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バックナンバー Vol.39

そして、ひと粒のひかり
ドア・イン・ザ・フロア
ランド・オブ・プレンティ

山形国際ドキュメンタリー映画祭へ行って ■ ■ ■

山形駅に着くと雨が降っていた。ついてない。次の日は一日で六本の映画を観賞。雨のことは忘れる。国際映画祭というと敷居が高いと感じていたが、その印象は違った。どこから持ってくるのかわからない赤絨毯もなければ、背中が大きくあいた服を着てドレスアップした人もいない。自然に映画祭が山形という地に溶け込んでいる。最初に観た作品は「老いた猫のお引越し」。対称的な二人の老人の生き方を描いている。上映後は観客が監督へ質問できる。日本の作品「影」は監督の遊び心溢れる作品。上映だけでなく映画監督のディスカッションもあり、観客と作り手の距離がとても近い。映画は遠い世界のものではない。私たちのいる日常から生み出され、育っていくもの。とっても得した気分。参加できたのはたった一日だったけど。

(さとうまゆみ)

=1点、=0.5点。最高得点=5点
そして、ひと粒のひかり

監督:ジョシュア・マーストン
出演:カタリーナ・サンディノ・モレノ、イェニー・パオラ・ベガ
配給:ムービー・アイ・エンタテインメント
http://www.soshite-1tsubu.jp/
no picture

カザビー         ★★★★☆
 私が抱く麻薬の運び屋のイメージ像はウィレム・デフォーとかゲイリー・オールドマンみたいな中年男性だった。しかし、この映画では普通の17歳の女の子が妊娠してしまいお金欲しさに運び屋になってしまう。それがコロンビアでは実際にあるというのだから驚きだ。主人公マリアは麻薬が入ったピルを62粒も飲み込みコロンビアからN.Y.へ運ばなくてはいけない。仕事をする前に大粒のブドウで飲み込みの練習をするのだがこれがまたキツそう。それでもマリアはこの仕事にかけている。なぜならその先には明るい未来があることを信じているからだ。マリアの決意に満ちた強い眼差しに、人生は自分で切り開いていくという事の大切さを改めて教えられた。将来について悩んでいる人におすすめの一本。
中沢志乃        ★★★★☆
 今月も良い映画を見てしまいました。家族を支えるお金を稼ぐために麻薬の袋を飲み込み、コロンビアからニューヨークへと密輸する少女たちの現実。命をも落とすかも知れない危険に敢えて飛び込む少女たちの純粋な気持ちが切なくて、私まで何とも言えない気持ちになりました。そして一番悲しかったのが子供の幸せのために母国を出る母の気持ち。東京は好きだけど子供を育てるのはどうでしょう、と思っている自分と重なってしまい、そんな母国を持つことの寂しさを客観的に見せ付けられました。なんとかしなくては。原題のMaria Full of Graceに大きく納得しましたが邦題もナイス。ところで私は立ち見(座布団を借りて通路に座り見)でしたが、お薦めです。
団長           ★★★☆
 衝撃を受けました…。コロンビアの麻薬、まさかこんな世界とは…。自分とは全く文化も環境も違う世界のことなのに、まるで主人公そのものになったような気分とスリルを味わいました。“人生とは何たるか”を考えさせられてしまいました。かなりヘヴィな内容なので、絶対見るべき!とオススメはできません。が、見たら必ずや何かを感じる作品だと思います。またマニアな視点から見ても、全くムダがなく非常に完成度が高いです。1つ1つの絵に力があります。役者の演技も素晴らしいですよ!
三笠加奈子       ★★★
 コロンビアの片田舎に住む17歳のマリアが、流されるがままに麻薬の運び屋に身を落とし、62粒のドラッグをお腹に詰めてニューヨークへ渡る“下降線のロード・ムーヴィー”。マリアの無知な行動にイラつきもし、救いようのない現状が淡々と描かれる起承転のストーリーに、見ている方も苦行を強いられるが・・・。物語の結を担うマリアの凛とした眼差しで、すべての不幸が“希望”へと昇華された。マグダラのマリアが開眼する瞬間。日本で暮らす17歳の少女たちよ、「目ヂカラ」とはこういう眼差しをいうのだ!


ドア・イン・ザ・フロア

監督:トッド・ウィリアムズ
出演:キム・ベイシンガー、ジェフ・ブリッジス
配給:角川ヘラルド・ピクチャーズ
http://www.herald.co.jp/official/door/index.shtml
no picture

高井清子       ★★★★
 数年前に脚本を読んだときから、「ガラスの箱」のイメージが残っていた。それは登場人物一人ひとりの心であり、そんな心が寄り集まった彼らの人間関係もまた、ガラスの板が寄りかかっているように、どこか一角を押すともろくも崩れそうな危うさを内包している。心に開いた穴を埋める術がわからず、一番理解し、愛しているのに、傷つけ合ってしまう父と母。壊れたガラスの破片は、純真無垢な子供たちに鋭利な刃を向ける。ひとりの青年はその刃を受けながら、大人へと成長していくが、彼の訪れでひとつの家族は分解する。そんな人間の悲しい性が、やはりガラスの透明感と同時に不透明感を感じさせる色と、適度な緊張感のあるどこか硬質な質感で、美しく切なく描かれていた。
松本透         ★★★★
 そのドアを開けると髪の毛が一瞬にして白くなる。その先には、他人には理解できない本当の苦しみや哀しみがうずまいているからだ。それが、ドア・イン・ザ・フロア。書生とのセックスに溺れようとする人妻、ヌードモデルとの不倫を続ける人気作家の夫。2人はお互いのドアの奥にあるものを知り共有している。しかし2人の人生は、別々の道を進みはじめる。同じドアを持っているからこそ、2人は一緒に生きられないのだ。すごく控えめに言って、こんなに悲しいことってないんじゃないだろうか。でも本当は、同じドアを開けて、違うものを観ていたのかもしれない。
山本聡子        ★★★
 アーヴィングの小説の冒頭部のみを映画化した本作品、悲しみに沈む人妻を演じたキム・ベイシンガーの演技が秀逸でした。何も変わっていないように見えても、実は刻一刻と変化している人の心を、感情を抑えた地味な演技で表現。原作では、主人公の女の子がおばあさんになるまでストーリーは続くので、尻切れトンボの感じは否めなかったけれど、とても味わい深く楽しめました。終わり方もよかったです。平凡な日常の中に潜むドラマを淡々と綴るような、アーヴィングの小説がかもし出す雰囲気は、見事に映像化されていたと思います。
にしかわたく      ★☆
 ジョン・アーヴィング原作ものは、新作が来るとファンとして一応見に行くことにしてますが、今回はいただけませんでした。原作好きも満足する映画化って確かに難しいけど、成功してる作品がないわけではないですからね。小説にしろ戯曲にしろ、映画に翻案するときは、土台を全部ぶちこわして一から作り上げるくらいの勇気とエネルギーが必要だと思います。アーヴィングの映画化で僕が満足してるのは『ガープの世界』と『ホテル・ニューハンプシャー』だけですが、この2本は確実に「監督の映画」になってました。こんなぬるい映画に行くくらいだったら、家で『北京原人』のビデオでも見てたほうがましでごんす!


ランド・オブ・プレンティ

監督:ヴィム・ヴェンダース
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ジョン・ディール
配給:アスミック・エース
http://www.landofplenty.jp/
no picture

伊藤洋次        ★★★☆
 ヴィム・ベンダース監督の作品は、なぜこんなにも「切なさ」や「哀しさ」の表現が優れているのだろう。最初はあまり意識することもなく、ただストーリーを追っていただけなのに、気付いた時には不思議なほどしみじみとした気分にさせられている。今作でも、その手腕の高さは相変わらず。伯父ポールと姪ラナ――血のつながりはあっても、異なる世界を歩んできた2人。彼らの人生が交わる その一部分を見事に切り抜いている。風になびく星条旗が鮮烈。
山内愛美        ★★☆
 最後まで見て「…結局なんだったの?」と思ってしまった。ポールがなぜか自信満々にテロリストと思われる男を追っていき、全くの勘違いだったことがわかったときには「そういうオチかい!」とツッコミを入れそうになった。わたしがアメリカに関するそのへんの知識を持っていなかったせいかもしれないが、誰がみても説得力を持たせて欲しかった。登場人物がそれぞれ魅力的だったのが救い。ストーリーは、ラナとポールが絡んでいくあたりから引き込まれた。映像は臨場感があって、自分がすぐ側について見ているような気持ちを味わえた。
くぼまどか        ★★
 国家としては常に「善」であり「強」であるアメリカの一人一人は、なんと弱く優しさに満ちた個であることか。ディズニー映画「トイ・ストーリー」のバズ・ライトイヤーを彷彿とさせる、滑稽なまでに正義感に満ちたポール。はじめ手垢のついたヒーロー幻想にいらだちもしたが,姪であるラナと、その周辺の 人々とのかかわりを丹念に追ってゆくプロセスは静かな説得力がある。ニューヨーク同時爆破テロやパソコンを使ってチャットをする場面で「今」の話であるとわかるが、映像も音楽もレトロ。そのミスマッチ感は当然狙った物であろうが、私には最後まで違和感でしかなかった。


シネ達日誌
イラスト mixiコミュニティ最新情報
 新たに映画関連のコミュニティとして「映画祭.net」「映画検定」「デニス・ホッパー」「根岸吉太郎」「大森一樹」「澤井信一郎」「シネマアートン下北沢」を立ち上げました。また、「殴られ屋・晴留屋明」のコミュニティも作りましたので、興味のある方はぜひご参加ください。(古東久人)

2005.11.26 掲載

著者プロフィール
さとうまゆみ : 1979年生まれ。父は映画館に行かない。母は映画を観ると15分で寝る。そんな家庭環境で、なぜか映画好きに育つ。会社員として平凡な日々を過ごしながら、アフターファイブはもちろん映画鑑賞。口癖は「映画を作りた〜い」。最近、友人に「作れよ!」と切れられた。なかなか行動に移せないのよ。

カザビー :  1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。近況:フランス映画祭のサイン会でなんと憧れのセドリック・クラピッシュ監督と「ロシアンドールズ」のウェンディ役ケリー・ライリーに会えました。緊張していたもののキティちゃんを手渡すことに成功しました。他にも「ルーヴルの怪人」や今年9月公開ロマン・デュリス主演「ルパン」のジャン=ポール・サロメ監督にもサインしてもらったので大興奮でした。

中沢志乃 :  1972年5月8日、スイス生まれ。小学校時代に映画好きになり友達と劇を作る。一時は別の道を目指すもやはり映画関係の道へ。 5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢はもちろん世界一の映像翻訳者です。代表作は「ユー・ガット・サーブド」(ソニー・ピクチャーズエンタテインメント)。

団長  : スーパーロックスター。メジャー契約なし、金なし、コネなしながら、来秋、日本武道館でライブを行う。ラジオDJ、本のソムリエ、講演、コラムニストなどとしても活躍中。大の甘党で“スイーツプリンス”の異名をとる。バンドHP http://www.ichirizuka.com

三笠加奈子 :  ライター。念願のホームシアターが完成! D端子接続&プログレッシブ方式で映画を見るようになってから、ジャン・ジャック・アノー監督が隠れた(隠れてないけど)映像派だと気づき、もう一度この方の作品を見直してみようかと再考。

高井清子 :  1966年愛媛県生まれ。企業勤めの後、1年間のロンドン遊学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画のプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をしています。ストレート・プレイ、ミュージカル、バレエ、歌舞伎などの観劇も大好き。今はどっぷり韓流にはまってます。

松本透 :  1974年生まれ。ネコ大好き。泡盛大好き。福岡ホークス頑張れ。サッカー日本代表頑張れ。田臥勇太のNBAデビューに落涙。強烈な映画体験求む!!現在は、なんやかんやとフリーランスな僕です。

山本聡子 :  1973年生まれ。商社OL時代を経て、2000年より編集者を志す。現在は某メーカーにて、広報誌を作りながら、山雑誌のライターも兼業中。座右の銘は「歩くことは生きること」。当面の夢はスペイン、サンティアゴの巡礼道を完歩すること。ラテン人のように、明るく楽しく生きたいな〜と思う今日この頃。映画も男もラテン系が好きです。

にしかわたく :  漫画、イラストの他、最近はフリペで映画コラムも。映画館は汚ければ汚いほど良い、が持論。5年後は印税生活で悠々自適、年の半分はアジア映画館巡りの旅をしている予定。映画イラストブログ「こんな映画に誰がした?」http://takunishi.exblog.jp/

伊藤洋次 :  1977年、長野県生まれ。専門紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。映画を観て涙したことが一度しかないため、現在は泣ける映画を探索中。

山内愛美 : 千葉県生まれ。Webでライター活動を行う。一番好きな寝具は毛布。2004年、映画『交渉人 真下正義』のエキストラに参加したのをきっかけに、映画ライターの道を考えるようになる。「映画の助監督をやっている人間」に特に興味を惹かれ、いつか助監督に関する本を作るのが夢。

くぼまどか : 「人生すべてが経験値」をスローガンに、ピアニストからライターへと変身を遂げ、取材記事は元よりコラム・シナリオ、最近では創作活動にも手を染めつつあります。基本的に映画は何でも好きですが、ツボにはまると狂います。「ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還」封切りを観る目的だけでロンドンに飛んだのが自慢。

古東久人 :  1959年生まれ。1980年代にキネ旬常連投稿から映画ライターへ。 映画雑誌に執筆。編著「相米慎二・映画の断章」(芳賀書店)。 生涯のベストはブニュエルの「皆殺しの天使」と長谷川和彦の「太陽を盗んだ男」。


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