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バックナンバー Vol.32

カナリア
ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうな私の12か月
サイドウェイ

「コーヒー&シガレッツ」 ■ ■ ■

舞台は日常のカフェ、テーブルにはコーヒーとタバコ。どこにでもあるような光景も、この監督にかかると全てに意味を感じられるから不思議。 モノクロの世界で登場人物らが繰り広げる11の会話は、ばかばかしくて思わず「ふふっ」って笑っちゃう。そんな心地のイイゆるい空気が流れている。 キャストは監督作品の常連俳優から女優、ミュージシャンまでひとクセもふたクセもあるメンツが集結し、自分自身を演じている。 監督のユーモアと出演陣の独特の魅力が交じり合っていて・・・そう、まるでコーヒーと砂糖とミルクの関係! 人によって好みは違うけれど、その個性がなんとも絶妙なバランス!そして、 「なんだかんだいっても結局全部コーヒー(=つまりジム・ジャームッシュ・ベース)なんだよな。」と思わせちゃう彼の世界観はすごい。 遅起きした休日の午後とかにお家でのんびり観たい作品です。もちろんコーヒーとタバコと一緒にね。

(前岡宏何)
監督・脚本:ジム・ジャームッシュ
出演:ロベルトベニーニ・スティーブン・ライト、スティーブ・ブシェミ、
     イギー・ポップ、 ケイト・ブランシェット 他
配給:アスミック・エース

=1点、=0.5点。最高得点=5点
カナリア

監督:塩田明彦
出演:石田法嗣、谷村美月、西島秀俊、りょう、つぐみ
配給:シネカノン
http://www.shirous.com/canary/

松本透       ★★★★★
 「少年たちの心の中では戦争が起きているんです」。14歳の少年が殺人事件を起こした時、河合隼雄が言った言葉だ。 12歳の光一と由希の中でも戦争が火吹いている。光一の敵は祖父。そんな彼が手にするのは、マイナスドライバー。 一方、由希には戦争の相手がわからないでいる。光一は、確かな殺意を持ちマイナスドライバーを砥ぎ続ける。 ただ、この映画が描いたのは、カルト教団によるテロ事件を起こした社会だ。光一のマイナスドライバーは、祖父に向けられているのはなく、 今の社会に向けられている。だからこそ、光一が祖父に語る言葉が、とんでもない重みを持つ。そして、ラスト。 これは、希望なのだろうか。それとも・・・。答えが何であろうとも、歩き続けるしかないのだ。マイナスドライバーを手にすることなく、手を取りあって。
中村勝則     ★★★☆
 洗脳されること…それは人間にとって不幸なのか、それとも幸福なのか? この映画を観てそんなことがふっと頭をよぎった。 映画の教団が“オウム真理教”であることは明白だが、教団に洗脳されているはずの主人公・光一(石田法嗣)の視点が極めて純粋そのものだからだ。 教団は彼にとって唯一の“居場所”だったのである。光一は母と妹と引き離されながらも、いつかまた一緒に暮らせることだけを信じてひたすら疾走する。 そして光一と共に疾走する少女・由希(谷村美月)の存在感が、彼をより際立たせる。 しかし教団の崩壊によって“居場所”を奪われた光一を待ち受けていたのは、伊沢(西島秀俊)ら信者の脱退、母(甲田益也子)の自殺、 祖父(品川徹)の引き取り拒否といった、いわば“大人たちの裏切り”だ。そんな絶望的状況でありながらも疾走するしかない光一の姿は実にせつない。 ラストで妹を取り戻し、初めて生き生きとした表情を見せる光一に、希望の兆しが見えるのが唯一の救いか!?
伊藤洋次     ★★★☆
 光一がずっと持ち続けていた1本のドライバーと、由希が口ずさむ「銀色の道」。映画の中でこの2つの使い方が効果的だった。 また、西島秀俊の演技が秀逸で、彼の光一に向けた言葉にはぐっときた(もし彼の役柄を主人公にした『カナリア2』があれば見てみたい)。 塩田監督が子どもたちを描いた作品としては『どこまでもいこう』や『害虫』があるが、以前と比べて作風の変化を感じる。 次第にその視点は鋭くなり、進化していると思う。今後、どんな映画を撮るか楽しみだ。 ラスト、家族の平和を取り戻した主人公の心の雄叫びも、心から拍手を送りたくなるのだ。
カザビー     ★★
 カルト教団の少年と援交している少女が出会い、旅に出る。前半はその設定が面白くて惹きこまれた。 しかし、そんな重い題材を扱ってる割りにはそれぞれが中途半端で薄っぺらい。クライマックスでは少年の身体に異変が起こるのだが、 思わずそれはないだろとツッコミを入れてしまった。そこで一気に冷めてしまい・・・。 キャスティングは完璧なのにもったいないことするなぁ。エンディングテーマのZAZEN BOYS「自問自答」も映像と全く合わずがっかり。 少女役谷村美月のいきいきとした大阪弁だけが印象に残る作品だった。


ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうな私の12か月

監督:ビーバン・キドロン
出演:レニー・ゼルウィガー、コリン・ファース、ヒュー・グラント
配給:UIP
http://www.bj-diary.jp
ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうな私の12か月

タカイキヨコ    
★★★★
 私は原作の「シニカルだけど、どこか抜けてる感じ」が好きだったのだけれど、本作の映画はむしろ恋下手なブリジットのドジさ満開で、 娯楽色の強い作品になっている。ストーリー展開もぶっ飛んでいるけれど、単純に楽しめて、ブリジットの幸せを心から喜べる。 これもすべてブリジットのチャーミングさが勝因かな。大人の女を期待される30代女はあんなに素直になれないから、 頭で考えてブレーキをかけるよりも心に忠実で懸命な彼女がいっそう魅力的で、心が温まる。
松本透       ★★★★
 スマートにいきたい!ルックスもファッションも仕事も恋愛も、スマートにいきたい。だけど、現実は・・・。 そんな理想と現実のギャップを、見たまんまCG使わずに体現してしまったブリジット・ジョーンズことレニー・セルウィガー。 素顔はどうか知りませんが、ヤバイ系の女優さん。『ペディ・サイズモア』では文字通りヤバイ女だし。『シカゴ』でも、人を殺し、夫を利用し成功を果たすヤバ女。 言い方は悪いが、粘着質でヤリ逃げさせさいくせに、自分はさっさと男を捨てるタイプ。 だけど不思議なことに、そのヤバサこそがブリジットの魅力である「ブスカワイ」さを際立たせている。
カザビー      ★★★
 から騒ぎしまくりのブリジットが取材でタイに飛び、なんとマジックマッシュルームでトリップしちゃいます! そんなわけで今回も前作以上にブリジットの暴走は止まらないわけで、すごく楽しめました。おかげで途中、恋愛映画だってことを忘れてしまいましたよ。 ここまでくると漫画にしたほうがいいんじゃないかと思います。
七転び八起きのブリジットの人生を寅さんシリーズみたいに続けてほしいものです。


サイドウェイ

監督:アレクサンダー・ペイン
出演:ポール・ジアマッティ、トーマス・ヘイデン・チャーチ
配給:20世紀フォックス  (C)2004 TWENTIETH CENTURY FOX
http://www.foxjapan.com/movies/sideways/
サイドウェイ

にしかわたく    ★★★★☆
 女房に逃げられ、作家志望といえどいまだデビュー作はなし。ハゲ。30代後半、人生どん詰まり気味の主人公マイルス。 ワインをこよなく愛し、ピノ・ノワールというマイナーなぶどうの品種に自分の人生を重ねている。 いじけたり泣いたりたまにキレたりの冴えない毎日が、ひとつの旅をきっかけに少しずつ変わって行く。 主演のポール・ジアマッティはどう見ても主役顔ではないが、映画を見終わるころにはみんなこいつのことが大好きになっているだろう。 文句なしに楽しい、ダメ男によるダメ男のためのダメ男映画。
中沢志乃      ★★★★
 ワイン、美味しそー!!!ブドウの成長や性質と登場人物の人生や個性が重なるようなこの映画。 仕事も恋愛も思い通りに行かず、後ろ向きに落ち込みまくっている中年の主人公マイルスが新たな一歩を踏み出すまでの過程が、リアルに、でも素敵に、 面白く描かれているが、何よりも印象に残ったのは、登場するワインの美味しそうなこと!友人2人と映画鑑賞後は、もちろんワインを飲みにレッツ・ゴー。 もともとワイン大好きの私が、更にワインの魅力にハマりました。◇どんな環境でも図太く生きるカベルネ・ソヴィニョン種。 好きなワインはやっぱり自分とちょっと似ているブドウから作られていたと納得したりして。
波多野えり子    ★★★☆
 天真爛漫な売れない役者(オンナ好き)と、情緒不安定な作家志望の教師(ワイン好き)。 親友である役者の独身最後の記念に、いざワインめぐり(役者的にはオンナめぐり)の旅へ。 そんな二人のドタバタ劇だ。長い月日をかけて熟成するワインにたとえ、酸いも甘いも経験した大人たちの第二次成長ストーリーが展開される。 とはいえ、「まだまだがんばれ!」と押し付けるわけでもなく、「どうぞご自由に」と言わんばかりのライトな演出に好感がもてる。 可笑しくてちょっと切なくて、人間ってそんなもんよね、と改めて気付かせてくれる貴重なひとときだった。今度はワイン片手に見なくちゃ。
伊藤洋次      ★★☆
ポール・ジアマッティら4人のキャストが◎。すぐに落ち込むマイルスと羽目を外してはしゃぐジャック。 性格が全く違う2人が腐れ縁でつながっているところがおかしくて、つい笑ってしまった。 それと見ていて不思議と懐かしい感じがしたが、監督はあえて1970年代の雰囲気にこだわったとのこと。 音楽も控えめで主張しすぎず、そのテイストに合っていて心地良かった。ただ、欲を言えば全体に大人しすぎる印象。 もう少しスパイスの効いた展開がほしかった。


シネ達日誌
イラストソーシャルネットワーキングサイト「mixi(ミクシィ)」内で、 新たに「シネマカフェ&BAR」のコミュニティを立ち上げました。 映画のタイトルのついたカクテルを出すBARなど、映画にこだわったBARや飲食店を多数紹介しています。 また、メンバーの松本透さんもコミュニティ「ねこシネマ」をオープン。ねこが登場する映画を集めた、ねこ好きにはたまらない内容です 。こちらもよろしくお願いします。 (古東久人)

2005.4.25 掲載

著者プロフィール
前岡宏何 : 1982年、京都生まれ、京都育ちの新人編集部員。現在は京都の無料情報誌で修業中。おいしいもの探しがライフ・ワーク。旅行大好き・映画大好き・音楽大好き!!・・・と好きなものがいっぱいあって困ってます。

松本透 :  1974年生まれ。ネコ大好き。泡盛大好き。福岡ホークス頑張れ。サッカー日本代表頑張れ。田臥勇太のNBAデビューに落涙。強烈な映画体験求む!!現在は、なんやかんやとフリーランスな僕です。

中村勝則 : 1967年、岡山県生まれ。ヨコハマ映画祭選考委員。90年「キネマ旬報」で映画ライターデビュー。日本映画を中心に、VシネマやTVドラマの批評や取材記事を執筆。この3月末に発売された「山田洋次・作品クロニクル」(ぴあ刊)では『男はつらいよ』全作の解説を執筆しています。

伊藤洋次 :  1977年、長野県生まれ。専門紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。映画を観て涙したことが一度しかないため、現在は泣ける映画を探索中。

カザビー :  1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。好きな監督は周防正行、矢口史靖、SABU、ペドロ・アルモドバル、セドリック・クラピッシュなど。 今年嬉しかった出来事は、三池崇史監督・塩田時敏さん・遠藤憲一さんからサインをもらったことと、きらきらアフロ・ザ・ムービーのイベントに行けたことです。

タカイキヨコ :  1966年愛媛県生まれ。企業勤めの後、1年間のロンドン遊学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画のプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をしています。ストレート・プレイ、ミュージカル、バレエ、歌舞伎などの観劇も大好き。

にしかわたく :  漫画とイラスト描いて暮らしてます。映画好きが高じて現在『季刊ロゼッターストーン』に「でんぐり映画館」連載中。 映画とコーラとポップコーンがあれば基本的に幸せ。「飲食禁止のスノッブ映画館を打倒する会」主宰(嘘)。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。代表作は「ユー・ガット・サーブド」(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)。

波多野えり子 :  1979年元旦の翌日に東京・永福町にて誕生。映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごしながら、現在編集者を志しているところ。最近は、まんまと韓国映画とドラマにハマっています。

古東久人 :  1959年生まれ。1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 映画雑誌に執筆。編著「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベストはブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。mixiネームは、Dr.コトー。

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