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第22回 「学校側への話の仕方」について


皆さんこんにちは。年度末の繁忙期と重なり、更新が遅れまして、申し訳ありませんでした。
  この頃私は非常に気になることがあります。それは、「●●先生の勉強方法で志望校に合格した」などの、塾や学校の宣伝が出ると、それを鵜呑みにして、「わが子にも同じことをさせればいい」と思う方がいることです。

マニュアルがないと不安、という心情も理解できなくはありませんが、子どもの性格が十人十色であるように、「どの子にも同じ勉強の進め方」が合うとは限りません。大勢の中で切磋琢磨して伸びる子どももいれば、個人指導に近い形でじっくり見る中で伸びていく子どももいます。

大学受験に関しても、「入試・本番に強いタイプ」の生徒と、「本番では極度に緊張してしまい、実力が発揮できにくいタイプ」の生徒がいます。本番で緊張してしまう生徒は、日ごろの勉強の成果が学校の通知表に現れていれば、「推薦入学」で大学に行くこともできるわけですし、その生徒に合った「関門の通過の仕方」を考えてやることが重要なのです。

多くの子どもに接していると、ひとりひとりの個性が異なるので、これらはごく当たり前だと私は考えるのですが、少子化で、ひとりっ子が多く、保護者の方にとっては子どもさんの個性の違いも気づきにくい時代ですので、「●●先生の勉強方法で合格!」という言葉がひとり歩きしてしまうのではないか、という不安をしばしば感じます。

さて、今回は、「学校側への話の仕方」についてとりあげます。 まず確認しておきたいのは、保護者の方はお子さんにとっては「他には代えられない味方」である、ということです。教員は、教育現場でプロとして子どもを見る存在ですが、幼い頃から向き合って育てていらしている保護者の代わりにはなれません。「家で注意できないので、代わりに注意して下さい」と学校に依頼する保護者がいますが、それは保護者の本質を理解しておらず、それでは親子ともども気の毒です。

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そして、保護者の方は「味方だからこそ、長所も短所も見て、長所はほめ、短所は直すように注意する」ことが大事だと理解していただきたいのです「子どもと衝突したくないから」と、幼い頃から子どもの好きなものばかり家庭で食べさせ、その結果、小学生なのに生活習慣病(糖尿、肥満、高血圧など)にかかるケースが増えている、と聞きます。これもまた、保護者の本質を理解しきれていないゆえのことではないでしょうか。

教育、子育てでは、ぶつかり合いや衝突は当たり前のことです。衝突したくないから、と、ほったらかしにしていたら、子どもは「自分の考えが世界でいつも優先される」などと思ってしまうのではないでしょうか(なお、叱り方、ほめ方についてはまた回を改めて必ず書きます)。

そして、その「かけがえのない味方」である保護者が、学校に特に話をする必要ができた、というのは、以下のような状況が考えられるのではないでしょうか。

  1. 教員の授業方針など、疑問点や要望がある
  2. 子どもについて(アレルギー、病歴など)特に知っておいてほしいことがある
  3. 通知表の内容、教員が子どもにとった対応などについて質問がある
  4. 子どもの心理・発達面などで相談がある
  5. 学校から、子どもの行動や成績などで注意を受け、呼び出された
このうち、5.に関しては、「学校から注意を受けた場合の対応について」という内容に含めて、次回の連載で取り上げる予定です。今回は、「お願い、質問をする場合」というケースを中心に考えます。

なお、基本的には、第12回連載で触れたような段階を踏んで、話をして下さい(バックナンバーからご参照願います)。段階を踏んでおらず、いきなり教育委員会に話をしても、門前払いとなる可能性が高いです。
  1.のケースに関しては、第2回連載で触れたことをご参考にしていただけたら、と思います。

2.のケースのように、重要なお願いをする時には、「基本は書面で」というのが間違いない、と私は考えます。話しただけでは「言った、言わない」の行き違いがあとで起きないとも限りません。

アレルギーなどに関しては、入学時に、生徒の個人的な内容を書かせるカードや書類を出していて、そこに記した場合は、改めて伝える必要はないでしょう。突然新たなアレルギーが増えた、などの場合は、必ず申し出なければなりません。運動が制限される、など、学校生活に関わるような病気の場合、診断書を病院から受け取り、手紙に添えるべきです。

学校で届出の様式が指定されている場合は、それに従って下さい。様式がない場合、次のように、簡単な形式で構わないと思います。両親揃っている場合は、どちらが書いても良いでしょう。

「○○先生
 いつもお世話になっております、□□太郎の母です。
さて、わが子□□太郎は、昨年10月から、突然そばアレルギーを発症致しました。食べますと命に関わりますので、お手数ですが学校の先生方におかれましても、ご配慮下さいますようにお願い致します
 二〇〇六年四月△日  □□花子」

 万が一事故が起こっても、こうして証拠を残しておけば、(本当はあってはならないことですが)学校側に落ち度があった場合、責任を問うことができます。

 4.のケースは、カウンセラーに相談の予約をするなどして下さい。カウンセラーとの話の仕方については、第7回連載をご参照願います。

そして、最も難しいのが、3.のケースです。
  まず確認していただきたいのが、「お子さんの言い分、考え方」です。お子さんが事実をどう考え、理解しているのか、ご家庭でよくお話を聞いて下さい。その際、メモなどを取られておくのが良いと思います。メモを書くのは、お子さんが事実を誤解していたり、自分に都合の悪いことは隠している、などのことも考えられる、という理由からです。

そして、学校側に連絡をします。最初は、お昼休みや放課後に電話する、といった形で構わないでしょう。
  その後、解決しなければ、直接学校に出向いて教員と話をします。この際、お子さんの話のメモを持参して、見ながら話をします。また、必要に応じ、教員の話のメモもとっておくことをおすすめします。要点だけでも書いておけば良いのではないでしょうか。

そして、納得するまでよく話を聞かれるべきでしょう。その中で、学校側に誤りがあれば、良心を持つ教員ならお詫びの言葉を述べるでしょうし、保護者が何か誤解していたのであれば、やはりお詫びの言葉を述べられたら良いのではないでしょうか。

話をされる時には、たとえば、次のような形で切り出すのが良いでしょう。
「□□太郎の母ですが、先日出された英語の課題に関して、お聞きしたいことがあります。子どもは、この課題を終えなければ、次に出た課題を解いてはならない、と先生に言われたと申しておりますが、それで間違いないでしょうか」

私の経験でも、保護者が「通知表の成績が間違っているのではないか、いつ訂正してくれるのか」と言ったクレームをつけてきたことがあります。当初この話を聞いた時、まったく私に思い当たることもなく、驚いたのですが、結局、それは「生徒が成績のつけ方を誤解しており、保護者も間違ったまま理解していた」のでした。
ですので、この話で言えば、学校側には何の落ち度もなかったのですが、その保護者からはその後一切お詫びの連絡はありません。生徒も私には謝りませんでした。

(私立校の通知表は、学校ごとにまったく異なります。「■■■人中10位」など、学年での順位がそのまま数字になるところ、主要教科でテストの点数が一定以下なら、高校の場合ただちに留年が決定するなど、千差万別です。ですので、その学校の成績の出し方は入学前、また、入学後に確認しておく必要があります)

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また、最近は、学校に対する不信感からか、保護者が学校側との話し合いの席で、ひそかに「ICレコーダーなどで教員との会話を録音していた」という話も聞きます。
  でも、このようなことは「最終手段」だと考えておかれるほうが良いのではないでしょうか。「もうこの学校には子どもを任せられない」といった事態になってしまった場合などに使う、ということです。そうでないと、万が一発覚した場合、学校側に「この保護者は学校を信頼していない」という気持ちを抱かせてしまうことになるからです。信頼関係のないまま保護者も子どもを学校に通わせ、また、教員も子どもを指導するのは、お互いにとって不幸ではないでしょうか。

お子さんの味方、と先に書きましたが、味方だからこそ、愛を持って注意していただきたいと思います。「短所は直さないと、いずれ自分が困ることになる」ということを理解させなくてはなりません。どんな年齢の子どもにも、その子なりに分かるように説明して、話し合うことが大事なのではないでしょうか。

最近はわが子かわいさのあまりか、私の経験したケースのように、子どもの言うことを鵜呑みにして学校にクレームをつけてくる場合も珍しくありません。その、子どもの言い分が正しいこともあるでしょうが、中には、誤解の場合もあるかもしれません。

また、学校側に落ち度がある場合もあるでしょうが、お子さんが自分の落ち度となる話を保護者に隠していることも考えられます。ですので、お子さんの言い分をまずはよく整理し、いきなり怒鳴り込んだり、「学校の対応は間違っている」とクレームをつけるのではなく、一呼吸置いて、冷静に「その言い分は間違いないか」と確認されると、学校側も落ち着いて対応してくれるでしょう。

そして、お子さんにとっては、たまった不満を保護者の方に聞いてもらうだけで、前向きに立ち直れる場合もあります。まずは、とにかく、「お子さんの話をよく聞き、メモをとり、論点を整理して、その上で必要があれば学校と話をする」ことを心がけていただけたら、と思います。

2006.3.16 掲載

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