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第32回 「付属校に関する問題」について


皆さんこんにちは。公私共にあわただしく、更新が不定期になっていて申し訳ありません。教育相談サイトは、近々正式オープンの予定です。

先月、安倍内閣が発足し、教育政策について大きく注目されています。今後の教育政策を変える大きな動きがある場合、ここで取り上げることも考えております。

私が気になっていることのひとつに、「国立大学の入学時期を9月に遅らせ、半年間ボランティアに従事させる」という、安倍首相の公約があります。このような動きから、強制労働で国家への忠誠心を植えつけ、「徴兵制への道」へとつなげるのでは、とおそれる声も挙がっています。また、奉仕とは強制すべきものなのでしょうか。今は多くの情報が得られる時代ですし、おかしい、と思ったことは個人が声を出していくことは重要ではないでしょうか。

また、飲酒運転で逮捕されたり送検される教員の話がこの頃は多いですが、本当に恥ずかしいことです。私は思春期に(飲酒ではないですが)、事故を起こして退職に追い込まれた先生を知っていますので、自覚を持って行動しているつもりです。

日本の全ての教員は、「このようなことで処罰されると、ただちに自分の職業に関わる=クビになるかもしれない」ことを自覚すべきです。大学の教員養成課程、教員の研修などで繰り返し教える必要もあるでしょう。また、運転者に酒類を出した飲食店にも罰金を科す」といったことを徹底させるのも必要ではないでしょうか。

そして、いじめで命を絶つ子どもが出ていることは、大変いたましいです。ご遺族の皆様には心よりお悔やみ申し上げます。
  このようなことが起こると、いつも感じるのが、「教員によって対応に差が生まれる」ことの悲劇です。ある教員はいじめだと思わなくても、別の教員が見ればいじめ、と気づくこともあるのですが、少子化・過疎化で各校に配置される教員が少ないと、その「気づき」が生まれにくくなり、結果的に子どもを追い詰めてしまいます。

何かおかしいと感じたら、積極的に学校に日ごろから質問をするようにしていただけたら、と思います。また、私もメールなどでお話をいただいた場合、できる限り相談に乗らせていただきます。

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さて、今回は「付属校に関する問題」についてとりあげます。今年の夏の甲子園、決勝に残ったのはいずれも大学付属校でした。これは単なる偶然かもしれませんが、少子化で、子どもにかけられる金銭に余裕があるため、伸び伸びと教育を受けさせたい、という理由でしょうか、大学付属校への注目が今、高まっているようです(大学付属校の学費は、設備などが整っているため、他の私立中学・高校と比べると、たいてい高額です)。中学から入学させる余裕がなくても、高校からなら入学させられるというケースも目に付きます。

また、付属校と言っても、実質的には他大学への受験をする生徒のほうが圧倒的に多い学校もあります。

大学付属校へ行くメリット、デメリットは以下のようなものがあります。これは、学校によっても異なりますので、一般論として捉えていただきたいです。

【メリット】
・大学受験に縛られないので、のびのびとした中学・高校生活が過ごせる。部活動や習いごと、趣味などに熱中できる
・高校までの友人関係が大学でも続き、深い付き合いができる
・志望する大学に、大学受験をするよりも入りやすい場合がある
・一発勝負の入試を経験しないため、緊張して本番で力を出しにくい子どもにとっては、日ごろの努力を救ってもらえる機会がある
・中学・高校でも、大学での授業を意識した内容の授業を受けられることがある。大学と共有の施設を使える場合もある

【デメリット】
・何のために大学に行くのか、将来の目標を設定しにくい。全く興味のない学部・学科に進学しなければならなくなるケースもある
・併設の大学に志望学部がない場合、友人たちの雰囲気を横目に見ながら、受験勉強に励まねばならない
・学校によって「内部進学の基準」がまったく異なる。希望する生徒が全員、併設の大学に進学できるわけではない
・学校によっては、授業で「覚えなさい」と言われたことしか学習せず、こま切れの勉強しかできなくなり、体系的な知識を覚えにくい。テストが「暗記コンクール」のようになってしまい、応用力などが全く身につかなくなる。
・幼稚園や小学校から進学している場合は、「勉強すること」自体、自分では何をしたら良いのかわからないこともある。また、「井の中の蛙、大海を知らず」ということにつながり、似たような境遇の人や家庭しか知らないことにもなりかねない
・入試の難関をくぐり抜けておらず、ピンチやプレッシャーでの対処方法がわからないまま大人になることもある
・学校の経営状態も(付属校なので安定しており)、少子化への危機意識、改革への取り組みが遅い場合もある。また、中学・高校の教員が、生徒を「大学に押し込めばいい」としか考えておらず、その後の人生を見据えた、有意義な進路指導をしてくれない
・学校によっては、教員が受験を意識しないので、自分の趣味に走った内容しか教えない。
・つまり、体系的な学習を指導してくれない教員に習っていて、他大学受験を考えた場合、塾や予備校などで基礎から教えてもらわないと受験できない
・友人と一緒に進学するので、新しい環境で、心機一転がんばろう、という意欲が起きにくくなる

以上、ざっと思い浮かぶだけでも、これほどあります。 メリットはあまり説明の必要がないと思います。学校を実際ご覧になると、おわかりになることも多いのではないでしょうか。

デメリットですが、これは、外からは見えにくいものです。また、学校によってはカリキュラムや授業に工夫を凝らしているところもあるので、付属校だから、と言ってひとくくりにはできません。

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学校によって、大学への内部進学の基準は全く異なります。基本的には「日常のテスト・提出物などを総合した成績」が重視されますので、地道に努力するのが苦手な生徒や、本番で力を発揮する、一発勝負型の生徒には、苦痛なこともあるでしょう。また、これに加えて、「内部生用のテスト」を実施する学校が大半です。

なお、日ごろの学習が重要、というのは良いのですが、「テストに出る」と言われたこと以外は覚えようとしない、という「手抜き」の姿勢で毎日学習するようになってしまうことも充分考えられます。

志望校の学習方針がお知りになりたい時は、「学校の統一方針として、体系的学習をしてくれるか」、「基礎力と応用力を養う授業をしてくれるか」などと聞かれると、学校の考え方が見えてくるのではないでしょうか。

また、受験勉強がないぶん、スピーチなどに積極的に取り組んだり、「卒業論文」を高校生に課す学校もあります。スピーチの経験は社会に出れば役立ちますし、論文作成は、高校時代に「●●に取り組んだ」という成果を残せるので、このような試みは大変有意義ではないでしょうか。また、大学入学後のレポート作成、論文作成などの際にも、大いに役立つ経験になるはずです。

ですので、良い付属校としては、以下のような学習内容を基本的に備えていることではないでしょうか。

【良い付属校の条件】
・単に暗記だけを要求しない、体系的な指導をしてくれる
・高校時代に、その後の人生に財産となるような学習指導をしてくれる
・大学に単に入学させることを目標とするのではなく、その後の人生設計も見据えた進路指導をしてくれる

一般的に、日本の現代の学校は、少子化の進行に伴って、カリキュラムを改革したり、魅力ある学校づくりに取り組んでいます。ですが、経営が安定していると、そのような外部の状況に気づきにくく、「生徒にわかりにくい」授業で平然としていたり、「学年の統一方針で教えるべきことを放置している」教員などが出てくることになります。そういう教員の話を、イヤというほど私は見聞きしてきましたし、「先生ね、○○先生の授業って、よくわからない」と言う生徒のグチも、何度も聞いてきました。

また、進路指導についても、ニートやフリーターが多く存在し、国家の将来が不安視されている現在は、「単に大学(専門学校)に進学させればいい、というのではなく、その後の進路を考えさせ、生徒の適性を見極めたものであるべき」ではないかと私は考えますが、熱心に教えていない学校も多くあるのではないでしょうか。

最後に、勉強以外で私が非常に気になるのが、「友人関係」です。学校を変わるということは、今までの人間関係に加え、新たな人間関係の広がるチャンスでもあります。付属校でも、新たな同級生が加わることで刺激になったりするのですが、基本的に、高校までの友人関係がそのまま大学でもつながるということは、「新しい友人からの刺激を受けにくくなり、今までの友人とのんびり過ごす」ことになってしまいかねません。つまり、自分自身を変えられるきっかけが減ってしまうのです。これは、良い意味での「成長のチャンス」を奪ってしまっているのではないでしょうか。

このことは、生徒の性格が大きく左右するので、一概に決め付けてしまうことはできません。でも、自分で何か切り開こうと思っても、「できない」と初めから決めてかかってしまう生徒になったりするかもしれません。人は、青春時代にさまざまの事柄にチャレンジして、成功や失敗から多くのことを学び取って成長していくものです。それができないとなると、大人になった時にさまざまのことにチャレンジできないのではないでしょうか。それは、その人の人生にとって、大きなマイナスになるかもしれません。

付属校に進学する、ということは、メリットも多くありますが、うまく生かせなければ進学したことがマイナスに働く場合もあります。自立心のあるお子さんなら良いでしょうが、周囲の環境に流されやすいお子さんなどには、あまりおすすめできないかもしれません。「付属校だから安心」と思い込まず、様々の視点からその学校をご覧になり、「わが子にとってその学校に行かせることは幸せか」、よくお考えになることをおすすめ致します。

2006.10.20 掲載

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