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バックナンバー Vol.14

座頭市
夕映えの道
リード・マイ・リップス

「リベンジャーズ・トラジティ」を見て変な世界に溺れてきました。 ■ ■ ■
ここはどこ?過去なのか未来なのか、いきなり困惑。未来らしいんだけど、どこか古めかしい。 と思ったらやっぱり、17世紀のT.ミドルトンの戯曲「復讐者の悲劇」が原作。 顔面に無数のピアスをさしたスーパーパンクなお兄ちゃんとバッハみたいなカツラをかぶった裁判官が同時に登場。古典と近未来が融合すると、こんな風になるんだね。 今風なのか、古めかしいのか、よくわかんないけど、とにかくすごく変なのは確か。話す英語も変だし(古典英語らしい)、服装も変。 はちゃめちゃな設定なのに、みんなとても大真面目。どうなるんだろう、どうなるんだろう、と思いながらいつの間にかその変な世界に自分も溶け込んでた。 その根底にあるのは今も昔も変わらない、肉欲におぼれる人間の悲劇。人間ってちっとも進歩してません。 後半のすざまじいスピード展開と、気持ちのよい終り方に大満足。新しい世界を見せてくれたコックス監督に、この秋はちょっと注目してみようかな。(山本聡子)
=1点、=0.5点。最高得点=5点
座頭市

監督:北野武
出演:ビートたけし、浅野忠信、大楠道代

にしかわたく 
★★★★☆
ばんざーい! 面白いたけしが帰ってきた! 骨太の痛快娯楽活劇決定版。黒沢明がたけしに書いたという例の「日本映画は君に任せる」という手紙、 この映画を見て納得。最近の若手監督は才能ある人が多いのに、悲しいかな皆小つぶ。誰が何と言っても映画の本道は娯楽なのだ。 たけしはこういう質の高い娯楽昨をじゃんじゃんばりばり作って、日本映画界に君臨してほしい! 宮崎アニメやテレビドラマの映画化が興行収入ナンバーワンの時代はもう終わり。私には見える。たけし城の天守閣でふんぞりかえる彼の姿が・・・。
中沢志乃   ★★★☆
ご存知、盲目の“あんまさん”が悪党を切る映画のリメイク。うーん…、どうだろ?粗削りの原石なの…?ブツ切れに思える編集、 繋がりが見えにくく長いこと困ってしまうストーリー。途中までは「これがベネチア国際映画祭の監督賞?」と謎の嵐。 (私は昔の座頭市は見てないので…。)ところが、確かに最後まで見ると映画としては「なるほど」と思えた。 でも、あの時点でタップダンスはいらない気もするし、完璧に“Oh, Japan!”狙いの外国人向け日本映画とも思え…、やはり甲乙付けがたい。 遊郭、おじさんの男児への性癖、“バカ”も共存する社会、男性が先にお風呂に入る習慣など、古き日本を伝えるにはプラスだが、 日本を外国人向けオブラートに包んでお送りしたのだろうか…?
波多野えり子 ★★☆
そもそも座頭市って何?といったところから始まった時代劇ビギナーの私。まずはその疑問を解決。 ガダルカナル・タカが披露するビートたけし色が出たネタの数々はやっぱり笑ってしまうし、農民の畑を耕す動作がリズムを刻み、 終いには出演者全員がタップを踊り出すという演出は『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を思い起こさせて斬新。 これまでの北野監督作品と比べて、より多くの観客をターゲットとしたエンターテイメント性を感じた。 時代劇というあまりに日本らしいジャンルをこういった形で見せ、それが世界で受け入れられたことは非常に喜ばしい。
古東久人   ★★☆
なぜか北野武への興味が薄れてきている。なぜ座頭市でなければならなかったのか、その疑問は晴れないまま終わったし、 評判のタップシーンにしても時代劇とうまく融合しているとは言い難い。時代劇と洋楽の融合と言えば、岡本喜八の「ジャズ大名」が思い出されるが、 こちらのほうがはるかに成功していたし、面白かった。すべての映画は過去の映画と比較される運命にあるが、音の使い方もさほど目新しいとは思えなかった。 どこかで、観たようなそんな映画だった。


夕映えの道

監督:ルネ・フェレ
出演:ドミニク・マルカス、マリオン・エルド
夕映えの道

原聡子    
★★★★
ホームビデオのように淡々と進む手法なのに、温かい余韻がじわじわと残る作品。 イザベルは、偏屈なマドを変えようとはせず、そのままの彼女を受け止め愛するように見えるが、そういうイザベルを見ていると、 単なる偏屈なお婆さんであるはずのマドがなんだかとても愛らしく感じられる。無理やりマドの部屋を掃除するイザベルをきょとんと見つめるマド、 イザベルの洋服を好きよと誉めるマド、昔作った帽子を大事そうに見せるマド、人を寄せ付けなかったその頑固なところでさえ、 不思議とかわいらしく思え、気づくと私もマドを温かく見守っているのだ。 最後にイザベルの愛情で、マド自身が変わったように思えた。 「今が一番幸せだわ」と泣いたマドは、介護をしてくれる人ではなく、本当の愛情を人生の最後に手に入れた喜びの涙に見えた。
中沢志乃  ★★★☆
広告会社を営むイザベルは、偶然に薬局で出会った一人暮らしの老女マドの面倒をいつしか見ることになり…。私の祖母も今年86歳(か、87歳)。 やはり一人暮らしをしている。マドのように、すごく元気という訳でもないが、一人で暮らせないというほどでもなく、だが確実に弱ってきている。 本当は愛情が欲しいのに頑固一徹で強がったり…。全編を通し、マドと祖母が重なってしまい少々身につまされた。老人を本当に思いやるのは大変なこと。 特に若者には…。映画の最後の二言にはワッと思わず涙が出てきてしまった。
古東久人  ★★★☆
見ている間、ずっと母親の介護のことを思い出していた。最初は見るのが辛かった。人は年を取り、病気をするとわがままになる。 こちらも仕事で疲れて帰って、しかも介護という仕事が残っている。気持ちのすれ違いや、ぶつかり合いもある。 しかし、振り返ってみると、自分で体を動かせなくなった本人がいちばん辛いのだ。マドとイザベルは他人だが、互いに心が通じ合うラストに癒される。 自分の親を大切にしなさ、というメッセージも読み取れるし、自分自身、介護が必要になったらどうするのかということも考えさせられた。
山本聡子  ★★
いやー、地味な映画ですねえ。私にも特老施設に入っている祖母がいて、時々訪ねて話をする。老人のグチばかりだけど、 聞いてると何故かこちらも穏やかな気持ちになるんですよね。老人のオーラでも出てるのかな。イザベルもマドからそんなオーラを感じてるんじゃないかと思います。 普通の人たちの日常を切り取ったような映画には、往々にして「人は誰でも主人公になれる」みたいなメッセージを強引に押し付けられることがあるけど、 この映画はそんな作為が見受けられないところがいい。ひたすら静かに2人を描き、それぞれの心の揺れや孤独がごく自然に伝わってくる。 花の都、パリの別の一面を見たような気がします。


リード・マイ・リップス

監督:ジャック・オディアール
出演:ヴァンサン・カッセル、エマニュエル・ドゥヴォス
リード・マイ・リップス

Kozo     
★★★★
都会の人ごみになじめない難聴の女と刑務所帰りの男とのラブストーリーで、フランス映画の、うっ積した暗さが篭もる空間でのセックスと暴力描写。 もうちょっと暗くすると日本映画っぽくなるが、なぜか快く感じる。なんかこう、勇気というか、力が湧いてくる映画だ。社会的弱者でもこんな形で生きてるんだ! これが私達の愛だ!という主張が伝わってくる。この主張があるかないかが日本映画との違いか?とも思った。 まぁ、ラストシーンのホロ苦さは、ちょっと真似できんけど。
中沢志乃   ★★★☆
全く先の読めないスリリングな展開に「どうなるの?どうなるの?」と思わされっぱなしの映画。 刑務所帰りの個性溢れる男っぽいポールと難聴でダサいOLのカルラは、悪行を通し、次第にお互いの価値を見出し、見出されていく。 「あらら、気付けばカルラもただの犯罪者じゃない? 救われなーい」と思いつつ、何となく笑えてしまうのは、 結局は「信頼できるパートナーが見つかって良かったね」という気持ちが心のどこかに残るから。 とりわけ、隣のビルからカルラがポールの口の動きを読んだ時の通じ合った感動は、非常に印象的でした!
波多野えり子 ★★★☆
難聴というハンディキャップがあり、日陰で生きる毎日にフラストレーションを抱えた女と、刑務所帰りで保護観察中のチンピラ。 全く別の世界で生きていた水と油のようなふたりが、ひとつの犯罪計画をめぐって徐々に混ざり合っていく。 非日常的な設定ながらも、主演二人が表現する感情は繊細で、話が進むにつれて緊張はどんどん高まる。エマニュエル・ドゥヴォスがあの『アメリ』を抑えて、 その年のセザール主演女優賞を獲ったというのも納得。そしてやっぱりワイルドなヴァンサン・カッセル素敵!という個人的な理由も踏まえつつ、 サスペンスとしてなかなかの掘出し物だったかも。
増田統     ★★★☆
社会の落ちこぼれ的男女の恋愛劇だからこそ、愛しい。頑なにそれぞれの世界に生きてきたふたりが、たとえそれが打算と下心から派生したものだとしても、 やがてお互いを理解し、信頼関係を深めてゆく。それこそが、真の愛のドラマというべきだろう。 サスペンスは、あくまでもふたりの当惑を愛へと高める傍役でしかない。犯罪のクライマックス直前、カルラはポールの引き出しから一枚の航空券を発見する。 果たして、それはポールの犯罪、そしてカルラからの高飛びの予兆なのか。急転直下、そんな小道具の数々が、 確信を抱きながらもどこまでも疑いが忍び込む彼らの恋心に、巧みに火をつける。ポールの指先やカルラの匂いへの執着といったフェティッシュな表現こそ、 人間心理の複雑な襞にこだわるジャック・オディアール監督作に相応しい、濃厚かつ芳醇な愛の物語なのだ。
イラストコトー日誌
10月23日、新宿ロフトプラスワンで行われたブロンソンズ(みうらじゅん、田口トモロヲ)主催、「チャールズ・ブロン葬」に参列。 弔辞は川勝正幸氏。前のほうに座っていたので焼香をするチャンスに恵まれ、「う〜ん、マンダム!」
10月某日、黒沢清の「ドッペルゲンガー」を観た。ドッペルゲンガーは心理学用語ということになっているが、 実はどの心理学事典にもあまり載っていない不思議な言葉だ。「分身」とか「二重存在」と訳され、自分のそれを見た人は間もなく死ぬと言われている。 きっと学問的には未知の領域なのだろう。映画は僕の考えていた内容とはいささか異なっていたが、本人が分身と言い争うという設定は面白い。 分身がハンマーで殴られて血を流すという肉体的な存在であることにも笑った。この映画と直接の関係はないが、東野圭吾に「分身」という小説があり、 村上春樹の小説、たとえば「スプートニクの恋人」などにもドッペルゲンガーを読み取ることができる。芥川龍之介もドッペルゲンガーを見て、 死んだというエピソードは有名である。そして、詩人シェリーも。それから、井筒和幸の「ゲロッパ!」最高! 今年のベストワンはこれで決まり?  自腹で見た甲斐はあった。シネカノンさん試写状ください。 (古東久人)
著者プロフィール

山本聡子 :  1973年生まれ。2年前に脱OLして編集者を志す。現在は自然の中を歩く本などを製作中。都会の喧騒に疲れると、吸い込まれるように映画館に行く。 見るのはアメリカ映画よりもヨーロッパ映画が多い。映画も男もラテン系が好きです。

にしかわたく :  漫画とイラスト描いて暮らしてます。映画好きが高じて現在『季刊ロゼッターストーン』に「でんぐり映画館」連載中。 映画とコーラとポップコーンがあれば基本的に幸せ。「飲食禁止のスノッブ映画館を打倒する会」主宰(嘘)。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。

波多野えり子 :  1979年元旦の翌日という中途半端な日に東京・永福町にて誕生。現在はブライダル情報誌の編集部で修業中。 映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごす。 最近はエモーショナルな韓国映画やドラマがお気に入り!

古東久人 :  1959年生まれ。某出版社勤務。キューブリックで映画に目覚め、1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 「キネマ旬報」「フリックス」などの映画雑誌に執筆。編著は「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベスト1はブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。「皆殺しの天使」のDVDをぜひ出して欲しい!

原聡子 :  1976年、千葉生まれ。放送作家・タレントのマネージメントプロダクションに勤務。女性7名で構成される企画集団「ミアマーノ」では、企業とコラボレートして商品企画などに取組んでいます。映画では、「猟奇的な彼女」「ピンポン」など、主役よりも、主役を見守る準主役の方に入れ込んでしまいます。

Kozo :  1970年、鹿児島生まれ。故・我王銀次主宰の劇団「大阪バトルロイヤル」で俳優として映画、TVに出演。 L.A.C.C.映画科卒業後C.S.U.L.B.に編入しスピルバーグと一緒に卒業。現在は林海象監督と”Cinema Showcase”を主宰し毎月、短編映画を上映中。

増田統 : 1967年、大阪市生まれ。高校時から映画に嵌り、大学入学と同時に上京。卒業後は、 映画雑誌「FLIX」編集部を経て、’97年よりフリーに。 フランス映画をこよなく愛するが、最近はアジア映画に浮気心を刺激されている。

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