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第57回 「就職活動」について

皆さんこんにちは。今回も連載をご覧下さりありがとうございます。
  年度末を迎え、また、新年度に向け、希望を抱いている方も多いと思います。同時に不安も抱いているかもしれませんが、まずは笑顔で新しい場に向かい、また、送り出していただけたら、と思います。笑顔は何よりの幸運を運ぶ素(もと)なのですから。
  もちろん、お悩みやトラブルがありましたら、いつでもメールなどでご連絡をお待ちしております。

* * * * *

今回は「就職活動」について考えます。
  まず、昨年夏からの未曾有の不況で、就職活動が大変な状況になっているかと思います。
  ただ、忘れていただきたくないのは、「業績が落ち込んでいる会社もある」一方で、「利益を生んでいる会社もある」ことです。不況で外出を控えているので、家での趣味や食事に関わる産業、また、環境問題対策などに関わる産業など、業績好調な企業もあり、採用を減らす会社ばかりではありません。たとえば、投資情報を扱うメディアなどから、利益を生んでいる会社を知ることが出来ます。
  ですので、どうかくじけず、様々な視点を持って就職活動に臨んでほしいです。

私の大学生時代も、入学当初はバブル経済の名残があったのですが、あっという間に消え、「就職超氷河期」と呼ばれる中に放り込まれてしまいました。女性の同級生の中には、就職活動を早々にやめてしまった者もいました。
  また、就職後、有名企業勤務の男性と結婚し、それまで安定して働いていた職をあっさり手放した友人も知っています。
  当時と似た現在の経済状態で、結婚相手も決まっていないのに「就職活動が大変で、それなら専業主婦になるから、就職活動したくない」という女子大生も出ているそうです。

現在の未曾有の不況の中、私のかつての同級生たちの生活が気になります。「外需頼み」だった日本の経済のあり方を根本から考え直さねばならない事態になっているのです。大企業でもボーナス支給額が半減、それ以下に減らされるなどの話題が後を絶ちません。この夏の公務員のボーナスも削減の動きが出ています。公務員のボーナスは人事院勧告によって決まりますが、その勧告が民間の経済状態を反映するものになりそうだからです。
  私の勤務先でも、生徒の学費に関する深刻な問題が出ています。給与支払いが減らされ、保護者が学費が払えず、祖父母に泣きつくケースも出ています。

自分よりも親が長生きして一生困らない小遣いをくれる、とか、有り余るほどの不動産がある、などといったことは、一般的にはまず考えられません。また、少子化がこのまま進むのであれば、たとえば賃貸経営しているアパート・マンションなどは空き室が目立ち、安定収入につながらないことも考えられます。

そして、親が存命中に年金をもらっていた場合、公務員の共済年金ならば「転給」と言って相続人が(減額された)年金を受け取れますが、その他の場合、子どもが18歳以上になっていれば、受け取れません。
  現在、親の年金を頼りに生活している成人した子どもが、親の死亡後、生活保護を受けるようになり、将来の日本の財政に大変な悪影響を与える恐れがあると指摘している経済の専門家もいます。先日、TVの経済中心のニュース番組で、「35歳から25歳の、独身で親と同居の子どもが、親の年金を頼って生活している割合が、7人に1人」と指摘している方を見ました。驚きの数字ですが、でも、この世代に近い私が、今まで出会ってきた方たちの何人かを思い浮かべると、これは間違いではない、とも思えます。

もしも成人したお子さんの引きこもりなどで悩んでいる方がいましたら、サポート機関などもありますし、どうして良いかわからなければ、私までメールを下さい。思春期までは学校などが支援してくれるのですが、成人するとどこに相談して良いか分からなくなることも多いはずですから。

一生誰かが養ってくれる、ということはまず考えられない以上、自立して、自分の人間らしい生活を守る意味で、働くことは大変重要です。そして、もちろん、働き方は個人に応じた「ワーク・ライフ・バランス」の取れたものであるべきです。

専業主婦も、働く夫を支え、子どもがいれば育児でも社会貢献をしていますので、立派な責任ある仕事だと私は考えます。実家が遠方などで、サポートも頼めず、主婦の仕事をして、更に外で働く時間は取れない、という方も都市部を中心に多くいるはずです。また、体調などで、家事(と育児)で手一杯、という方も多くいるでしょう。

ですが、「自分が働きたくないから専業主婦になりたい」ということは意味が違うのではないでしょうか。大人なのですから、どのような立場であれ、自分の責任を果たすことは生きる上で大事なことです。「働きたくないから専業主婦」と言う人は、主婦として完璧に夫をサポートする準備と覚悟はあるのでしょうか?夫の給料がどんなにダウンしても、万全の家計運営ができる経済知識を身につけている、と自信を持って言えるのでしょうか?
  現実逃避から言っているのであれば、それは責任を果たすことにはつながらないと思います。別の視点から見れば、そういう考えの女性を選びたい男性が世の中に果たしているのか、疑問も感じます。
  また、夫の会社の経済状況や離婚などで危機が訪れた時のリスクが大きすぎます。更に、「働きたくなかった」人を簡単に雇用するほど、世の中は甘くないのではないでしょうか。

では、その働くための就職活動で、大事なことを考えます。
  私は教員ですが、私学勤務なので、一般の就職活動と同様に、履歴書や志望動機書類を提出して、採用試験を受けました。一般の就職活動から見ればはるかに楽なのだとは思いますが、それでも、門前払いや、書類を送っても何の音沙汰もない(=最初から採用予定者が決められていて、形だけ選考する)といった不快な思いを何度も経験しました。
  また、異なる職業の知人が多くおり、そういった方から、採用の話などを聞くこともあります。
  そのような体験や話の見聞を通じ、実感しているのは、「結局は生き方、考え方などが現れ、小手先の細工は見抜かれてしまう」ことです。

今は少子化で高校・大学(専門学校)とも推薦入試で合格するケースが増えています。その結果、入試が昔のような「つらい試練、挫折を伴う困難」なことにならなくなっていて、就職活動で初めて不合格の体験をする生徒も珍しくありません。
  しかも、就職活動は「偏差値などで序列化できる」ものでもなく、また、「有名企業に入る=幸せ」ではないものです。一昔前までは、日本型の安定雇用が存在していましたので、公務員になったり、有名企業に入れば安泰、とも言えたかもしれません。ですが、現在の経済状況を見れば、この考えは現代に通じないということは火を見るより明らかです。また、適性がなければ最近は試用期間を設けることが一般化していますから、早々にリストラ勧告を受けてしまいます。

生徒たちと進路について話をしていると、「親が薦めるから」という理由や、「イメージや限られた情報」で仕事を探している場合も多いことに気づかされます。
  もちろん、高校を卒業してからアルバイト、インターンシップなどで経験を積んで仕事への具体的な像を描ける場合もありますが、できないまま流されてしまう場合もあるでしょう。
  保護者が、その仕事の現在の状況を把握しているのなら別ですが、イメージなどで特定の進路を薦めると、子どもの可能性や他の仕事への適性の芽を摘んでしまう恐れもあります。「○○の仕事もあるよ、でも、決めるのは自分だよ。親のではなく、自分の人間らしい生活を守り、自分の責任を果たすのだから」と、はっきり伝えてください。

就職するのに第一に必要なこと、それは、「とにもかくにも全力投球で人生経験を積む」、ではないでしょうか。それは、単に勉強だけではなく、生きていく上で必要なこと、すべてです。働いた経験のある方が考えれば、勉強だけできていれば社会で通じる、ということではないと、はっきりおわかりになると思います。
  なのに、子どもに「勉強だけしていればいい」と言うのであれば、明らかに矛盾していないでしょうか。

経験を積む、大学や専門学校での経験に限らず、それまでの人生すべてを指す、と言っても言いすぎではありません。適当にこなしていることからは適当なことしか理解できず、書類や面接でそういった面は簡単に明らかになってしまいます。

現在は「キッザニア」と言って、小学生までを対象に、実際に仕事体験をさせ、働く意味を理解させる施設も出ています。小・中学校では職業体験などの機会もありますので、そういった機会を通し、お子さんと働く意味を話し合うのも大事なことです。

大学生の就職活動を考える時、忘れてはならないのが、現在の日本がそもそも、少子化で大学に入りやすい状況になっていることです。私の第2次ベビーブーム(団塊ジュニア)世代は、同学年の者が約200万人で大学進学率は約30%(大学生は約60万人)、現在は約130万人で約50%(65万人)です。多くの同世代の中でもまれて激戦を勝ち抜いて来たのと、人数が少ない中で大学に入りやすいのとでは、学生の質に差があって当然です。今の大学生は、質の高い学生とそうではない学生とに分かれているのではないでしょうか。

したがって、全力投球で人生経験を積まず、なんとなく大学生活を過ごしている学生が多くいます。テストはカンニングで乗り切る、レポートなども「インターネットでコピーして出す」ことで済ませればいい、と考えている大学生も後を絶たず、そのため、「レポートが何かのウェブサイトのコピーではないか見破る」ソフトを開発している大学教授もいます。大学によっては、そのようなレポートが発覚した場合、「その年度の全単位没収」など、カンニング同様の厳罰を科す場合も出てきました。このような小手先で済ませたがる学生を、企業が採用したいと思うでしょうか。

ですから、何が何でもお子さんを大学に、と考える前に、「お子さんが人生を全力投球しているか」、していなければ、「どうしたら全力投球できる意欲が生まれるか」考えていただきたいです。もちろん、これも、お困りでしたらいつでも相談に乗らせていただきます。

なお、現在の就職活動はウェブ中心なので、保護者の皆さんからは「どう活動しているのか見えず」不安かもしれません。そういった場合は、お子さんの通学先の就職課で、保護者向けにサポートもしている学校が増えています、ご遠慮なく問い合わせてみて下さい。


来月にはこの連載も4周年を迎えます。
読者の皆様からあたたかなお言葉をいつもいただきますこと、心からお礼申し上げます。皆様のお声に励まされて書いておりますので、どうぞ今後ともごひいきにしていただけたら嬉しいです。
  これからも、よろしくお願い申し上げます。


【今回のまとめ】
  1. 少子化などのため、入試で味わう困難や挫折感が、以前に比べ現在の学生は少なくなっている。そこで、「就職活動が人生最初の大きな難関」となることもある。現在の経済状況で採用を控える会社もあるが、そうではない会社もあるので、決してあきらめないでほしい。
  2. 入試のように偏差値や序列化ができるものではなく、有名な会社や公務員に採用されれば幸せという時代ではない。また、保護者のイメージなどで子どもに職業を薦めず、「決めるのは自分だ」と伝えることが大事。
  3. まずは全力投球で人生経験を積むことが先決、また、子どもの頃から様々な形で「働く」意味をわからせてほしい。
  4. 少子化ゆえに大学に入りやすい現在の日本で、質の高い学生もいる一方、小手先でものごとを済ませようと考え、大学生活を過ごしている学生もいる。そのような学生を採用したい企業はない。

2009.3.31 掲載

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