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バックナンバー Vol.37

メゾン・ド・ヒミコ
ふたりの5つの別れ路
メトロで恋して

放送作家ダンカンが放つ「七人の弔い」 ■ ■ ■

私たちはダンカンのなにを知っているだろうか? たけし軍団の参謀? 「サンデージャポン」の毒舌家? 息子に“甲子園”と名前をつけるほどの無類の阪神タイガースファン?いや、忘れちゃならないのは、ダンカンが稀有な才能を持った放送作家ということ。 今や伝説となった「天才・たけしの元気が出るテレビ」や「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」、さらには「ドラキュラが狙ってる」などなど。 天才たけしの裏には、つねに天才ダンカンがいた。その土壌は東京のブラックユーモアにある。23歳で噺家の立川談志に師事。“立川談カン”という高座名までついたが、 芸風があまりにもキツいため、立川談志は1年でこの弟子を手放すことを決意。レミーマルタン2本をつけて、友人のビートたけしに譲渡された。 それからは、限界線スレスレ番組「スーパーJOCKEY」で芸人開花。黒を墨で上書きするようなブラックユーモアの世界でお笑い芸人、そして放送作家としての土壌を築いていった。 さて、そのダンカンが放つ第一回監督作品が『七人の弔』である。テーマは児童虐待と臓器売買。ごくありふれた7組の親子が集うキャンプ場。 しかし、そこは金と引き換えに我が子の臓器を提供する取引場所だった。そんな親の思惑を子供たちは露とも知らず・・・。
と、この映画の筋書きを3行程度で説明すると、おそろしく暗く。そして現代日本に警鐘を鳴らす社会派作品にも見えるが。 安心してほしい、子供たちの演技は今どきありえないほど劇団くさい。そして鬼親を演じる俳優陣も群集劇のなかでキャラ立ちのために演技を光らせている。 けっして、空気はシリアスではない。しかし、そこにダンカンが脚本のみならず監督まで果たした意味がある。絶望的な闇を蛍光灯でパッと明るく。 闇が光によって暴かれたとき、露になった哀しみの核は意外と、小さい。
最後に、私の好きな「ダンカン話」をひとつ。ダンカンは浅草キッドの玉袋筋太郎さんのお父様の葬儀で、棺のなかにアルミホイルで包んだサツマイモを入れた。 理由は、骨になるころには美味しく焼きあがっているから、だそうだ。

(三笠 加奈子)

監督・脚本・出演:ダンカン
出演:渡辺いっけい、高橋ひとみ、いしのようこ、温水洋一
配給:オフィス北野、東京テアトル

=1点、=0.5点。最高得点=5点
メゾン・ド・ヒミコ

監督:犬童一心
出演:オダギリジョー、柴咲コウ、田中泯
配給:アスミック・エース
http://himiko-movie.com/
晩夏、シネマライズ、新宿武蔵野館、池袋シネマサンシャイン ほか ロードショー
コピーライト:(C)2005「メゾン・ド・ヒミコ」製作委員会
メゾン・ド・ヒミコ

波多野えり子    ★★★★★
 卑弥呼、春彦、沙織、あるいはメゾン・ド・ヒミコの住人たち―どの視点でみるかによって、この作品の感じ方は180℃違ってくるはずだ。 5年かけて練ったというプロットは、「ジョゼと虎と魚たち」より、少しエンターテイメント性が高くもあるが、性や死が大きなテーマである分、 欲望や葛藤がいっそう生々しく表現されている。自分を捨てた父親に感情をぶつける沙織に対して、「あなたが好きよ」と卑弥呼はいう。 これを聞いて、心の中で欝血していた何かが流れ始めた。そして、近頃オダギリジョーの絶対的な色気に魅入られっぱなしの私。 この作品で男女ともに同士が増えたことを確信した。
くぼまどか     ★★★★
 年老いたゲイたちが暮らす海辺の老人ホーム「メゾン・ド・ヒミコ」にやってきた一人の女性「沙織」。 沙織とホームのオーナー卑弥呼、そして彼の若き恋人、春彦の奇妙な人間模様。全編を通じ、丹念に描かれるゲイの生活はあくまでも優雅に、海辺のそよ風のごとく優しい。 自分の視点を「ノーマル」に置くか「セクシャル・マイノリティ」に置くかでその印象ががらりと変わる作品だ。 そして同じく「若者」に置くか「老人」に置くか、どの場面を取っても、多面的で立体的な楽しみ方ができると思う。 しかし、白いドレスの「レディ」のために正装した男たちにはグッと来た。惚れた。
伊藤洋次     ★★★★
 渡辺あやの脚本が光る作品だった。一つひとつのシーン、一つひとつの台詞に美しさや鋭さが見事に表現され、完成されている感じ。登場人物たちのバランスも良く、ムダがない。 設定が特殊なだけに「ストーリーがつまらなくなるのでは?」という不安があったものの、実際には期待を大きく上回る出来! 丁寧で妥協のない作りで、とてもうれしかった。 そして、もう一つ評価したいのがロケーションの素晴らしさ。この場所、この建物以外あり得ないのではないかと思うほど映画の雰囲気にぴったり。探し当てたスタッフに拍手!
中村勝則     ★★★★
 私はゲイの世界を美しく描いた映画など好きではない。ゲイなど美しいものだと思ってないからである。 もっともそれは偏見以外のなにものでもないけど、ヒロインの沙織(柴咲コウ)もそんなひとり。 沙織の視点で映し出されるメゾン・ド・ヒミコのゲイたちは美しさとは程遠い濃い老人ばかりだし、ここで描かれるゲイの世界は決して美しいものではない。 しかしそんな彼らが次第に愛おしく見えてくるのは犬童監督ならではの温かい世界観あってのものでしょう。 沙織にしても、卑弥呼(田中泯)との父娘関係はずっと冷え切ったままだし、父の愛人でもある春彦(オダギリジョー)と素敵な恋が芽生えるわけでもないけど、 メゾン・ド・ヒミコが次第に自分の“居場所”になっていく過程は何とも心地の良い空気です。それゆえブス顔の沙織がラストで見せる笑顔が効いてます。 これは美しいゲイ映画などではなく、切なくもホロリとさせる人生応援歌。柴咲、オダギリ、田中の存在感はもちろん、 ゲイの住人を自然体で演じた役者たち(中には真性もいるらしいが)、そして悪い奴なのかいい奴なのか掴みどころのない西島秀俊…皆いい味出してます。


ふたりの5つの別れ路

監督:フランソワ・オゾン
出演:ヴァレリア・ブルーニ・ラデスキ、ステファン・フレイス
配給:ギャガ・コミュニケーションズ 
http://www.gaga.ne.jp/futarino/
no picture

にしかわたく     ★★★★☆
 僕は昔っから、ラブストーリーは苦手なくせに、なぜか「夫婦モノ」に弱い。 日常のささいなことでぶつかったり、妥協したりしながら、それでもなんとかして一緒に生きていく夫婦というものに感動してしまう。 この映画は夫婦の破局を描くことから始まり、そこからシーンごとに二人の過去へ遡っていくという変則的な構成。清濁併せ呑むラストシーンがとても印象的だったが、 同じ構成の『アレックス』(ギャスパー・ノエ)という大傑作があるので、☆一個マイナス。 うーん惜しい。それにしてもこのフランソワ・オゾンという男、デビュー以来まったくハズレがない恐ろしい監督である。
カザビー      ★★★★
 結末が分かってしまっている映画を観るのは損したようで正直気乗りしなかった。
荒んだ夫婦の関係が徐々にラブラブになっていく・・・!?なんか複雑な気持ちだなぁ。 結婚式のシーンがこれほど哀しくみえたのは初めてかもしれない。 でも過去に遡ってあの夫婦が何故別れてしまったのかを探る作業はなかなか楽しかった。 (エターナルサンシャインほど複雑な構成ではないのでご安心を!)ポツリと言った、なんでもないようなセリフのひとつひとつが意味深に思えてくるから不思議。 そして最後の海のシーンはこれを見せたいがために映画一本撮ったんじゃないかと疑うぐらいの美しさでうっとりしてしまった。酸いも甘いも噛み分けた大人のための作品。
高井清子      ★★★
 夫婦が決定的に別れる場面から、出会いへと時間軸を遡っていきながら、別れの片鱗を辿っていく。 でも遡ることで、どんな悲しい別れにもすばらしい出会いがあったことを説きたかったのだろうか?  いや、出会いだけを賛美している感じでもなく、ラストシーンは妙に暗示的である。 では別れに至る亀裂の数々を見せながら、その場その場で修復への可能性、あるいは別れの必然性を探っていたのだろうか?  いや、むしろ感じるのは、別れというのは、愛し合うふたりに生じるズレの積み重ねというよりも、そのズレへの向き合い方の変化にあるということだ。 関係を壊したくないからこそ、あえてかける優しい言葉。強がっているけれど、相手の裏切りに思わずこぼしてしまう涙。愛とは美しい形だけではないことを思い知らされる。 エピソードごとの描き方はうまいが、時間を遡って描くことの効果はどこにあったのだろう?
中沢志乃       ★★
 今月、★を付けさせていただく2作のうちの1作。こちらは…残念ながら期待はずれでした。 男女が別れに至る5つの理由の映画という宣伝にほぼ乗せられて興味シンシンで見に行きましたが、もっとさりげない理由かと思いきや、あまりにもフトゥーな理由。 そのくせ真相は視聴者の推測にお任せ気味で、まとめると単なるコミュニケーション不足ですかあ?という感じ。 まあ、その曖昧さが男女が別れる理由と言われればそれまでですが…。お互いをよく知らずに結婚という荒海に付き進む男女への警鐘かしら。 ただ主演女優の演技はうまいです。


メトロで恋して

監督:アルノー・ヴィアール
出演:ジュリー・ガイエ、ジュリアン・ボワスリエ
配給:エレファント・ピクチャー
http://www.elephant-picture.jp/metro/
no picture

中沢志乃     ★★★★
 あらら、めっけものをしてしまいました!「メトロで恋して」って何じゃそのタイトル、と、全く期待せずに見に行きましたが、すごーく良かったです! きっと製作陣は幸せ〜な恋愛をしてきた人たちなんだろうな、とニッコリしちゃいました。賛否両論あるかとは思いますが私は好きです! 幸せな時と辛い時の二人の感情が劇的ではなく、美化しているようで実はとてもリアルに伝わってきて、最後には「好き」が一番だよね!と思える。花マルー!オススメ、オススメ!
山内愛美     ★★★★
 32歳独身男性の臆病な恋、という設定だけでもとても惹かれる映画だった。運命の女性は不治の病というベタなオチながらも、さわやかで、見ているこちらがニヤニヤしてしまうような2人の恋模様が良かった。特に好きなのは、初めて2人が過ごした夜の後、彼女が残していった置き手紙を主人公が心の中で(この部分は彼女の声になっている)2度読み返す場面だ。2度目は早口になっているところがリアルでいい。30代の男性でも、女性からの手紙に喜びを感じるのだな、となんだか勉強(?)になった。ラストは何がいいたいのかよくわからず。不治の病なんてことにせず、さらりとハッピーエンドにして欲しかった。バックのフレンチポップスは◎。
松本透      ★★★★
 ラストの意味を考えさせられ、その先の苦しみをともにするハッピーエンドと思いたかった。ひょっとしたらそれは、僕が男だからかもしれないのだが・・・。 メトロで出会った理想の女性。一目見ただけで恋に落ちる。気の利いたヤリトリを経て、女と結ばれるが、彼女の難病に直面させられる。男は激しく動揺する。 そして彼女と別れ動揺を抱えたまま、彼女を思い続ける。そこには、何の格好よさもない。むしろ格好悪い。その彼が決断を下す。想いを告げる。彼女は立ち去る。 窓越しに男の表情を見る。映画は唐突に終わる。エンドロールとともに、歌が流れる。歌が終わると、静かにエンドロールだけがスクリーンに映る。 何の期待もなく見に行ったこの映画に、主人公の男のように感情を静かに揺さぶられてしまった。
団長        ★★★
 恋愛を軸に父子関係にも波及していく展開ですが、どちらも突っ込み足りないというか、唐突な感が否めません。たとえば、主人公の女性がHIVであることが判明するシーン。フランスでは結婚を意識したら、二人で普通に検査に行くものなのでしょうか? そのへんの文化的背景がわからないと、感情移入しづらいです。そもそもなぜHIVになったのかなどにも触れてませんし、オチとしてイマイチ共感できない気がします。ただ、フランス映画ならではというか、1つ1つのシーンがグラビアみたいに美しいです。ビジュアル的には気持ちいいですね。


シネ達日誌
イラスト 今回から、執筆をお願いした団長さんはロックバンド「一里塚華劇団」のヴォーカルです。また、ソーシャルネットワーキングサイト<mixi>の中で、「映画芸術」「荒井晴彦」「湯布院映画祭」のコミュニティも設立しました。こちらもよろしく。(古東久人)

2005.9.25 掲載

著者プロフィール
三笠加奈子 :  ライター。最近、映画を見るのが面白くて、面白くて。物を見る目を鍛える時期が、ようやくやって来ました。頑張って勉強します。

波多野えり子 :  1979年元旦の翌日に東京・永福町にて誕生。映画好きかつ毒舌な家庭で育ち、「カサブランカ」からB級ホラー作品まで手広く鑑賞する日々を過ごしながら、現在編集者を志しているところ。最近は、まんまと韓国映画とドラマにハマっています。

くぼまどか : 「人生すべてが経験値」をスローガンに、ピアニストからライターへと変身を遂げ、取材記事は元よりコラム・シナリオ、最近では創作活動にも手を染めつつあります。基本的に映画は何でも好きですが、ツボにはまると狂います。「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」封切りを観る目的だけでロンドンに飛んだのが自慢。

伊藤洋次 :  1977年、長野県生まれ。専門紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。映画を観て涙したことが一度しかないため、現在は泣ける映画を探索中。

中村勝則 : 1967年、岡山県生まれ。ヨコハマ映画祭選考委員。90年「キネマ旬報」で映画ライターデビュー。日本映画を中心に、VシネマやTVドラマの批評や取材記事を執筆。この夏オススメの日本映画は『魁!!クロマティ高校 THE☆MOVIE』。原作漫画にもハマッてる今日この頃です。

にしかわたく :  漫画、イラストの他、最近はフリペで映画コラムも。映画館は汚ければ汚いほど良い、が持論。5年後は印税生活で悠々自適、年の半分はアジア映画館巡りの旅をしている予定。映画イラストブログ「こんな映画に誰がした?」http://takunishi.exblog.jp/

カザビー :  1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。近況:フランス映画祭のサイン会でなんと憧れのセドリック・クラピッシュ監督と「ロシアンドールズ」のウェンディ役ケリー・ライリーに会えました。緊張していたもののキティちゃんを手渡すことに成功しました。他にも「ルーヴルの怪人」や今年9月公開ロマン・デュリス主演「ルパン」のジャン=ポール・サロメ監督にもサインしてもらったので大興奮でした。

高井清子 :  1966年愛媛県生まれ。企業勤めの後、1年間のロンドン遊学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画のプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をしています。ストレート・プレイ、ミュージカル、バレエ、歌舞伎などの観劇も大好き。今はどっぷり韓流にはまってます。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。代表作は「ユー・ガット・サーブド」(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)。

山内愛美 : 千葉県生まれ。Webでライター活動を行う。一番好きな寝具は毛布。2004年、映画『交渉人 真下正義』のエキストラに参加したのをきっかけに、映画ライターの道を考えるようになる。「映画の助監督をやっている人間」に特に興味を惹かれ、いつか助監督に関する本を作るのが夢。

松本透 :  1974年生まれ。ネコ大好き。泡盛大好き。福岡ホークス頑張れ。サッカー日本代表頑張れ。田臥勇太のNBAデビューに落涙。強烈な映画体験求む!!現在は、なんやかんやとフリーランスな僕です。

団長  : スーパーロックスター。メジャー契約なし、金なし、コネなしながら、来秋、日本武道館でライブを行う。ラジオDJ、本のソムリエ、講演、コラムニストなどとしても活躍中。大の甘党で“スイーツプリンス”の異名をとる。バンドHP http://www.ichirizuka.com

古東久人 :  1959年生まれ。1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 映画雑誌に執筆。編著「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベストはブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。



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