、やっぱり相手の言うことが聞き取れないので、とりあえずこちらの状況を説明することに。
「エレベーター ドーント ワーク!」(私の英語力は悲しいことにこの程度だ)
やっと聞き取れた先方の英語は“Where are you?”
そこからですかい?

エレベーター内の緊急ボタンというのは、遠隔操作されていて、押せばどこが緊急事態なのか瞬時にわかる仕組みかと思っていたが、110番通報とか119番通報のようなものだったのか…。

とりあえずホテルの名前を伝えたが、なんだかわかってもらえている気配がない。目の前のエレベーターに「LIFT3」と書いてあったので、「リフト スリー!」といったら、“Oh lift 3”と、やっと通じた。(オーストラリアではエレベーターをリフトと呼ぶのが一般的なのかな)

そのうち向こうの相手が女性から男性に変わり、“Japanese?”と聞いてきた。「イエス、イエス、ジャパニーズ」と言うと、「イチバン PUSH」と言う。
このエレベーターは3階以上には部屋のキーをタッチしないと停まらないが、2階以下のところはキータッチなしで停まる仕組みのようだった。すでにあらゆるボタンを押して動かないことは確認ずみ。
「イエス イチバン プッシュ バット ドーント ワーク!」

また向こうでいろいろ相談している気配。
“Are you OK?”
「ノット オッケー。ヘルプ ミー!」

また向こうでいろいろ相談している気配。
“Are you OK?”
「ノット オッケー」
心優しき日本人であっても、ここは譲れない。
それからはっきり聞き取れないが、「救出に向かいますから待っていてください」と言われたような気がした。
「オー プリーズ」
“OK”

とりあえず助けに来てはくれるようだが、暇である。エレベーターは背面が全面鏡になっていて、20人ぐらいは乗れそうなわりと広めのスペース。私は太極拳の練習をして時間をつぶすことにした。監視カメラで見ている人がいたら、「なんだあの日本人は…」と思われるかもしれないけど、悪いことするわけじゃないしね。

私が習っている太極拳の基本の動き「慢架(まんか)108式」は、普通にやったら約30分ぐらいかかる。時間をつぶすにはもってこいだ。まだ完璧に覚えていないので、あれ?次どうだっけ? と迷いながらやっているうちに、エレベーターの外がざわざわとざわついてきた。

扉の外で何かの作業をしている気配がある。それから5分ぐらいしてやっと扉が開いた。

“Are you OK?”ホテルのお姉さんが駆け寄ってきた。
「イエース アイム オッケー」
外に出たら心優しき日本人に戻る私であった。

翌日、私が閉じ込められた「リフト3」とは別のエレベーターが「故障中」で運行を停止していた。こわっ。

次に海外に行くときまでには、「エレベーター内に閉じ込められています」と流暢な英語で言えるようにしておこう。ま、片言でもなんとかなったけどね。


◆救命講習を受けてきました…9月29日日記
豊島消防署で開催された救命講習(3時間)を受けてみた。心肺蘇生のやり方やAEDの使い方など、人形をつかって実習。これまでテレビなどでやり方を見たことはあったが、自分でできる自信はなかった。でも、実際に体を動かしながら教えてもらうと、いざとなったら私でもなんとかなりそうな気がしてきた。以下覚書。

救命処置の仕方

1)倒れている人(傷病者)を発見したら、両肩をたたきながら「大丈夫ですか!? わかりますか!?」と呼びかける

2)反応がなかったら、大声で周りの人に助けを求め、119番通報とAEDを持ってくるようにお願いする。

3)斜めから胸やお腹を見て、呼吸しているかどうか(胸やお腹が上下しているかどうか)10秒以内で見極める。

4)動きが見られない場合は、普段通りの呼吸がないと判断する。心臓が止まった直後は、しゃくりあげるような途切れ途切れの呼吸が見られるが、これは「普段通りの呼吸」ではないと判断する。顔ではなくお腹の動きで判断するのがポイント。(通常成人は10秒に3回ぐらい呼吸をする)

5)普段通りの呼吸がなければ「胸骨圧迫」を開始する。傷病者の横にひざをついて両手を傷病者の胸の上で重ね、手のひらの手首に近い膨らんだ部分を使って垂直に押す。押す位置は、乳よりも下でみぞおちよりも少し上。心臓は胸の中央よりもやや左側にあるけれど、左ではなく真ん中を圧迫する。体重をかけて、胸が5センチぐらい沈むまでしっかり押す。

6)圧迫のテンポは1分間に100回〜120回。プリンセスプリンセスの「♪ダイヤモンドだね〜AH いくつかの場面〜」がちょうどいいテンポらしい。ポンプのように押す必要があるので、押すだけでなく、しっかり引くことが大事。手が傷病者の胸から離れないように注意する。

7)胸骨圧迫を30回したら、2回人工呼吸をする。これを繰り返すのが理想的。(人工呼吸が難しい場合は、胸骨圧迫だけでも可)

8)人工呼吸をする場合、まず、人差し指と中指の2本を相手のあごに当て、もう一方の手を額に当てる。あご先を持ち上げながら、額を押し下げて頭をそらし、気道を確保する。

9)鼻をつまみ、口を大きく開けて傷病者の口をすべて覆うように密着させ、傷病者の胸が上がるのが見えるくらいまで息を吹き込む。これを2回繰り返す。感染を防ぐために人工呼吸用マウスピース(吐いた息が戻ってこない一方弁付き)を使うと安心。

10)胸骨圧迫と人工呼吸を続けながら、AEDや救急車の到着を待つ。長時間続けるのは大変なので、周りに人がいる場合は、交代してもらうといい。AEDが届いたら電源を入れ、AEDの機械の指示に従って操作する。複数で対応している場合は、胸骨圧迫を続けながらAEDで電気ショックを行う。(AEDが「離れてください」と言ったときは、傷病者から離れる)

とこれが救命処置の流れだ。人工呼吸用のマウスピースをもらったので、なるべく持ち歩くようにしよう。

まあ、こんなものを使う場面にはできるだけ遭遇したくないけどね。


◆いま一番お気に入りのジャーナリスト…8月27日日記
毎日何かの事件が起き、ニュースが流れる。どんなに痛ましい事件であっても、日々の暮らしに追われるなかで、詳細は少しずつ忘れていき、事件のかけらだけが記憶に残る。忘れっぽい私は、人よりも記憶しているかけらが小さいかもしれない。

そんな小さな記憶のかけらが思いがけない形でつながるすごい本を読んだ。ドキュメンタリーなのだが、ミステリー小説も顔負けの内容である。著者は日本テレビ報道局記者の清水潔氏。かつては写真週刊誌フォーカスの記者をされていたという。

本のタイトルは『殺人犯はそこにいる (新潮文庫 し 53-2)』。ロゼッタストーンを創業した頃、ボランティアにきてくれていた大学生が、いま編集者になっていて、自分が手がけた本を送ってきてくれたのだ。

最近は決まった番組以外、あまりテレビを見ない私は、マスコミの世界にいるくせに、清水潔さんのことを知らなかった。清水氏が桶川ストーカー事件の真相に一番先にたどりついた記者だということも知らなかった。

※この詳細については、同じ清水氏の『桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)』に詳しい。報道番組「ザ・スクープ」に桶川ストーカー事件の情報を提供したのも清水氏である。この本もおすすめ。

『殺人犯はそこにいる』で、清水氏は北関東で連続して起きた幼女誘拐殺人事件に注目する。1979年から1996年の17年間の間に、半径10キロという狭い範囲で5件の幼女誘拐殺人事件が起きていたのだ。ただ、足利の3件は栃木県警、太田の2件は群馬県警と、管轄が違っているためか、一緒に取り上げられてこなかった。

清水氏はこれらの事件が同一人物の犯行ではないかと考えたが、その仮説には致命的な欠陥があった。事件のうち1件は、すでに犯人が逮捕されており、最後の事件は、犯人逮捕後に起きているのだ。すでに逮捕されている犯人が、次の事件を引き起こすことは物理的にできない。

その犯人というのが「足利事件」の冤罪被害者、菅谷利和さん。清水氏が幼児誘拐殺人事件を取材していた頃は、有罪が確定して服役中だった。

清水氏は、足利事件を丹念に調べるうちに、目撃証言などから漫画のルパン三世に似た人物が真犯人ではないかと推定し、テレビで足利事件冤罪説キャンペーンを展開する。菅谷氏はその後の再鑑定で犯人とはDNAが一致しなかったことがわかり、2009年、再審で無罪となった。菅谷さんの冤罪を晴らす一方で、清水氏は「ルパン」の居場所をつきとめる。「ルパン」のDNAは、ある教授の鑑定で、真犯人のものと完全に一致した。真犯人逮捕は時間の問題かと思われたのだが、そこには警察のメンツという大きな壁が立ちはだかっていて……。

というような話。

足利事件や桶川ストーカー事件での清水記者の取材は、名探偵のようで、本当に素晴らしい。私が記憶のかけらとして持っていた「パチンコ店での幼児誘拐」や「桶川ストーカー事件」や「足利事件の冤罪被害」などは本当に事件の一部しかわかっていなかったのだと痛感した。

最近清水氏は『「南京事件」を調査せよ』という新刊を出し、さまざまな論争がある南京事件の真相に迫っている。

こういう事実をとことん追求しようとする記者は心から応援したいなあ。というわけで、清水氏はいま一番私のお気に入りのジャーナリストである。日本テレビのニュースを見ていた人たちは「何をいまさら」って思うかもしれないけど。


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