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バックナンバー Vol.52

麦の穂をゆらす風
手紙
映画監督って何だ!
めぐみ―引き裂かれた家族の30年

ケン・ワタナベの芝居暴走『硫黄島からの手紙』 ■ ■ ■

硫黄島ニ部作と銘打っているが、『父親たちの星条旗』と『硫黄島からの手紙』はまったく違うタイプの映画だ。前者は戦争の背景を描いたもので、後者は現場を描いている。戦争を背景にした社会派ドラマ『父親たちの〜』は人間と人間社会の矛盾をつくイーストウッド節炸裂の苦い後味の残る佳作だった。『硫黄島〜』は昭和の日本映画の懐かしい匂いがする。非国民とか憲兵隊なんていう単語久しぶりに聞いたなー、こういうの昭和の夏休みに見たなー、という既視感のある、普通に良く出来た戦争映画だ。 二宮演じる西郷視点で物語は進み、 西郷と彼の周囲の兵士たちの生き様を描く西郷が見た硫黄島。歴史に名を残さない一平卒だからこその説得力がある。主演は渡辺謙、ということになっているが、実は二宮和也が主役だ。二宮や加瀬亮の肩の力の抜けた佇まいに比べ、世界のワタナベは少々やりすぎ感がある。役者がスクリーンの中に自然に息づいているように撮るイーストウッド作品の中でこんなに「芝居」している人は珍しい。監督が日本語を聞き取れないためなのか、時々、役者ケン・ワタナベの魂が暴走している。誰か言ってやれよ。

(櫻井輪子)
監督:クリント・イーストウッド
配給:ワーナー・ブラザース映画
http://wwws.warnerbros.co.jp/iwojima-movies/

=1点、=0.5点。最高得点=5点
麦の穂をゆらす風

監督:ケン・ローチ
出演:キリアン・マーフィー、ポードリック・ディレーニー
配給:シネカノン
http://www.muginoho.jp/
 

高井清子          ★★★★
 私がいた1998年のロンドンでもテロ未遂事件があるなど、英国の日常はIRAの恐怖にさらされており、過激派に対してよい印象は持っていなかったのだが、冒頭に描かれる英国側の酷い処遇を見ていると、同情したくもなった。「やはり愛する家族・仲間・風土をかくも傷つけられた痛みは許しがたいと」。しかし仲間のために戦う独立紛争は、やがて仲間内での対立を生み出す。人間が幾度も幾度も繰り返してきた悲しい過ち。「過ち」と簡単に言い放てない複雑な葛藤が冷静に描かれている。現代社会へ綿々と続く根強いしこりを受け止めるために歴史の一面を描く意義は大きい。勉強になりました。
中沢志乃          ★★★★
 あらゆるコメンテーターや評論が絶賛していたこの映画。しかもカンヌでパルムドール賞まで取っている。それなら、と見てみました。◆1920年代、イギリスに抑圧されたアイルランドは独立を求めて反撃に出る。しかし、やっと勝ち取った条約が不満足で、今度はアイルランド人同士の抗争が始まる…。映画は奇をてらったところもなく、暴力で解決を図った者は、問題が起きるとまた安易な暴力に流れていくことをとくとくと語っていました。まさに時代に翻弄されてしまった若者たちの悲しい物語…。上映終了後、一緒に見た女友達との共通の感想は、「戦争ってさあ、みんながやりたくな〜いって言えばいいのにね〜。不満な条約でも少しずつ直せばいいのに〜。」そんなに簡単なことではないようで、でも簡単なことかも。平和ボケ日本のナイスパワーを今こそ発揮すべき!と思いました。
悠木なつる         ★★★★
 愛国心があるが故に殺し合わなければならない戦争の不条理さが、スクリーンから痛々しいまでに伝わってきた。特に、兄弟であろうとも敵とならざるを得ない葛藤や苦悩が凝縮されたクライマックスシーンは、やりきれない気持ちでいっぱいになった。冒頭のシーンでは、仲良く“ハーリング”というアイリッシュスポーツを楽しんでいたというのに……。よく、人類の歴史は戦争の歴史だと言われるけれど、時代に翻弄された彼らが高い代償を払ってまで貫こうとしたものの真価について考えさせられた。1920年当時の話でありながら、今なお世界中で起きている争いに通じるものがあり、ケン・ローチ監督の力強いメッセージ性が感じられる作品。


手紙

監督:生野慈朗
出演:山田孝之、玉山鉄二、沢尻エリカ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
http://www.tegami-movie.jp/
 

野川雅子         ★★★★★
 手紙がつなぐ、人との絆を描いた感動作。手紙の持つあたたかさを、これ程に感じさせる映画に今まで出会った事がなかったように思う。犯罪者の家族が置かれている立場に胸が締付けられると共に、現実を受け入れていかなければならないという事実にも納得する。今の目の前にある試練から逃げずに立ち向かう勇気、そしてどんな状況にあっても変わらず接してくれる人を大事にしなければいけないという事。これは、映画を観た誰もが自分自身に当てはめて考えられる事ではないだろうか?衝撃的な深い内容ではあるけれど、観た後に心がジーンと優しい気持ちになる、大事な人に手紙が書きたくなるそんな1本。挿入歌の「言葉にできない」がいつまでも頭の中から離れません。
団長            ★★★★☆
 1つの過ちに対する家族の苦しみ、差別…いろんなことがリアルに実感できすぎて衝撃を受けました。罪を犯すことは自分だけが責任をとれば済む問題ではなく、家族や親族にも影響を及ぼす、ということへの意識が、僕自身も足りなかったです。犯罪者本人、あるいは家族が身近にいた場合、どう感じ、どう接するのか、考えたこともありませんでした。映画を見ながら、そして見た後にもいろいろ考えさせられました。同時に愛や友情の素晴らしさに胸を打たれ、涙が止まりませんでした。
カザビー         ★★
 この映画を観てはいけない人種がいる。それはお笑い好きな人だ。主人公直貴が親友とお笑い芸人を目指すのだが、その漫才ネタがびっくりするぐらい面白くない。 それなのにトントン拍子に人気が出てCMの仕事まで決まってしまう。 ありえ ない・・・。 ネタの寒さが邪魔して、ここぞという感動シーンに集中できなかった。 お笑い道はそんなに甘くない!! 設定は原作通りミュージシャンでよかったのではないかと。 それに沢尻エリカの下手な関西弁も気になったし。 そんなわけでお笑い好き の方はかなり覚悟していってください。 お笑い好きではない方は普通に感動できますのでハンカチをお忘れなく!
りびんぐでいらいつ   星なし
 「今年は邦高洋低だ」なんて映画ファンからよく耳にするが、この映画程少しいい兆候にあるその日本映画の行く先の足を引っ張る映画はない。主演の女優さん。ゴシップ的話題ばかりが先行し過ぎている感がある。ここでそれをあげつらって揶揄したりはしない。ただ一つ。それならまわりに有無言わさない程きっちりと良いお仕事をやっていただきたい。それだけである。大阪弁を使うならそれなりに操ってから出演すべき。大阪人に失礼だ。それからこの映画。原作の“バンド”の部分を“お笑い”に変えたという所に昨今のお笑いブームのお手軽さ加減が透けて見える。お笑いも馬鹿にし過ぎなのが見ていて腹が立つ。ちなみに原作は良いですが。


映画監督って何だ!

監督:伊藤俊也
出演:小泉今日子、佐野史郎、石川真希、原田芳雄、日本映画監督教会会員
http://www.dgj.or.jp/
 

りびんぐでいらいつ   ★★★
 「映画監督って役者より実は芝居がうまい」って聞いた事がある。その言葉を証明するかのようにこの映画に出ておられるほとんど監督みなさんの芝居がまぁ達者なこと。この映画を見て少しは昨今の役者も勉強してほしいと思ったその映画の内容は、映画監督に作品自体の権利がないという事を見ている人間に簡単に教えてくれる教養映画だった。ただ映画監督が作った作品なのにフィルムじゃなくてDVっていう所が今の日本映画界の現状を表している感じが悲しいがそこは長田カメラマンの面目躍如。映画の文法で撮られているところがすばらしい。特筆すべきは2カメフィックスの大島渚監督の出演シーン。題字をただ書くだけのシーンが妙に緊張感のあるシーンに仕上がっている。失礼を承知で言えば大島監督生前の最後の動く映像になる可能性が高い。なのでこのシーンだけでも見る価値はアリな気がする。
重本絵実         
 「映画監督って何だ!」と主張するのなら「この映画は何だ?」と問い返したくなる。現行著作権法では映画の著作権は製作会社に帰属し、映画監督に著作権は認められていない。この状況を打開すべくこの映画は作られた。しかし、この法律は35年前に一度定められた法律なのである。国会の場で映画監督側の言い分は通らなかった。政治的に彼らは敗者なのである。この映画は「なぜ敗者になってしまったのか?」の検証もままならず、敗者の論理から逸脱できずに著作権を認めてくれと叫んでいる子どもじみたところがある。もしも監督に著作権が本当に必要なら五所平之助、小国英雄両氏の著作権を侵害せずにその怒りを表現して欲しいと願って止まない。
南木顕生         星なし
 「…泥棒だ!」 と、シャルル・スパークは菊島隆三に言ったそうです。 小国英雄のオリジナル「煙突の見える場所」のワンシーンを本木克英、林海象、鈴木清順の三人で「演出」する。その試み自体は面白いと思う。同じシナリオの同じシーンを三人の監督が撮るということで、カット割りとか音楽とかキャスティングで「個性」はでるはずだからだ。そこには個々の創意工夫もあり個々の解釈による演技指導もあるだろう。なるほどそういう意味では監督という創造行為は充分に認められるし、「著作権」を主張するのもよくわかる。ところが、この三人のカントクたち、何を勘違いしたかオリジナルシナリオを「改竄」して「個性」を主張するのである。本木はコントに、林は劇中劇に、鈴木はいつものナンダカワカンナイものに変えている。これじゃぁ、個々の「演出力」」というものが問えないではないか!? まるで監督というのはいつもこうしてシナリオを 改竄して開き直ってるということなのか!もっと怒れよ、シナリオ作家協会。 ただ、ひとつ感心したことがあった。監督という人種は演技指導が仕事だけあって、皆それなりに役を理解して演じていた。リアリズムの人はリアルに、クサい人はクサく、演技に興味のない映像派は大根にと「個性」が出たのでありました。なるほど、これはこれで監督の「著作権」の主張にはなってるわな。>なってねぇよ!


めぐみ―引き裂かれた家族の30年

監督:クリス・シェリダン、パティ・キム
出演:横田滋、横田早紀江、増元照明
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
http://megumi.gyao.jp/
 

伊藤洋次        ★★☆
 当初、家出や失踪と考えられていた出来事。それが北朝鮮による拉致として認識され、政治問題となって解決へと動き出す過程が丁寧に浮き彫りにされている。今まではニュースや新聞記事で断片的に接してきた一連の拉致問題だが、こうして2時間のドキュメンタリー映画として見ると、あらためて問題の深刻さを思い知らされる。音楽やイメージ映像の入れ方など気になった点はあるものの、30年にわたる家族の悲痛な叫びが胸に突き刺さる映画だった。
りびんぐでいらいつ  あえて星なし
 冷静な目で判断してこの作品は星を付けて良し悪しで判断するような映画ではないと思う。(というか厳密に言えば映画じゃないし)こういう事実を世界の人に知らしめるためにはあえて大きいスクリーンで見る必要があると思う。まずこういう作品を外人に作られたという事実がなんとも歯がゆく悲しい事実だが、ただ日本で作られていた場合これ程この事件について客観視した作品になっていたか?否か?やはり否だろう。日本のテレビで放送される映像素材がいかに甘口で加工されたものであるのかそれを見られるだけでもゾクゾクする。そしてあまり公には報道されない何故めぐみさんの嘘の遺骨を送ってまで返さないのか見え隠れする事実に驚きと怒りを禁じえない。めぐみさんの娘さんがめぐみさんのお母さんにそっくりな表情を見せるたび一言では言い尽くせない思いがこみ上げる。見て損はなし。


2006.12.25 掲載

著者プロフィール
櫻井輪子 : 画コラムとか描いたことのあるイラストレーター。アート系やエンターテイメント系、ビッグバジェットにインディーズ、アメリカも中東もヨーロッパも、映画に貴賤なし、という姿勢でなんでも観ますよ。でもリュック・ベッソンとマイケル・ベイのはもう観ないな。

高井清子 : 1966年生まれ。企業勤めの後、ロンドン留学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画の脚本やプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をする。今は韓流にどっぷりはまり、『韓国プラチナマガジン』にもレビューを寄稿している。

中沢志乃 : 1972年5月8日、スイス生まれ。5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢は世界一の映像翻訳者。現在、トゥーン・ディズニー・チャンネルで吹替翻訳を手がけた「X-メン」が絶賛放映中。10月25日、字幕翻訳をした「ラストサマー3」発売。

悠木なつる:1973年生まれ。安定していたOL生活をあえて手放し、現在、映画ライター見習い中。「食えるライター」を目指してジャンル問わず映画を観まくる日々。

野川雅子 : 1985年山形県生まれ。19歳で映画に出会い、それ以来、映画に恋愛中。人の心を描いた邦画が特に大好き。日本中に映画の魅力を幅広く伝えられる映画紹介をするのが夢。

団長 : スーパーロックスター。メジャー契約なし、金なし、コネなしながら、来秋、日本武道館でライブを行う。ラジオDJ、本のソムリエ、講演、コラムニストなどとしても活躍中。大の甘党で“スイーツプリンス”の異名をとる。バンドHP http://www.ichirizuka.com

カザビー :  1978年生まれ。映画とお笑いをこよなく愛するOL。「パッチギ2」のエキストラに参加。井筒作品おなじみの乱闘シーンをかなり近くで見られて大興奮!迫力あったなぁ。

りびんぐでいらいつ : ワケあってペンネームの神出鬼没で無自覚、無節操、無計画の気まぐれな駄文書きです。よろしく。

重本絵実 : 1981年名古屋市生まれ。この現実を生き抜くことに嫌気がさし、映画の世界に迷い込み早五年。もう抜けられません。ただ今のベスト・ワンは「天井桟敷の人々」と「浮雲」(成瀬巳喜男監督)です。

南木顕生 : 1964年生まれ。シナリオライター。日本シナリオ作家協会所属。映画は劇場のみ鑑賞をモットーに現役最多鑑賞脚本家を目指している。ここ二十数年、年間劇場鑑賞数百本を下回ったことがないのが自慢。怖いもの知らずの辛口批評は仕事を減らすのでは、と周囲に心配されているとか……。

伊藤洋次 : 1977年長野県生まれ。業界紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。最近気になる監督は、廣末哲万・高橋 泉、園子温、深川栄洋、女池充など。



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