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第55回 「親子の信頼関係の築き方」について

皆さんこんにちは。2009年最初の更新です。
  本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。

世界規模での経済危機が続いていますが、このような時こそ、「心から信頼できる人とのつながり」、「激動の歴史を生き抜いてきた先人の知恵」が大事になります。

信頼できない人は、自分の都合や状況が悪くなると簡単につながりを切ってしまいます。ですが、そのような程度のつながりは、そもそもなくても良いもので、心底信頼しあえている人は、簡単につながりを絶ちません。ピンチの時は、そのような信頼しあえるつながりが、相手を、また、自分を助けます。
  また、歴史の場合は、よく見れば激動の時期は今まで何度もあり、当時の人々は、知恵を集めて危機を乗り切ってきたことがわかります。

そして、アメリカ合衆国では、今月、バラク・H・オバマ氏が第44代大統領に就任しました。「CHANGE」、変化というスローガンを掲げて当選しましたが、私たちも、変化の時代に流されてしまうのではなく、「自分にとって本当に大事な人、ものごと」を認識して、元気に生きていきたいものです!!

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今回は「親子の信頼関係の築き方」について考えます。
  「子どもが親を殺す、殺すつもりで怪我をさせた」などの事件が報道されるたびに、「そこまで至る前に、何か解決策はなかったのか」と、いつも沈痛な思いを持ちます。

小さく、また、守ってくれる大人がいなければ生活できない子どもから見て、保護者とは、とてつもなく大きい存在です。父親が叱っても、母親がかばうなどのことがあれば、子どもは安心感を持てますが、最近は、シングルペアレントの場合、また、両親揃って子どもを責め立ててしまう場合、あるいは、再婚などで出会った子に対しては、かばいにくいなどの場合が見られます。

そこで、子どもは心理的に追い詰められ、結果的に「親がいなくなれば自分は幸せになれる」と思い、自分が自立するまでの期間も耐えられないと考え、「一刻も早く親を消したい」などと考えても不思議ではありません。もちろんこのようなことは道義的・法律的に許されませんが、そこまで子どもが追い詰められる状況を作ってしまったことを見逃してはならないのです。ここには親子の信頼関係など、みじんもありません。

私事ですが、パートナー(夫)は、思春期からずっと父親(義父)と対立してきました。和解は表面的なもの、決して根本的に理解しあうことはなく、この対立は、昨年末の父親の死去まで30年以上続いていました。

発端は、高校生の時、進路をめぐってだったそうです。それまで進路をめぐって深く話し合ったことはなく、父親は自分の仕事に絶対的な誇りと自信を持ち、同じ進路に息子が進むと信じ、それに対し、パートナーは自分のなすべきことは他の道にあると信じ、激しくぶつかりました。

話し合いの末、父親は「自分の信念を通したいなら1年浪人しろ、浪人しても気持ちが変わらなければ認める」と言ったそうです。その結果、パートナーは、志望校に合格したにも関わらず、浪人させられました。母親は専業主婦だったので、代わりに学費を払うなどもできず、間で心配するしかなかったようです。
  また、母親との関係は良好だったこと、一人っ子などの理由で、パートナーは、両親と縁を切って出て行くなどのことは考えにくかったのではないかと私は考えています。

義父は仕事では成功した人で、黙っていても一人息子が同じ道を選ぶと思い込んでいたようです。もちろん、同じ道を選ぶ人もいるでしょうし、それで幸せな人生を歩める人も多くいます。

でも、子どもが自分のしたいことが他にある、と考えている場合は、どうすべきなのでしょうか。また、進路に限らず、考え方の違いや対立は、大なり小なりどんな親子にもあると思います。そのような場合、どのようにして解決すべきなのでしょうか。

まず、基本的に、「子どもをどのような大人に育てたいのか」ということが大事です。第44回連載で触れた「ヒーロー(ヒロイン)ペアレント」ではありませんが、大人になっても、いつまでも未熟者だから、自分が監督・支配すべき存在に育てたいのでしょうか?もしそうなら、保護者に何かあった場合、子どもは誰に従って生きていけば良いのでしょうか。うろたえたあげく、ピンチにつけ込む他人に騙されてしまうかもしれません。

第42回連載とも意見が重複しますが、大人は、いつまでも保護者が監督すべき存在ではないはずです。自立した考えを持ち、仕事や自分の役割を、責任を持ってまっとうしなければならない存在です。そのためには、大人になるまでの間に、年齢に応じ、自分なりに考えさせたり、行動させていかねばなりません。もちろん、失敗や間違いもあるでしょう。でも、その間違いから、本当に大事なこと、すべきことなどを学び取っていくのです。子どもを見守り、生命に関わるようなことでなければ、失敗させる勇気が大事です。

最近は、中学受験で夜遅くまで無理やり勉強し、その結果、朝、保護者がつきっきりで着替えから食事、歯磨きまでの(!!)身支度をしている小学6年生、また、「失敗や挫折について考えなさい」と言われても、「カップラーメンを作るのを失敗した」ことくらいしか思い浮かばない高校生などが、現実に存在します。

保護者がつきっきりの場合、成功すれば依存はますます強くなりますし、失敗すれば保護者をなじり、深刻な断絶が生まれます。また、保護者が失敗を恐れて子どもに安全な道しか選ばせなければ、成長し、たとえば、就職活動に失敗してフリーターになる、就職したとしても、仕事の小さなミスでも強い衝撃を受け、退職して引きこもってしまうなどのことも考えられます。

成長に従い、子どもは自我が出てきます。それを保護者は見守りつつ、一緒に学んで、泣いて、笑ってほしいです。保護者の子ども時代と、現代を比べると、子どもの持ち物、取り巻く環境…何ひとつ同じものはありません。だからこそ、今を生きる子どもの気持ちに寄り添い、一緒に考えて下さい。学校に指導を丸投げしても、また、「好きにしなさい」と言って寄り添わずにいても、何ひとつ良い結果にはつながらないのです。

公私とも、毎年数多くの親子と出会いますが、子どもの気持ちに寄り添い、また、大事な場面でとことん話し合っている家庭では、トラブルが起こっても(当然時間がかかることはありますが)必ず解決しています。

別の見方をすれば、話し合いを先送りしたり、保護者が思い込みで子どもと向き合ったり、「努力や改善をしなくても何とかなる」などと考えている場合、必ず深刻なトラブルや断絶を招いていると言えます。

現代の保護者は多忙だと思います。お子さんが話しかけても、「忙しいから、後でね」と言いたくなるのもわかります。でも、「後でね」では、子どもはいつ話しかけて良いのかわかりません。「夕食の時にね」、など、具体的に示して下さい。後日、ではなくて、5分で良いので、その日のうちに時間を取って下さい。そうでないと、放置した結果、重大なトラブルなどにつながる可能性があるからです。

もちろん、「親子だけで悩んで」と言うつもりはありません。どんどんプロの手を借りて下さい。わからないことは、見栄を張ったり、適当に流すのではなく、「わからないから一緒に考えよう」という姿勢が大事で、「保護者が一緒に考えてくれる」ことで、子どもは安心し、そして、知識を得て、一石二鳥となります。

現在の担任などと話が合わないと思えば、昨年の担任でも良いですし、カウンセラー、行政の悩み相談、現代は、たくさんのプロの手が用意されています。昔と違い、ご近所の大人の目は届きにくいですが、現代は、代わりにプロがたくさんいて、webなどで探すことも出来るのが良いところです。もちろん、私もいつでもお話をお聞きします。

先ほど、「失敗させる勇気が大事」と書きましたが、どの程度の失敗なら大丈夫か、また、その後のフォローなど、不安がありましたら、プロの皆さん、また、私にご遠慮なく質問なさって下さい。

なお、パートナーと義父の場合は、最初にも触れましたが、根本的な和解はありませんでした。義父は、息子の行動や信念の理由を考えて、気持ちに寄り添うことはなかったのです。義父は、子どもはいつまでも未熟だから監督しなければならない存在だと考え続けました。
  そして、義父と異なる価値観を柱にして生きているパートナーは、義父からなるべく遠ざかって生活することが、自分の生活を平和に保つことだと悟っていたのです。

義父は亡くなる半年前、老人ホームに入り、認知症になっても(施設の方も含め、誰にも受け入れられないのに)指示を出し続け、そして、指示が受け入れられないことでストレスをため、発病して亡くなりました。前回の連載でも少し触れましたが、ストレスとは無縁のはずの老人ホームで、重い持病もなかったのに、入居して半年ほどで亡くなるのは大変異例です。

介護を通して明らかになった、この親子関係や義父の考えや行動がもたらした悲劇、また、他にこのようなことを生み出さぬための知恵は、別途書籍で出版する決意ですので、そちらをお待ちいただけたら、と思います。


【今回のまとめ】
  1. 大人は、いつまでも保護者が監督すべき存在ではなく、自立した考えを持ち、仕事や自分の役割を、責任を持ってまっとうしなければならない。保護者は、子どもが大人になるまでの間に、年齢に応じ、自分なりに考えさせたり、行動させていく必要がある。
  2. 子どもの行動には、失敗や間違いもあるが、それらから、本当に大事なこと、すべきことなどを学び取っていくので、大人が先回りして失敗を防いでばかりではいけない。
  3. 困った時はどんどんプロの手を借りて良いので、今を生きる子どもの気持ちに寄り添い、一緒に考える。そのような保護者の一緒に考える態度や姿勢が、長い目で見て、親子の信頼関係を築き、それぞれに幸せをもたらす。

2009.1.29 掲載

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