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驚愕の真実 Part.3
「私達は知らず知らずのうちにドイツのスープを飲んでいる!?」


クノール社はドイツ人のクノール氏によって設立された。

ドイツのスープは日本のコンビニで買える!

「ドイツのスープといってもイメージがわかない…」。そう思うだろう。しかし、私達は知らず知らずのうちにドイツのスープを食べているのだ。特に、昼食をコンビニで買って済ますOLさん!あなたが今手に取ったクノールのカップスープ。じつは、インスタントスープで有名なクノール社を設立したのは、ドイツ人のカール・ハインリッヒ・テオドア・クノール氏なのだ!
  クノール社は1838年にドイツのまあまあ大きな街・ハイルブロンで誕生し、乾燥フルーツを輸出する事業で財を築いた(※1)。やがてクノール氏の賢い息子達が野菜とスパイスとハーブを乾燥させて粉末にする実験に成功し、この技術を応用してインスタントスープを開発。当初は軍隊の食事(ミリメシ)として珍重され、続いて労働者階級の間で大ヒットし、同じくクノール社が発明した固形ブイヨンと共に世界中に広まった。
  ちなみに、インスタントスープ業界でクノール社としのぎを削っているマギー社は、スイス人のマギー氏によって創設されている。

ドイツのスープは必ずパンと一緒にテーブルに登場する。しかもパンは無料。
写真は海に面した北ドイツの郷土料理「小エビのスープ(Krabbensuppe)」。

スープとパンは一心同体

ドイツ語でスープは Suppe(ズッペ)と言う。英語の Soup(スープ)と語源は同じで、西ゲルマン語の「supp」という言葉にルーツがある。これは「スープに砕いて入れられたパン」という意味で、つまり、スープという言葉は液体ではなく、パンそのものを指す言葉だったのだ。
  これには理由がある。中世ヨーロッパでは、パンは村の共同の窯でまとめて焼かれ、各ファミリーに分配された。パンは父親によって家族一人一人に切り分けられるが、焼き上げて1日目ならともかく、2日目、3日目に突入したパンは噛み砕けないほどカタ〜イ。そこで人々はパンを砕いてスープに入れ、柔らかくして食べたのだ。つまり、スープとパンは一心同体。コンソメスープに浮かんでいるクルトンは名コンビ時代の名残なのだ。今でも、ドイツのレストランでスープを注文すると必ず無料でパンがついてくる。
  ちなみに、ドイツ語でも英語でもスープは「飲む(trinken)」のではなく、「食べる(essen)」と表現されるが、歴史をひも解けばその理由はおわかりだろう。


いまだ各地に珍スープが乱立する戦国時代

フランスといえばポトフ、イタリアといえばミネストローネ、スペインといえばガスパッチョ、ロシアといえばボルシチというように、ヨーロッパ各国には国を代表するスープがあるが、ドイツにはない。いまだ、代表的スープによる天下統一が成されていないスープ戦国時代にあるのだ(なにも無理して天下統一する必要もないけど)。各地で勢力を張っているスープの代表格を挙げると、北ドイツには「ウナギのスープ」、西ドイツのバーデン地方には「カタツムリのスープ」や「小麦粉のスープ」、南ドイツの「レバー団子のスープ」がある。もちろん、地方の垣根を越えてドイツ全土に広まっている国民的スープもある。その中でも個性を放っているのが「ビールのスープ」。実はこれ、朝食に食べるのだ!

▲ウナギのスープ(Aalsuppe)。北ドイツの大都市ハンブルクを代表する郷土料理。ウナギの他に、ドライフルーツ(スモモ、リンゴ、ナシ)や、ニンジン、グリンピース、アスパラガスをスープの中に入れる。
▲カタツムリのスープ(Schneckensuppe)。その昔、サラダ菜を食い荒らす害虫・カタツムリは貧しい人々の食べ物だった。今ではスープの味も洗練され、バーデン地方を代表する郷土料理に。
▲小麦粉のスープ(Mehlsuppe)。小麦粉をバターでキツネ色に炒め、ブイヨンスープを入れて塩とナツメグで味をととのえる。素直に物事を言うドイツの子供たちには「まずい」と嫌われているが、胃酸過多で悩む大人には良薬となる。
▲ビールのスープ(Biersuppe)。中世の時代からビールは栄養食品と考えられていた。そこで気合を入れたいとき、朝食にこのスープを食べる。材料はビール、卵黄、バター、砂糖、小麦粉。アルコール分は少なく、味は甘い!

ドイツのスープはソロ活動!?

ドイツのスープに共通して言えるのは、タカアンドトシが「相撲部屋のちゃんこ鍋か」とツッコミを入れたくなるくらい食べ応えがあること。ドイツのスープはコースの前菜ではなく、単品でお腹いっぱいになれる主役料理なのだ。つまり、フランス料理の感覚でメインディッシュの前にスープを注文すると本当に"食い倒れ"の憂き目にあう。

※1 現在のクノール社はイギリス&オランダの多国籍企業ユニリーバによって経営されている。日本では味の素の子会社であるクノール食品がライセンスを獲得し日本での販売を任されている。

2010.1.18 掲載

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