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バックナンバー Vol.30

オペラ座の怪人
Ray/レイ
トニー滝谷

監修:タカイキヨコ

2004年 シネマの達人ベストテン ■ ■ ■
1位  誰も知らない 74点
2位  スクール・オブ・ロック 67点
3位  ビッグ・フィッシュ 62点
4位  殺人の追憶 57点
5位  ラブ・アクチュアリー 52点
6位  ロスト・イン・トランスレーション 46点
7位  ミスティック・リバー 45点
8位  マッハ 32点
9位  コールドマウンテン 31点
10位  オアシス 28点
10位  下妻物語 28点
次点  21グラム 27点

選考委員
飯沼健一(会社員)、伊藤洋次(会社員)、インコ(自営業)、かえる女(会社員)、鍵山直子(構成作家)、カザビー(会社員)、 金澤理奈絵(ディレクター)、カワシマミワコ(イラストレーター)、倉谷奈己(イラストレーター)、グレコ(会社員)、小池まいこ(イラストレーター)、 古東久人(会社員)、小松玲子(ライター)、高井清子(翻訳家)、高城直子(ライター)、津川聡子(漫画家)、富永三紗子(デザイナー)、 中沢志乃(映像翻訳)、長澤千秋(会社員)、中村勝則(映画ライター)、にしかわたく(漫画家)、波多野えり子(編集者)、ぱるぴー(主婦)、 ヒッチコック熊倉(コピーライター)、増田統(映画ライター)、松本透(フリー)、三笠加奈子(作家)、みちのく(イラストレーター)、 村瀬素子(ライター)、ヤノジー(イラストレーター)、山本聡子(ライター)、山本正子(イラストレーター)
=1点、=0.5点。最高得点=5点
オペラ座の怪人

監督:ジョエル・シューマカー
出演:ジェラルド・バトラー、エミー・ロッサム
配給:ギャガ=ヒューマックス
http://www.opera-movie.jp/
オペラ座の怪人

波多野えり子   ★★★★★
 妖怪とかモンスターという存在に興味津々だった子供時代、タイトルに惹かれて原作を読んだ。 そのときは理解していなかったけど、これはセクシーでロマンチックなラブストーリーだったんだ。 年老いたラウルの生きる1919年はモノクロで、事件が起こった1870年代はカラー。 活気に満ち溢れたオペラ座は、ファントムととも消え去り、世界は色あせてしまった。背景、衣装、美術等々、色彩が効果的に使われている。 そして、この映画の主役はやっぱりエネルギッシュで象徴的な音楽。アンドリュー・ロイド・ウェバーこそ「音楽の天使」だ。 今も"The Point of No Return"を鑑賞中……「ブラ〜ボ〜!!」舞台で歌うクリスティーンに気が付いたラウルのように叫びたい気分。 ちなみに、昨年我が家で大流行したのは「ジーザス・クライスト・スーパースター」。全曲歌えると思う。
鍵山直子     ★★★☆
 とにかくカッコイイんです。鳥肌モノです。サントラがむちゃくちゃいいんです。 ファントム役のジェラルド・バトラーはちょっぴりオンチだったけど、それもチャラにできるほどアンドリュー・ロイド・ウェーバーの音楽は素晴らしい!  始まって5分で絢爛豪華なゴス・ワールドに身も心も連れて行かれてしまった私。当分、ここにいます。
三笠加奈子    ★★★
 主要キャストが吹替えなしで挑む歌唱シーン、まばゆいばかりのスワロフスキー社のシャンデリア、そして廃墟となったオペラ座が、 一瞬にして19世紀の輝かしき時代へとワープする冒頭シーン。すべてがファンタスティック、かつラグジュアリー!なんだけど…。 どうもすべてのディテールが強烈で、逆に、肝心なドラマに没頭できなかった。 脚本が山場に入ると、まるでサイレンのように定番の「The Phantom of the Opera」がけたましく響く。 あの音楽の力がなければ、かなりシラケた話だったような。にしても、クリスティーナ役を演じたエミー・ロッサムの歌唱力はブラボーでした! 顔がケロンパ(うつみ宮土理)似だったのがやけに気になったけど。
カザビー     ★★☆
 映画の料金でミュージカルの舞台を観れたようなお得な作品。とはいえ、最初から最後まで歌ばかりで正直疲れました。 せっかく映画にしたのだから歌は重要なシーンだけにとどめておいた方がメリハリができて良かったのでは?  それにファントムの苦悩や不器用さみたいなものがあまり伝わってこなくて、ただの狂ったストーカーとしか思えませんでした。 もっと深くファントムの内面に踏み込んでほしかったので残念…。 同じ歪んだ愛なら「羊たちの沈黙」のレクターの方が断然良いと思いました。


Ray/レイ

監督:テイラー・ハックフォード
出演:ジェイミー・フォックス、ケリー・ワシントン
配給:UIP
http://ray-movie.jp/
Ray/レイ

伊藤洋次     ★★★★
 いかにもアメリカらしいサクセス・ストーリーで見飽きているはずなのだが、それでもやっぱり感動してしまう。 ジェイミー・フォックスは、評判通りハマリ役。彼のパフォーマンスがこの映画を成功させている最大の理由だろう。 まるで『コラテラル』の中途半端さを吹き飛ばすような、生き生きとした演技で見事だった。 幼いころのエピソードも、最初の方はやや落ち着かない感じもしたが、後半、特に母親に頼らず自ら起き上がる場面などよく描かれていて、思わず引き込まれた。
中沢志乃     ★★★★
 幼い頃に全盲になったレイに1人で生きていく術を教えた母。その母の願いどおりに、レイはその術を身につけ、スターダムを駆け上がっていった。 でも、そのせいで彼は自分と音楽しか信じられないようになったのかな…そんなことを考えていて、ふと気がついた。 スクリーンの彼が全盲だったとは、どうも思えないことに。 数ヶ月前にはレイのコンサートのDVDも見たのだが、今、思えば、その彼も全盲だったとは信じられない。目のことなど相手にみじんも感じさせない存在。 その生き方こそ、やっぱりすごい、と改めて思った。レイ役のジェイミー・フォックスも完璧です。
にしかわたく   ★★★★
 うぅーん面白かった。和田アキ子もびっくりです。とにかく演奏シーンの魅力が圧倒的。 ジェイミー・フォックスの演技はいかにもオスカー取りそうでムカツクけど、確かに文句のつけようがない。 すっかりレイ・チャールズ本人だと思って見てしまいました。ここまで完璧だと、何かあまのじゃくでディカプリオに賞あげたくなっちゃいます。 とってもフツーの伝記映画なんですが、個人的にほとんど予備知識がなかったせいもあってハマってしまいました。 代表曲だと思ってた「我が心のジョージア」が当時は批評家に叩かれていたという事実。 へぇーボタン3つです。レイのお母さん役の女優、何て人なのかな。あの人すごかったな。
鍵山直子     ★★☆
 レイ・チャールズに全身全霊でガブリ寄ったジェイミー・フォックス。その生き写しぶりには誰もが仰天したはず。 でもそんなフォックスの熱のこもった演技とはウラハラに、終わってみれば映画自体はなぜか迫るものがなく、込み上げる感情に欠けていたのが残念。 一見鮮やかで知的なストーリーテリングだけど、技に走りすぎた感あり。


トニー滝谷

監督:市川準
出演:イッセー尾形、宮沢りえ
配給:東京テアトル
http://www.tonytakitani.com/

伊藤洋次     ★★★★★
 じわじわと心に効く映画。この映画のパンフレットで監督自身が書いているように、決してリアルな映画ではない。 でも、登場人物の心情やその変化はまぎれもなくリアルだった。 ふわふわと綿ぼうしが浮いているようでありながら、一方でどこか鋼のような硬く、細い線がまっすぐ貫いている感覚。 坂本龍一の音楽、脱色したフィルムが映し出す映像から、そんな感覚をおぼえた。広川泰士のカメラも絶妙のアングル。 ビデオ&DVD派の方には申し訳ないが、絶対に映画館で見てほしい作品。スクリーンでこの映画の空気を感じてほしい。
松本透      ★★★★
 透明感と喪失感を漂わせたナレーション、一音一音が感情に響いてくるピアノ曲、全体的に体温の低い映像で、見ているものに孤独感を共有させる秀作である。 そう、テーマは孤独。その孤独には二つある。一つが「一人である孤独」。もう一つは「喪失からくる孤独」。 そして孤独に直面した人には、「孤独を回避する人」、「孤独に寄り添う人」の2種類がいる。 トニー滝谷は、「一人である孤独」には自分自身を馴染ませながらも、美しい伴侶を得ることで克服した。 だが、その後訪れる「喪失からくる孤独」には、適応できたのだろか? それとも…。 原作には無かった印象的なラストがその答えなのだが、それがどちらなのかは観客の判断に委ねられている。
山本聡子     ★★★★
 締め付けられるように寂しい映画。画面の中の、澄んだ空気がスクリーンを通して観客席までやってくるような、そんな美しい映画です。 ゆっくりと流れる時間の中では一秒がとても重くて、一瞬たりとも逃さないようにと見入ってしまった。 大好きな短編小説を、一行一行大切に読む至福の時間のように。羽のついたようにふわふわとした美女と、無口で黙々と絵を描く中年男。 一見不釣合いに見える2人の優しい時間がとても素敵でした。 今は隣にいない、愛する人との思い出だけが残っている空間に、自分だけがいなくちゃいけない時が一番悲しいですよね。広い空が印象的でした。
タカイキヨコ   ★★★★
 触れられそうで、でも手は届かない。それはここで描かれる人と人との関係であったり、このスクリーンと観客との関係であったり。 とにかくそんな切ない距離感を感じさせられる世界が、ストーリーはもとより、遠くを感じさせるカメラアングル、あせた色調、 演じ手とナレーションが交錯する言葉等々…作品全体で見事に体現されている。 そのどこか吹き抜ける風を感じさせる硬質な空気感に浸っていたからこそ、映画オリジナルのラストが人間の「体温」を伝えてくる気がした。 人と出逢うことの喜びを噛みしめるために、人はどれだけ涙を流すのだろう。
シネ達日誌
イラスト  今年も多くの方に参加していただき、ベストテンが決まりました。皆さん、ご協力ありがとうございました。 今回は外国映画と日本映画を分けずに選出、日本映画の真価が問われたと思います。 日本映画は2本でしたが、『誰も知らない』が1位を制しました。この結果、皆さんはどう感じますか?(古東久人)
著者プロフィール

波多野えり子 :  1979年元旦の翌日に東京・永福町にて誕生。映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごしながら、現在編集者を志しているところ。最近は、まんまと韓国映画とドラマにハマっています。

鍵山直子 :  テレビ&FMラジオの構成作家。現在、i-modeとauの携帯サイトで『シネマ通信』、ボーダフォンで『シネマ・エキスプレス』を担当中。 遅れてきたヒュー・グラント・ファンです。

三笠加奈子 :  仕事が大好きな新人ライター。著書に『外国映画の歩き方』『マンガで楽しむ旧約聖書』『マンガで楽しむ新約聖書』がある。三度の飯も好きだけど、ドイツはもっと大好きで、いつか別荘を買おうと500円玉貯金中。

カザビー :  1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。好きな監督は周防正行、矢口史靖、SABU、ペドロ・アルモドバル、セドリック・クラピッシュなど。今年、嬉しかった出来事は矢口監督からサインをもらったことと、田口トモロヲ監督「アイデン&ティティ」のエキストラに参加したことです。

伊藤洋次 :  1977年、長野県生まれ。専門紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。映画を観て涙したことが一度しかないため、現在は泣ける映画を探索中。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。代表作は「ユー・ガット・サーブド」(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)。

にしかわたく :  漫画とイラスト描いて暮らしてます。映画好きが高じて現在『季刊ロゼッターストーン』に「でんぐり映画館」連載中。 映画とコーラとポップコーンがあれば基本的に幸せ。「飲食禁止のスノッブ映画館を打倒する会」主宰(嘘)。

松本透 :  1974年生まれ。ネコ大好き。泡盛大好き。福岡ホークス頑張れ。サッカー日本代表頑張れ。田臥勇太のNBAデビューに落涙。強烈な映画体験求む!!現在は、なんやかんやとフリーランスな僕です。

山本聡子 :  1973年生まれ。2年前に脱OLして編集者を志す。現在は自然の中を歩く本などを製作中。都会の喧騒に疲れると、吸い込まれるように映画館に行く。 見るのはアメリカ映画よりもヨーロッパ映画が多い。映画も男もラテン系が好きです。

タカイキヨコ :  1966年愛媛県生まれ。企業勤めの後、1年間のロンドン遊学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画のプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をしています。ストレート・プレイ、ミュージカル、バレエ、歌舞伎などの観劇も大好き。

古東久人 :  1959年生まれ。1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 映画雑誌に執筆。編著「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベストはブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。mixiネームは、Dr.コトー。


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