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第13回 「国公立校と私立校の違い」について Part2


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皆さんこんにちは。7日に、内閣府の調査で「学校よりも予備校や塾のほうが優秀」だと考える保護者が70%にのぼった、という結果が明らかになりました。
  このことはある種当然の結果だと私は考えています。また改めてこの問題は取り上げる予定ですので、今回は詳しく触れませんが、「学校」の存在意義を根幹から揺るがすとも言えるこの結果を、教育関係者は重く受け止めるべきではないかと感じました。

さて、今回も前回に引き続き、「国公立校と私立校の違い」について取り上げます。今回は特に、「私立校とお金にまつわる話」をとりあげます。

最近、日本経済の二極化に伴い、「経済的理由から奨学金を借りたり、退学に追い込まれる私立中・高生」が目立つようになって来ました。東京ですと、私立校に子どもを進学させると、毎月の学費に4万〜5万円程度払うのが一般的です(もちろん、この額は学校によって大きく差があります)。また、修学旅行に行けない高校生、という話も決して珍しくなくなってきているようです。こういう話は、教員にとっても無念でなりません。

また、最近、私立校ブームと、保護者の経済状態の不透明さとで、このような話をしばしば耳にします。「○○高校は、塾に行かなくても大学に受かる指導をしてくれるのですか」、「□□高校は、面倒見が良いと聞きますが、それは、塾に行かなくても大学に受かるように面倒を見てくれる、ということですか」といった話です。

ですが、実態を知る私の目から見ると、「面倒見が良い」という言葉がひとり歩きし、「生徒を親身になって見ている(ただし、いっさい受験指導はしていない)」学校も、「親身になって勉強を見てくれる」ことにすり替わっている、と感じることもあります。 (もし、具体的に「●●学園はどうですか」などのご不安がありましたら、メールをいただければ、わかる範囲で答えさせていただきます。メールアドレスは、バックナンバー内、第8回連載をご参照願います)

学校のパンフレットや入試説明会などで、「塾に行かなくても大学に受かる指導をしています」と宣言している学校でない限り、学校だけで大学受験の対応が可能、ということは、まずありません。多くの学校では変革の途中なので、能力のある教員も多くいるのですが、受験にまったく対応できない教員も同じくらい存在しているのです。「受験指導に最近は力を入れています」とうたう学校でも、誰に習うかは入るまで分からないので、受験指導のできない教員に習う可能性も否定できません。

ですので、大学受験期にはどうしても「学費+塾代」というケースが一般的です。このことを保護者は頭に入れ、「我が家でお金がかけられる範囲」を考えていかねばならないでしょう。また、「すべて保護者がまかなう」のではなく、進学後、本人に奨学金を借りさせる、といった形も考えても良いと思います。保護者が払おうと思って無理をして、払いきれなくなってしまったのでは元も子もありません。

また、塾に行ったからといって、子どものやる気がなければまったく無意味、塾代がもったない、と感じるケースも多々目にします。教育費のマネープランを立てて、子どもの進路を考える時に、「ここまでなら我が家は払える、それ以上はアルバイトや奨学金で」などと子どもに話し、また、子どものやる気を起こさせるようにしながら、親子一緒に考えるのが良いのではないでしょうか。

なお、受験なしで大学に行けるから、ということで、大学付属校の人気も高まっています。ですが、付属校に入っても、系列の大学に行かないのであれば、受験費用がかかることになります。近年はこのようなケースが増えていますし、学校側も「他大受験」に力を入れているところも増えています。ただ、学校がいくら力を入れていても、「塾なしで受からせます」と言っていなければ、塾代が発生するのは避けられません。大学付属校をめぐる問題についても、回を改めてとりあげます

そして、学校の広報パンフレットや公式サイトには、たいてい「年間にかかる費用」が載っていますが、学校によっては、これ以外にテキスト代・遠足(修学旅行)代などの費用が多額にかかるケースがあります。学校は「自分たちの書き方が当たり前」だと思っていると、こういった説明不足のケースが堂々とまかり通っていることもあるのです。学校の情報公開が遅れている一例だとも言えるでしょう。

ですので、この点は、「パンフレットに載っている金額以外に、テキスト代など、かかる費用はどの程度ありますか」と、説明会や電話などで必ず確認していただきたいです。「パンフレットに載っている額しか用意しておらず、想定外の費用が多くかかってしまい、退学に追い込まれる」ケースもあとを絶たないようですから。

また、私立校と切っても切れないのが、「寄付金」の問題です。これも、パンフレットにたいていは明らかに載っています。学校によって、在籍中に必ず寄付を求められることがありますが、その場合も、通常は、要求される最低金額を払えば特に問題ないはずです。多く払うのは各家庭のご裁量の範囲の話ですが、たとえ多く払ったとしても、子どもの成績や問題を起こした際の処分が甘くなる、ということはまずありません。

よほど特殊なケースでない限り、「寄付金の額の多さで、子どもの成績や学校での扱いが左右される」ということは、一般的には、ないと考えていただいて良いと思います。「特殊なケース」というのは、「知人の理事を通して合格をとりつけた」などの場合です。

お金をかけたからと言って、子どもに幸せな未来が待っているとは限りません。どこまでが「身の丈にあった負担」なのか、各家庭でお考えになって、その中でお子さんにできることをなさるのが良いのではないでしょうか。それが、多くの生徒と家庭を見ていての、現場の教員としての私の率直な感想です。

2005.10.12 掲載

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