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バックナンバー Vol.60

腑抜けども、悲しみの愛をみせろ
リトル・チルドレン
インランド・エンパイア

シネマの達人が語るとっておきの一本 : 第7回 『ドントルックバック』(1967・イギリス)

(今月の監修:にしかわたく)
巻頭コラム : 「ファイアー・ドッグ」公開!

image いいですねー、いいですねー。今回のコラムで取り上げる映画は『ファイアー・ドッグ』!私、この映画を観る度にノリノリです。
 ハリウッドのスター犬がある日、撮影中に飛行機から落っこちて、消防隊長の息子に拾われる…そして少年とのドタバタと友情が…みたいなストーリーのこの映画。何と言っても音楽が最高です。シェーンが学校をサボる時のポップな楽しい音楽、中ほどのモンタージュで使われるぱあっと明るい将来を予感させるような音楽、マーク伯父さんにまつわる悲しげなタイミングの音楽などなど、どれも嫌でも感情が入り込んでしまうほどナイスです。実はこの映画の字幕を手がけたこの私。翻訳中もノリノリで歌いながら訳しちゃってました。しかも、キャラは皆、個性派ぞろい。頼りになるんだかならないんだか分からないフェイヒー隊長に、料理がドヘタなジョー、男勝りのペップ、アホのテレンス、犬のマネージャーのトレイ、そしてうさん臭い面々等、非常に分かりやすいナイスパーソンばかりです。犬のデューイは、もちろん喋ったりなんかせず、リアルに素晴らしい演技を見せてくれ、1つ1つの表情が勇ましくて愛らしくてキュートなことこの上ありません!そうそう、忘れてはならないのは少年、シェーン。imageきっとアメリカ本国ではキャーキャー言う女の子に囲まれているであろうこの少年。寂しげな演技が実にうまく、でも、本作に関わった男性陣に言わせれば「ちっともカッコよくない」、女性陣に言わせれば「これはモテる!」という、男性と女性で意見が真っ二つに別れた俳優でした。音楽、キャラクターときたら、あとはストーリーが良ければ完ぺきですね。ただのファミリー・ドッグ・ムービーとあなどるなかれ。何気に感慨深いメッセージも隠れています。実はこのメッセージ、子供より親が納得しそうな、あるいは子供に言いたそうなメッセージでもあったりして。私は、まだ100%納得はでき…ないかな、できるかな。(え!)
 9月1日(土)公開!是非、老若男女、集ってご覧くださいませ…!

9月1日(土)映画の日
T・ジョイ大泉 他 大きく読みやすい字幕でワンだふるロードショー!!
http://www.foxjapan.com/movies/comingsoon/
(文:中沢志乃)


最新映画星取表 =1点、=0.5点。最高得点=5点

『腑抜けども、悲しみの愛をみせろ』   
監督・脚本:吉田大八  原作:本谷有希子
出演:佐藤江梨子、佐津川愛美、永作博美、永瀬正敏
http://www.funuke.com/
原作は本谷有希子が自身の戯曲を小説化した、ブラックユーモアあふれる家族の物語。自意識過剰な姉を佐藤江梨子が熱演、彼女に怯える妹を若手の佐津川愛美が好演している。

高井清子            ★★★★★
 現代にありがちな「他人のせいにしてばかりの若者」を「面白い」とあざ笑うブラックユーモアが痛快だ。さらに最近の風潮を象徴するような「何でもポジティブ」という人間もまた、どこかそら恐ろしくて笑える。同世代の劇作家ゆえの鋭い視点は、今の時代や若者をさまざまに浮き彫りにしつつ、絶妙な組み合わせで楽しめるストーリーにまとまっている。若者よ、ともに笑おう! そして愛を見せようぜ!
伊藤洋次            ★★★★☆
 久々にガツンと手ごたえのある人間ドラマを見た。屈折した家族の生きざまを、鋭くかつ皮肉たっぷりに描いた本作は、人間臭さがプンプン漂い、とても刺激的だ。映画の中で展開されるのはドロドロとした愛憎劇ではあるものの、そんな中で兄嫁(永作博美)の底抜けな明るさが絶妙のアクセントになっていて、物語の面白さを倍増させている。ホームドラマで、よく「家族だから」とか「家族なのに」という台詞が使われるけれど、この映画の前では、そんな言葉は完全に無力だと痛感した。
野川雅子            ★★★☆
 キャストのインパクトが強烈な作品である。主演の勘違い女、和合澄伽を取り巻く4人の家族の極端すぎる程のキャラクターが、この映画の全てと言ってもいいだろう。澄伽のワガママに振りまわされるストーリーの中で、それぞれが自分の役割をしっかりと演じており、本編中ずっと観客を飽きさせることはない。しかし、こんなにも胸のムカムカが治まることなく2時間を過ごすことは、私は稀である。それ程までに、主演の佐藤江梨子が澄伽を完璧に演じているのだ。今でも目をつむると、恐ろしい顔が浮かんでくるようである。再度観たいかと言われたら絶対にNOだし、勘弁して欲しいという気持ちだが、なかなか見応えのある骨太な1本であることは確かだ。
悠木なつる           ★★★★☆
 意地悪でワガママなヒロイン・澄伽を演じる佐藤江梨子。これは演技ではないのでは? と思えるくらいハマリ役だった。足の長さや胸の谷間に、ちょっぴりジェラシーを感じたりもして。ただ、最も好感が持てたのは、永作博美の演技だ。永瀬正敏演じる夫から、どんなにひどい仕打ちを受けても笑顔で乗り切ろうとする姿が、ひたむきで、いじらしいことと言ったら! それは、生まれた時から孤独な人生を歩んできた故の、家族に対する強い憧れがあるからだ。また、姉・澄伽から容赦のないイジメを受けてきた妹・清深は、クライマックスで衝撃の復讐劇を繰り広げる。形は違うけれど、3人の女性の「強さ」が印象に残ったブラックユーモア溢れる作品。



『リトル・チルドレン』   
監督・脚本:トッド・フィールズ  原作:トム・ペロッタ
出演:ケイト・ウィンスレット、パトリック・ウィルソン、ジェニファー・コネリー
http://www.little-children.net/
俊英トッド・フィールド監督がベストセラー小説をケイト・ウィンスレット主演で映画化したヒューマン・ドラマ。郊外の住宅地を舞台に、大人になれない大人たちの日常を描く。

にしかわたく          ★★★☆
 いわゆる“アダルト・チルドレン”という言葉よりもうちょっと突っ込んだ意味で、僕たち(筆者は38歳・独身・彼女いない歴3年)はみんな子供だ。『エヴァ』の碇ゲンドウ、あのいかついオッサンが、一皮剥いてみたらただの子宮回帰願望のダダッ子だったみたいに。いったい、僕らが子供の頃に見ていた「大人」って存在は、どこに行ってしまったんだろう。あれはただの幻想で、最初からどこにもいなかったんだろうか。まぁそれはともかく、人の中にある「子供」を優しく見守ることができるような、そんな余裕がある人間になりたいものだとこの映画を見て思ったのでした。
中沢志乃             ★★★
 自尊心、平凡な日常に感じる空虚さ、集団の怖さ、犯罪と犯罪でない性癖の差…等々、日本社会にもそのまま当てはまるテーマが盛り込まれた秀作だが、残念ながら演出がイマイチだった。冒頭のナレーション攻めにぎょっとし、途中減ったものの、「これは観る人によって解釈が変わるいい映画かも」なんて油断していたら、最後もナレーションできちっと映画が言わんとすることを伝えて締めくくられた。ナレーションで登場人物の心の機微を説明してしまうため、さっぱり俳優の演技が光らない。いいストーリーだからこそ、もったいない!15歳以上限定の映画なんだからこんな単純に仕上げずもっと大人向けの演出にしてほしかった。ブラッドの息子役の少年の演技はうまかったです。
はたのえりこ          ★★★
 ウワサ大好き、公園ママ友達に馴染めない主婦サラ。才色兼備の妻に養われながら司法試験合格を目指す、でもやる気はいまいち主夫ブラッド--ときめく出会い、情熱、不倫、やがて……。 過去に不祥事を起こした元警官ラリーと小児性愛者である元受刑者ロニー--周囲の拒絶、糾弾、そして……。「自分の人生、こんなはずじゃなかった」と彷徨う大人たちのヒューマンドラマなのだが、ラスト30分で幸せな居場所探しの答えは唐突に見つかる。人生って、案外そんな感じでどうにもこうにもならないことに決着がつくもの…なんだろうか。だとしたら、けっこうためになる指南書的役割を持った作品なのかも。


『インランド・エンパイア』   
監督・脚本:デヴィッド・リンチ
出演:ローラ・ダーン、ジェレミー・アイアンズ、裕木奈江(笑)
http://www.inlandempire.jp/
鬼才デビッド・リンチ監督の「マルホランド・ドライブ」以来5年ぶりとなる長編映画。ある女優の現実世界と劇中劇などが複雑怪奇に交錯する、シュールな幻想スリラーだ。

悠木なつる          ★★★★☆
 一見しただけでは、まるで意味が分からない。でも、「計算され尽くしていて、何だかスゴいなぁ」と思わずにはいられない。それがリンチワールド! 5つの世界が複雑に交錯し(尤も、描かれている世界は5つなのかさえ把握するのが難しいのだけれど)、張り巡らされた伏線を辿るほど奇妙な世界に迷い込んでしまう。まるで、不思議の国のアリスのように(ウサギ人間も登場することだし!?)。そういう意味では、夢か現実かも分からなくなり、平常心が保てなくなる気の毒なヒロイン、ニッキーに大きく共感できる。リンチこだわりの音楽とともに謎解きを楽しむか、理解することを潔く諦めて悪夢に身を委ねるかによって楽しみ方が変わる作品。
にしかわたく          
 自他共に認めるリンチフリークの私。前作『マルホランド・ドライブ』のときは、超難解との評判の中見に行き、面白すぎて耳穴から脳内麻薬がだらだら流れ出す始末。「わかろうとしちゃダメだ。感じろ!感じるんだ!この愚民ども!」みたいなことをほざいていました。
 “史上最難”と言われた今回の映画も、リンチエリートである私は余裕。ディズニーランドに遊びに行くような気楽さで映画館に出向いたのですが、これが…う…ううう…じぇんじぇんわかりませーん!!!寝不足だったのも手伝って、前半でちょっとうとうと。これでもうすべてが闇の中。3時間に及ぶ不条理映像の嵐が吹き荒れたあとには、ぼろぼろになった私の死骸が…。す、すいません!一から出直してきますぅ〜!


シネマの達人が語るとっておきの一本 : 『ドントルックバック』(1967・イギリス)

 吉祥寺の6畳一間のアパートで岩手出身の村上くんが僕に初めてボブディランを聴かせてくれたのは、本当にやることのない、自分のまわりが真っ暗なことに気付いてもいない学生時代、1990年ぐらいのことでした。「ミスタータンブリングマン」だったと思います。
 村上君は考古学が好きで、いつも遺跡を掘りに行っては、ただ働きをさせられていました。自分のキャリアのために人は時にただ働きをしなければならない。それを仕方のないことだと受け入れている世界があるということに、愕然としたのを覚えています。
 僕は当時国分寺に住んでいて、駅から家までの帰り道、ファミリーレストランの二階にある割と大きなレンタルビデオショップで、暇に任せて色んな映画を借りて見ていました。この映画もそこで借りて見ました。今思うと結構変な映画のおいてあるいい店だったなあと思います。っていうか今もあるらしいけど。
イラスト 1965年のボブディランのイギリスツアーを取材したこの映画は、まあ彼を好きな人には少し意味があるけど、そうじゃない人にはおそらくほとんど意味のない映画なんじゃないかと、最近発売になったdvdを買って見なおしてみて思うので、この文章にもほとんど意味がないような気がしますが、とっておき、つまり見るかどうか分からないけど、手元に置いて置きたい映画ということではこれになるような気がします。
 当時動いてる65年当時のボブディランを見る手段はこの映画しかなく、深夜胸を躍らせて見たボブディランは、僕の会ったどんな人より自信たっぷりでカリスマ性にあふれ、決して相手におもねないでいながら少し悲しそうだったり、疲れたりしている、業界の有象無象に否応なしにひっぱりまわされたり、かつぎあげられたりしながら、どこか落ち着かない様子の、アーティストって風です。
 ボブディランは繰り返し「自分はただの歌手だ」と話しています。フォークシンガーでもポップシンガーでもない、ただの歌手だって。この映画には目的も結論もない、「ただの歌」を才能の導くまま自由に歌うボブディランがいるだけで、他に何もありません。「ただの歌」は当時アメリカでもイギリスでも歓迎され、愛され、歌われていきますが、彼は常に「ただの歌」の意図、テキストやメロディーの意味を問われることにうんざりしています。ですから僕にもこの文章の意図を聞かないでください。つまんなかったらすっとばしてください。別に重要な情報はありません。
 20代という長い暗黒時代、音楽に向かって旅しながら、色んなつけをためて、また払って来ましたし、結局あたりの景色はさほど変わっていないような気もしますが、つい最近、ようやく歌を歌おうと思い始め、とうとうライブすることになりました。ぜひとも「ただの歌」を歌いたいと思っています。
 最初にボブディランを聞いたあの時から、本当にゆっくりと僕の人生は動き始めたのかもしれない、と今ふと思っています。

(丸山太郎)

2007.9.3 掲載

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著者プロフィール
中沢志乃 : 1972年5月8日、スイス生まれ。5年間、字幕制作に携わった後、2002年4月、映像翻訳者として独立。夢は世界一の映像翻訳者。現在、トゥーン・ディズニー・チャンネルで吹替翻訳を手がけた『X-メン』が絶賛放映中。2月2日にデミ・ムーア主演『ゴースト・ライト』(字幕翻訳)、4月12日に『アメリカン・パイinハレンチ・マラソン大会』(字幕翻訳)発売。

高井清子 : 1966年生まれ。企業勤めの後、ロンドン留学を経て、フリーの翻訳者に転身。映画の脚本やプログラムなどエンタテインメント関連の翻訳をする。今は韓流にどっぷりはまり、『韓国プラチナマガジン』にもレビューを寄稿している。

伊藤洋次 : 1977年長野県生まれ。業界紙の会社員(営業)。メジャー映画はなるべく避け、単館系しかもアジア映画を中心に鑑賞。最近気になる監督は、廣末哲万・高橋 泉、園子温、深川栄洋、女池充など。

野川雅子 : 1985年山形県生まれ。19歳で映画に出会い、それ以来、映画に恋愛中。人の心を描いた邦画が特に大好き。日本中に映画の魅力を幅広く伝えられる映画紹介をするのが夢。

はたのえりこ : 1979年東京都生まれ。今夏から翻訳関係の会社で人生再スタート。メジャー作品からB級ホラーまで、国籍は問わず何でもOKの雑食性です。

悠木なつる : 1973年生まれ。紆余曲折あり、この春から堅気のOLへカムバック。映画ライターとの“二足のわらじ”を夢見て、ジャンルを問わず映画を観まくる日々。発売中の『映画イヤーブック2007』(愛育社)では、本名の“横○友○”で映画紹介記事とコラムを執筆。

丸山太郎 : ギター製作家。自作の楽器を演奏するムイビエンズのボーカル。どこをどうひっくりかえしてみてもちょっと痛い1970年生まれ。「フレンズ」のフィービーと、「ファミリータイズ」のマロリーが好き。

にしかわたく :  青年でも実業家でもない青年実業家。イラストとマンガで生計を立てる。「映画は三度のご飯より四度のおやつです」と公言するわりに、3本に1本の割合で居眠りする。単行本『僕と王様』発売中。詳しくはブログ「こんな映画に誰がした?」にて。http://takunishi.exblog.jp/

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