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バックナンバー Vol.11

トーク・トゥ・ハー
シティ・オブ・ゴッド
アンナ・マグダレーナ・バッハの日記

『天使の肌』とフランス映画祭横浜2003 ■ ■ ■
今年のフランス映画祭横浜は、俳優出身の手による個性豊かな監督&主演作が目立ったが、団長を務めた俳優ヴァンサン・ペレーズは、 何の躊躇いもなく黒子に徹してみせた。 こうしてナルシシズムではない、作家の本能が生み出したことを明確にした長編監督デビュー作『天使の肌』は、 イメージとして彼につきまとう大甘な二枚目ぶりとは裏腹な、一途に生涯を賭けた少女の過酷なまでに悲劇的な純愛だった。 ひたむきな少女の運命の出逢いを、バルバラの甘美なシャンソン≪小さなカンタータ≫を絡めながら、衒いなくスクリーンに息づかせる。 ヒロイン、アンジェルを演じる新人モルガン・モレの、ひたと正面を見据えた真摯な眼差しが胸に沁みる、肌を刺す冷水のような佳編だ。(増田統)
=1点、=0.5点。最高得点=5点
トーク・トゥ・ハー

監督:ペドロ・アルモドバル
出演:レオノール・ワトリング、ハビエル・カマラ
トーク・トゥ・ハー

にしかわたく  
★★★★★
待ちに待ったアルモドバルの新作。この映画、とにかく画面全体に漂う色気がただものではない。エロを通り越して・・・もうまさに官能の極み、脳みそとろとろです。 植物状態の踊り子アリシア、神経衰弱ぎりぎりのリディア、2人の女優がそれぞれ圧倒的な存在感を示し、引きこもりデブのベニグノとハゲで泣き虫のマルコ、 2人の男の魂の交流が涙を誘う。あんたらすごいよ!最高だー!結末を観客にゆだねるようなラストも余韻があって良し。 映画館出てから、自分の中でゆっくりとストーリーが完結していく感じ。もう1回見たい! カエターノ(本編にも出演)とビセンテ・アミーゴが参加したサントラ、これまた買いです。
山本聡子    ★★★★☆
同性愛者や犯罪者など、普通でない人に温かい目線を投げてきたアルモドバルの最新作は、切なくて温かい人間への賛歌だった。ベニグノのしていることは、 ほとんどっていうか完全にストーカー。介護士の名のもとに体の動かないアリシアに触りまくる。でも、言い方によっては、究極の愛。その愛が奇跡を起すこともある。 女性の脳は神秘的だ、語りかけろ、とベニグノが言うように、結局、人間にはありえないことはない。正常と異常、可能と不可能の境界なんて線引きできないし、 だから人間って計り知れなくて面白い。孤独な現代人の愛の姿と皮肉な運命の物語に、カエターノの歌声、ピナ・バウシュのバレエ、サイレントの斬新な映像、 すべてが効果的で、映画を多重に彩る。終わり方がまたいいんだな、これが。
中沢志乃   ★★★★
昏睡状態の恋人が愛の奇跡で目覚める…感動的〜!! なんて話を想像していたが、これがそんなに単純な映画ではなかった。愛情とは何か、深ーいところの愛とは何か、 愛は双方向でなければいけないのか、一方的な愛は正しくないのか、愛は人を生かすのか殺すのか…そんな愛に関する様々な要素が詰まった、 しかも女性と命への愛情が詰まった作品だった。常にノー天気な私が「とても共感できる」ということは無かったが、でもひどくジンとする映画。 もっとアルモドバル監督の作品を見てみたいと思わせてくれた。映画を見た数日後には、なんと19年の昏睡状態から目覚めた男性のニュースが報道された。
波多野えり子  ★★★☆
センチメンタルでちょっとイイ男風の編集者マルコ、「あの人ヤバいよ〜」といかにも言われそうなマザコン看護士ベニグノ、 そしてふたりの眠り姫アリシア(イギリスとスペインのハーフらしい、すごくキレイ!)とリディア。 それぞれの魅力を持つ4人の男女が織りなす愛の物語の結末は、残酷なのになぜか穏やかな気持ちにさせてくれる。 このまえアメリカで19年昏睡状態だった患者が目覚めたという実際のニュースを聞いた。目覚めることを待つ人が側にいてくれること自体がひとつの奇跡かもしれない。 日常生活に疲れたそこのアナタ、芸術家アルモドバルの創る繊細な世界に触れ、自分の感情と向き合ってみてはいかが。


シティ・オブ・ゴッド

監督:フェルナンド・メイレレス、カチア・ルンジ
出演:アレシャンドレ・ロドリゲス
シティ・オブ・ゴッド

波多野えり子  
★★★★★
英ガーディアン紙はこの作品について「ふらりと足を踏み入れた試写室で大傑作に出会えることほどの感動はない」とコメントする。 まさにその通り!正直観る前はスラムで生きる子供たちのエグい生活を描いた、とてつもなくシリアスな映画だろうと思っていた。でも全然違った。 カメラマンを夢見る主人公のサクセスストーリー、ドラッグビジネスと殺戮を繰り返し、悪の道を突き進むスラムのボス、 ただ彼女と穏やかに暮らすことだけを願った愛すべき悪党の人生。運命に翻弄される若者たちの姿は、現実的だがストーリー性があり、 とにかくエネルギッシュで目が離せない!ほとんど演技経験のない現地の子供たちを使ったというのも成功の所以なのか。 とにかくいろんなものが詰まっている傑作だ。ブラボー、ブラジル!!!
にしかわたく  ★★★★☆
いやいやこの映画には驚いた。リオのファベーラ(貧民街)をテーマにした力強い作品という評判で、期待はしていたがここまで完成度が高いとは。 20年にわたるギャングたちの抗争の歴史を全く淀みなく描ききり、叙事詩としてほぼ完璧な出来。しかも個々の登場人物にもしっかり感情移入させる。 演出の手法はガイ・リッチーやP.T.アンダーソンの影響を多少感じさせるが、素人とは思えない子供たちの演技(嬉々として引き金を引くリトル・ダイスの表情、 夢に出てきそう・・・)、悲惨な現実を見据えながらも決してユーモアを失わない語り口は特筆もの。ブラジル音楽好きはサントラも買いです!
中沢志乃   ★★★★
社会的に意義があってほしい作品。舞台はブラジル、“神の街”と呼ばれるスラム街。貧しさゆえに盗み殺し、血を流すことに鍛えられる子供たち。 一度関わったら、結局死ぬまで抜け出せない世界。決意して“神の街”を抜け出した(実在の)青年が私たちに送る映画の最後のメッセージとは…。 映画は、実は彼らはただ流行に憧れ、恋人に憧れる普通の子供であることも示唆している。日本にも似たような問題はあるのだろう…。 冒頭のナイフと鶏の映像は最高だし、それに英語と日本語両方の字幕が出たので、 日本語では“ブスカペ”という少年の名前が英語では意味を重視して終始Rocketとなっているなど、見比べるのも面白かった。


アンナ・マグダレーナ・バッハの日記

監督:ジャン=マリー・ストローブ、ダニエル・ユイレ
出演:グスタフ・レオンハルト、クリスティアーネ・ラング=ドレヴァンツ
アンナ・マグダレーナ・バッハの日記

高野麻結子   
★★★
のめり込むわけでもなく、感動するわけでもないのに、いつかふと思い出す種類の映画。一作ごとに評価が大きく分かれるストローブ&ユイレ作品だが、 ドキュメンタリーのように当時の衣装と演奏形態が見られる点と、アンニュイでナイーブなバッハの一面が見どころ。演奏中はカメラが全く動かないが、 眠りこけても目が醒めた時に目と耳から入ってくる映像と音楽に「はて、ここはどこだっけ」と陥る感じが非常に良い。 バッハの同タイトルを映像化した石田尚志監督の抽象アニメ「フーガの技法」も出色の出来で、従来とは異なる映像と音との可能性と、 催眠術のように見る側の想像力をどこまでも掻き立てる。
中沢志乃    ★★★
その名の通り、バッハの2番目の妻、アンナによるバッハの記録であるこの映画。 映画だから、一応ドラマチックなストーリーと演出があるのかと思ったが、「映画を見た」というよりは「博物館に行った」という感じだった。 映画は、アンナの日記とバッハが残した譜面、そして音楽を軸に、当時の出来事を(本当に)淡々と語る。 神のためでなければ音楽も騒音だと言い切るバッハと、出世と給料アップを望むバッハ。 現代人にも通じる当時の音楽の巨匠の苦悩や矛盾を真新しい形(博物館+オーケストラ)で感じられた。
波多野えり子  ★☆
類まれなき才能を持つ“音楽の父”バッハ。当時においては、彼も悩めるひとりの社会人だった。 音楽家という仕事で苦悩する夫を見守るバッハの2番目の妻アンナが「ウチの旦那は…」(こんな口調ではないけど)と語る。 彼女のナレーションが時々に入るものの、演奏の映像が主。 バロック音楽や古楽器の心得がある人には興味深いだろうが、『アマデウス』、『ベートーベン不滅の恋』のようにストーリーのみで楽しめる種類の作品ではない。 平日のレイトショーだったためか、まわりではうつらうつらする人もちらほら。リラックスした休日の午後に、音響設備の整った環境で見るべきかも。
イラスト編集雑記
イイネ! イイネ! イーネ! クレイジーケンバンド!  映画「過去のない男」でも「ハワイの夜」が不思議な魅力を醸し出していたが、ニューアルバム「777」もジャズあり、ロックあり、ファンクあり、 と、無国籍で怪しくて、楽しめる内容になっています。7月6日、渋谷公会堂のライブに行ってきました。ほとんどテレビには出ないけれど、しゃべりも面白い。 ところで、「ハワイの夜」、なんでカラオケにないの? (古東久人)
著者プロフィール

増田統 : 1967年、大阪市生まれ。高校時から映画に嵌り、大学入学と同時に上京。卒業後は、 映画雑誌「FLIX」編集部を経て、’97年よりフリーに。 フランス映画をこよなく愛するが、最近はアジア映画に浮気心を刺激されている。

にしかわたく :  漫画とイラスト描いて暮らしてます。映画好きが高じて現在『季刊ロゼッターストーン』に「でんぐり映画館」連載中。 映画とコーラとポップコーンがあれば基本的に幸せ。「飲食禁止のスノッブ映画館を打倒する会」主宰(嘘)。

山本聡子 :  1973年生まれ。2年前に脱OLして編集者を志す。現在は自然の中を歩く本などを製作中。都会の喧騒に疲れると、吸い込まれるように映画館に行く。 見るのはアメリカ映画よりもヨーロッパ映画が多い。映画も男もラテン系が好きです。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。

波多野えり子 :  1979年元旦の翌日という中途半端な日に東京・永福町にて誕生。現在はブライダル情報誌の編集部で修業中。 映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごす。 最近はエモーショナルな韓国映画やドラマがお気に入り!

高野麻結子 :  1976年、横浜生まれ。一生駆け出しの編集者です。 さぼれる喫茶店やお洒落でない定食屋の本を編集。 最近のテーマは初対面の人と煮込みを食べることと、 休日の図書館の食堂における過ごし方。 60歳男子が文庫本片手にBランチ(520円)とビールで過ごす姿に自分の目指す道を確認する日々。 散歩の達人ブックス新刊 『東京古本とコーヒー巡り』好評発売中!

古東久人 :  1959年生まれ。某出版社勤務。キューブリックで映画に目覚め、1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 「キネマ旬報」「フリックス」などの映画雑誌に執筆。編著は「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベスト1はブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。「皆殺しの天使」のDVDをぜひ出して欲しい!

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