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バックナンバー Vol.34

スカーレット・レター
クローサー
オペレッタ狸御殿

誕生から四十数年…その先にあるのは日本映画の"明日"!?『ピンクリボン』 ■ ■ ■

 冒頭で黒沢清が商業デビューとなった唯一のピンク映画『神田川淫乱戦争』(83年)について語る。偶然にも僕が初めて観たピンク映画は『神田川淫乱戦争』だった。「きっかけは(高橋)伴明さんの紹介だった」と語る黒沢清とオーバーラップしながら、今度は高橋伴明が当時の思いを語る。これまた偶然にもその時の4本立ての1本に、伴明監督の『性炎奴隷処女』(82年=再映)があった。当時まだウブな高校生の僕にとって場末のピンク専門館は想像を絶する場だったが、その後も恐る恐る通い続け、そんな中で滝田洋二郎、廣木隆一、磯村一路、そして周防正行らの作品と出会った。また、今をときめく大杉漣を初めて知ったのもピンク映画で、そこでギラギラとした魅力を放っていたのも今では知る人ぞ知る事実だろう。『ピンクリボン』を観ながら、僕の脳裏にはそんな記憶がよみがえっていた。それは、僕の映画における青春時代でもあった…。
 いわゆるポルノ映画でありながら、多くの優れた映画人を輩出してきた日本のピンク映画は、世界的にも稀有な歴史をもつ珍しいジャンルだと言われている。前記の黒沢清、高橋伴明のほか、若松孝二、渡辺護、足立正生、井筒和幸ら60〜70年代のピンクで一時代を築いた監督たちが語る当時の舞台裏は、まさに隠れた日本映画史というに相応しい。僕がピンクを観始めた83年には、そのほとんどが一線から遠退いていたも、ピンクによって日本映画に目覚めた僕にとって、今の自分があるのは彼らの活躍があったからだと再認識させられた。なかでも「ピンクは反権力の旗印」と唱える御大・渡辺護が、自作『少女を縛る』(79年)の構図について熱く語る姿は、まさに"活動屋魂"で、その迫力には思わず圧倒されてしまう。ピンクは"ポルノ"でなく"映画"なのだ!
しかし『ピンクリボン』は、そんなピンクを賞賛するだけの作品ではない。むしろ藤井謙二郎監督の視点は極めて客観的で、彼らのコメントと並行しながら女池充、池島ゆたから現役監督たちの撮影現場、そして製作会社のプロデューサーや営業マンらの証言をクールにとらえていく。それは決して明るい現状ではない。ある意味時代遅れなのかも知れない。しかしピンクが彼らの情熱で支え続けられていることだけは確かだ。その情熱がある限りピンクは誕生から四十数年以上経った現在もなお疾走し続けるだろう。そしてその先にあるのが日本映画の"明日"であることを心から願いたい。(中村勝則)

『ピンクリボン』('04/アップリンク) ※'05年5月14日封切

監督・撮影・編集:藤井謙二郎 プロデューサー:浅井隆
出演:黒沢清、高橋伴明、井筒和幸、林田義行、森章、福原彰、中村勝芳、女池充、池島ゆたか、吉行由実、若松孝二、渡辺護、小川欽也、足立正生、田尻裕司ほか
【公式サイト】http://www.uplink.co.jp/pinkribbon/

=1点、=0.5点。最高得点=5点
スカーレット・レター

監督・脚本:ピョン・ヒョク
出演:ハン・ソッキョ、イ・ウンジュ、ソン・ヒョナ、オム・ジウォン
配給:シネカノン
http://www.scarletletter.jp/
no picture

伊藤洋次     ★★★★
 この映画は、ピョン・ヒョク監督の長編2作目。前作はイ・ジョンジェ主演の『Interview』(2000年)という作品で、当時あまり期待しないで見たのだが、細やかで丁寧な作り方が印象深く、なぜか余韻が長く残る映画だった。そして今回は、一転してかなり衝撃的な内容。でも、前作より格段にレベルが上がっていた!ギフン刑事(ハン・ソッキュ)やカヒ(イ・ウンジュ)など登場人物のバランスが見事。もちろん彼らの演技も素晴らしい。謎解きの流れやストーリーのつなぎ方も◎。特に、車のトランクのシーンは壮絶であまりに痛々しく、恐くなるほどだった。
高井清子     ★★★☆
 男はうまく女を弄んでいるつもりでいる。いやいや、女を侮る事なかれ。他人は自分の予想をはるかに越えた秘密を抱えているものかもしれない。だから突然足下をすくわれる。現実にはそのじわりじわりと忍び寄る変化にまったく気づかないものかもしれないが、せめてスクリーンの中では破滅へと落ちていく過程にもう少しドキドキしたかった。でも、前半の淡々さがあってこそこの作品の最大の見所である最後の狂気がいっそう際立ったのかもしれないが。イ・ウンジュの演じる極限状態には演技を越えた鬼気迫るものを感じた。
松本透      ★★★
 「不倫するなら避妊しよう、さもなきゃ地獄に落ちますよ」と言われてる気になるこの映画、ハン・ソッキュがヤリテでもてる不倫刑事を演じます。結構退屈なんですよ、正直これが。韓流ブームに乗り損ねたハン・ソッキュに同情してました。でも頭を離れないのが、映画冒頭の2発の銃声。あの銃声と、どう繋がるのか気になってたら、来ました!やっぱり狂ってますよ韓国映画。そしてハン・ソッキュも狂います。あんな演技できる日本の二枚目役者いるんでしょうか?そこは密室を越えた密閉空間。冒頭の銃声は単なる予兆でしかなく、文字通り「トテツモナクヨクナイコト」がその空間で発生します。その閉ざされた扉を開けたとき、開放感を感じるのではなく地獄を見せられました。合掌。


クローサー

監督:マイク・ニコルズ
出演:ジュリア・ロバーツ、ジュード・ロウ、ナタリー・ポートマン、クライブ・オーウェン
配給:ソニー・ピクチャーズエンタテイメント
http://www.sonypictures.jp/movies/closer/index.html
no picture

波多野えり子   ★★★★★
 オープニングで流れるテーマ曲"The Blower's Daughter"で一気にストーリーの世界へ引き込まれた。作家、フォトグラファー、医者、ストリッパー…美男美女が勢揃いし、4人の会話だけでテンポよく進行していくが、"Hello, stranger"、"Where is Love?"など、どことなくシェイクスピアを思い出させる台詞がとても印象深い。現代ロンドンに自然と溶け込んでいた。どの人物にも共感できなかったけど、洗練された脚本と演出でこの点数。そして、この物語の主役はオスカーにもノミネートされた助演の二人だった。「レオン」から10年以上。ナタリー・ポートマンは女優として努力し続けていますね。
山本聡子     ★★★★
 スピーディなテンポと時間の経過をカットした演出が面白かった。人間の最強の武器である言葉を吐き散らしながら人間の心と体の不安定さを描く。人の心はかくも危うきものなり。愛し合って一緒にいるはずの2人も、いつの間にかすれちがい、裏切り、嫉妬が生まれる。誠実さとか真実の愛などとは無縁な大人たち4人の人間模様は、奇麗事ばかりならべた純愛映画にはどうも馴染めないひねくれものの筆者にとっては、よりリアルで楽しめる映画だった。それにしてもジュード・ロウの役どころは、ちょっと調子がよすぎて腹が立ったけど。
中沢志乃     ★★★☆
 愛する人の全てを知っても愛し続けられるか、いや、全てを知らなくても信じきれるか。男は嫉妬深くて女は調子良く、そして、恋愛は全てタイミング。そんな恋愛の現状をうまくまとめた意欲作。打算的で何気に悶々としているキャリア・ウーマンと医者。直観的なストリッパーと作家。登場人物には誰にも今ひとつ共感できず、ステレオタイプ感も残ったが、淡々としているからこそリアルで真に迫った演技が○でした。
鍵山直子     ★★
 ジュリアにジュード、オーウェンにナタリー。この豪華な顔ぶれからして、万人ウケのありふれたラブ・ストーリーに違いないと、軽い気持ちで観に行ったら、あら大変!4人の男女の嫉妬と打算、エゴにまみれたスクエア・ラブを、赤裸々な言葉の応酬で綴るマジな会話劇…じゃないですか。しかもセリフ量が橋田壽賀子並みに多くて、時々、遭難する始末。いっそ舞台にした方がいいんじゃないの?と思いながら見ていたら、憂うまでもなく舞台の映画化でした。そんなわけで、映画らしい映画を期待していた私には、ダイナミックな展開もなく、ロマンティックなシーンもないこの作品は、ちょっと物足りなかった。韓流を摂取しすぎて、何見ても薄味に感じてしまう…という噂もありますが。


オペレッタ狸御殿

監督:鈴木清順 脚本:浦沢義雄
出演:チャン・ツィイー、オダギリ・ジョー、薬師丸ひろ子、由紀さおり、山本太郎
配給:日本ヘラルド映画株式会社
http://www.herald.co.jp/official/tanuki_goten/index.shtml
オペレッタ狸御殿

松本 透      ★★★★★☆
 映画を見て、嬉しさのあまり涙がこぼれたのは初めてかもしれない。キャストのキャラクターやコネタで勝負したり、奇妙なナチュラリズムで日常を描きたがる監督が増殖する中、そんな彼らと違う次元から、自由な映画をこれでもか!これでもか!と見せてくれる。シェークスピアの「ロミオとジュリエット」でさえ、まだまだ甘いよと言わんばかりの愛の物語!何もかもから自由でありながら、悲恋という言葉さえぶっ飛ばしてくれた監督の個性に、カンパイするしかないですね。そして狸のオペラに、ポンポコポンと身を任せましょう。
カザビ―      ★★★★★
 ヘンテコ日本昔話ミュージカルで豪華絢爛な学芸会なんです。オダジョーの甘い歌声(パッチギ!のも最高。)にうっとりさせられちゃうし、チャン・ツィーは何も分からず演技させられてる感じがとってもキュートで魅力的。そしてめくるめく奇抜でカラフルな映像はまるで万華鏡のよう。ひとつのポップアートとしても楽しめます。とにかくストーリーなんて気にせず雰囲気を楽しむ感覚でこのお祭り騒ぎなタヌキワールドにただ身を委ねてみて下さい。そうすれば既成の概念から開放されて自由でアッパー気分になれるはずです。鈴木清順って人は本当にすごいじっちゃんですねぇ。長生きしていただきたいものです。
にしかわたく    ★★★★
 ねんぴーかんのんりーきー。ねんぴーかんのんりーきー。清順のジジィがまたやんちゃ!おじいちゃんもーホームの外に出ちゃダメだって何度も言ってるで しょ?スゲェ!スゲェ!何がスゲェって薬師丸ですよくしまる!ひろ子!俺は信じてた!ここまでひろ子のポテンシャルを限界まで引き出した演出はやまだかつてなーかった!俺のひろ子が唄う!踊る!そして化ける!ひろ子の歌声は童貞男1億人の胸をえぐる!上手いのか下手なのかわからんけど!チューボーの時に角川の辞書買ったらついてきたポスター、また貼らせていただきます!うううーありがとうジジィ。今までバカにしててごめんよ。死ぬ前にひろ子主演でもう一本撮ってくだちゃん・りん・しゃん。
中村勝則     ★★★☆
 おそらく日本映画界の高齢監督として5本の指に入るであろう鈴木清順。日本映画全盛期の人気シリーズ『狸御殿』は清順監督にとっても長年温め続けていた企画らしいが、もちろん単なるリメイクなどで終わるはずがなく、全編ド派手なCGと妙ちきりんなセットを駆使した度肝抜く映像のオンパレード、その空間で歌えや踊れやの大騒ぎを繰り広げる登場人物たち…どれをとっても清順ワールドです。チャン・ツィイー&オダギリジョーはお世辞にも上手いとは言えないも、大真面目にトライするミュージカルシーンはかなりイッちゃってます。それをサポートするかのように、往年のファンには嬉しい美声を久々に披露する薬師丸ひろ子、負けじとラップまでやっちゃう由紀さおり婆々、そして『ピストルオペラ』を超えるシェークスピア的怪演を見せる平幹二朗ら、それぞれの濃さも映画をひときわ盛り上げてくれます(おっと"うっかり八兵衛"こと高橋元太郎の「マッハGoGoGo」よろしくの大熱唱も忘れちゃいけねぇぜ!)。このお祭り騒ぎのような躍動感に乗れるか乗れないかで評価は大きく分かれるところでしょうが、そもそもこれは贅沢な"お祭り映画"。♪同じアホなら歌わにゃソンソン〜てな気持ちで観るのが良いかも。いや〜それにしても82歳にしてこんなぶっ飛んだ発想の映画を撮ってしまう鈴木清順恐るべし(美空ひばりもCGで生き返らせちゃうし…)。まぁ今年一番の怪作であることは間違いないでしょう。


シネ達日誌
イラスト  演劇集団キャラメルボックスで製作総指揮を務める加藤昌史氏の著書『拍手と いう花束のために』の出版記念パーティに参加しました。加藤氏とは初対面なが ら、本当に気さくにお話してくださいました。記者会見風の企画もあり、私も質 問しました。「演劇集団キャラメルボックスの映画界への進出はありますか?」 加藤氏のお話ではいまのところそういう考えはないそうです。しかし、過去に俳 優として映画に出演したことがあるとのこと。その作品は小田和正監督『緑の 街』で、その時、映画の仕事は大変だなと実感されたそうです。(古東久人)

2005.6.29 掲載

著者プロフィール
伊藤洋次 :  1977年、長野県生まれ。専門紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。映画を観て涙したことが一度しかないため、現在は泣ける映画を探索中。

高井清子 :  1966年愛媛県生まれ。企業勤めの後、1年間のロンドン遊学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画のプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をしています。ストレート・プレイ、ミュージカル、バレエ、歌舞伎などの観劇も大好き。今はどっぷり韓流にはまってます。

松本透 :  1974年生まれ。ネコ大好き。泡盛大好き。福岡ホークス頑張れ。サッカー日本代表頑張れ。田臥勇太のNBAデビューに落涙。強烈な映画体験求む!!現在は、なんやかんやとフリーランスな僕です。

波多野えり子 :  1979年元旦の翌日に東京・永福町にて誕生。映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごしながら、現在編集者を志しているところ。最近は、まんまと韓国映画とドラマにハマっています。

山本聡子 :  1973年生まれ。商社OL時代を経て、2000年より編集者を志す。現在は某メーカーにて、広報誌を作りながら、山雑誌のライターも兼業中。座右の銘は「歩くことは生きること」。当面の夢はスペイン、サンティアゴの巡礼道を完歩すること。ラテン人のように、明るく楽しく生きたいな〜と思う今日この頃。映画も男もラテン系が好きです。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。代表作は「ユー・ガット・サーブド」(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)。

鍵山直子 :  テレビ&FMラジオの構成作家。現在、i-modeとauの携帯サイトで『シネマ通信』、ボーダフォンで『シネマ・エキスプレス』を担当中。 遅れてきたヒュー・グラント・ファンです。

カザビー :  1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。好きな監督は周防正行、矢口史靖、SABU、ペドロ・アルモドバル、セドリック・クラピッシュなど。今年嬉しかった出来事は、三池崇史監督・塩田時敏さん・遠藤憲一さんからサインをもらったことと、きらきらアフロ・ザ・ムービーのイベントに行けたことです。

にしかわたく :  漫画とイラスト描いて暮らしてます。映画好きが高じて現在『季刊ロゼッターストーン』に「でんぐり映画館」連載中。 映画とコーラとポップコーンがあれば基本的に幸せ。「飲食禁止のスノッブ映画館を打倒する会」主宰(嘘)。

中村勝則 : 1967年、岡山県生まれ。ヨコハマ映画祭選考委員。90年「キネマ旬報」で映画ライターデビュー。日本映画を中心に、VシネマやTVドラマの批評や取材記事を執筆。この夏オススメの日本映画は『魁!!クロマティ高校 THE☆MOVIE』。原作漫画にもハマッてる今日この頃です。

古東久人 :  1959年生まれ。1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 映画雑誌に執筆。編著「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベストはブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。mixiネームは、Dr.コトー



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