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第68回 「携帯電話」について

皆さんこんにちは。今回も連載をご覧下さりありがとうございます。2010年最後の記事です。今年ご愛読下さったご縁に、心からお礼申し上げます。
  皆さんが読んで、感想などを寄せて下さることが大きな励みになっております。日本の教育を取り巻く状況には、さまざまの危機があると日々痛感します。来年も、私なりの視点で、問題点や改善点などお伝えできるよう、努力いたします。
  どうぞ、来年のご愛顧もよろしくお願い致します。

* * * * *

 今回は「携帯電話」について考えます。
  現場で見ていると、今の日本は、中学生で過半数、高校生になると、ほぼ全員が携帯電話を持っているという印象です。なお、石川県では2009年、義務教育中は持たせないという条例が制定されています。そのような地域もありますが、私は、「いずれ持つことが一般的になるのだから、学校・携帯電話会社・家庭などで使い方を正しく教えることが大事」だと考えます。

既に、中学・高校生でも携帯依存症のように、授業中でもメールをやり取りする生徒が多くいて、各学校で頭を悩ませています。また、このように「手放せない」状態が当たり前になると、社会に出た時に仕事中も私用で携帯電話ばかり使うようになる、などの危険もないとは言えません。

中学・高校での持ち込みに関しては、校則や内規があることが一般的です。厳しい場合、「校内で使用したら保護者呼び出し」といったレベルになっているはずです。根拠が示されていると思いますので、よくそれを確認し、また、疑問点は保護者会などで問い合わせてみて下さい。

学校は、現在、「問題が発覚したら処分」という方針のところが多いです。しかし、普段充分に説明もしないのに、問題行動を起こしたら処分、というのはおかしいのではないでしょうか。大人が使い方をまず教え、その上で「このようなことをしたら処分」と明示すべきではないかと私は考えています
  なお、現在、神戸市の須磨学園という私立中学・高校が、「制服」ならぬ「制携帯」を導入しています。この試みの行方に、私も注目しています。

「学校にいる間は、携帯電話を預かって欲しい」といった保護者の声も聞きます。私立小学校ではこのような指導も行なわれているところもあるようです。しかし、これは小学校など所持している者が少ないからできるとも言えましょう。所持者が多い高校で、このようなことをしたら、管理する教員の負担が増えるだけですし、万が一窃盗などが起こった場合、誰が責任を負うのかという問題が持ち上がります。また、子ども自身が、いつまでも「ものごとを自分で管理する」こともできなくなります。

携帯電話に関して、昨年、青少年インターネット環境整備法が制定されました。詳しくは内閣府のサイト※をご参照いただきたいのですが、現在、18歳未満の者が使用する携帯電話を購入する場合は、フィルタリング(有害サイトに接続できない)設定をしなければなりません。ただし、保護者がよくわからず、「不要です」と言ったら解除できたり、また、販売店の説明が徹底していないため、「なくてもいいです」という誤った説明をしていることもあるようです。
  そこで、警察庁では覆面で携帯電話販売店でのフィルタリング説明状況を調べるなどの調査を始めているそうです。

※内閣府・共生社会政策・青少年育成(インターネット利用環境整備)webサイト
    http://www8.cao.go.jp/youth/youth-harm/seibi_law/index.html#a1

フィルタリングに関し、私の周囲で、昨年、このようなできごとがありました。私はウェザーニューズ社のウェザーリポーターに登録しております。これは、民間気象予報会社であるウェザーニューズ社が、精度の高い予報を出すために、一般ユーザーから現在地の天気を携帯で知らせてもらうものです。ポイントがたまると観測機がもらえ、更に精度の高い観測が可能となります(どなたでも登録できますので、ご興味のある方は、携帯やスマートフォンでウェザーニューズ社のサイトをご覧下さい)。

ウェザーリポーターは、自身の携帯電話のページで、お気に入りのリポーターさんを「ソラトモ」として登録することができます。mixiに加入している方は、マイミクのようなもの、といえばおわかりいただけるでしょうか。ソラトモは面識がなくても登録可能で、メッセージを送ったり、質問ができるのですが、そのコーナーが昨年、フィルタリング設定をしている携帯から、見られなくなったのです。

「見知らぬ人と対話できる」ことが主な理由だったようで、ウェザーニューズが粘り強く交渉を重ね、今では設定が解除されています。ただし、
「見知らぬ人に名前・メールアドレスなどの個人情報を教えない」
「他のリポーターなどを誹謗中傷しない」
などの条件を明示して、ソラトモへのメッセージなどを送るよう求めています。

このような条件があるにもかかわらず、高校生くらいのリポーターが、「ソラトモからメールアドレスを教えてと言われたら、どうすればいいですか」と質問していることがあります。
  当然、大人たちが中心に、「見知らぬ人に個人情報を絶対教えてはならない」、「そのようなことを聞いてくる人とは縁を切るべき」などのアドバイスをしているのですが、このような質問が出る背景には、「プロフ」などの存在が見逃せないと私は考えています。

「プロフ」とは、主に携帯電話から接続する、プロフィールを紹介するページを指します。もちろんPCからも接続できますが、利用者の大半が子どもなので、携帯電話からの接続が中心となっています。
  大人なら個人情報をやたらに載せることは、身の危険につながるのでしないと思いますが、ここでは、生徒の氏名、学校名、クラスなどの個人情報が「本人の手によって」堂々と書かれています。

個人情報を載せれば、当然、見知らぬ人物が「自分のことを知って」接してくる危険を抱えることになります。見知らぬ人物とは、「女子高生を装った、中年男性」である可能性も、もちろん出てきます。つまり、「自分から犯罪に巻き込まれる可能性を積極的に作っている」ことになるのです!

また、自分と交際している異性とのキスプリクラを載せている生徒、また、クラスの生徒が何かした失敗をすぐ撮影し、載せている生徒もいます。たとえ悪意がなくても、公序良俗に反している内容が掲載されれば、停学などの処分が課されます。大学への推薦入学が決まっていれば、当然、そのような生徒は高校から推薦できないので、推薦取り消しとなります。また、書いた内容で第三者のプライバシーを侵害しているなどと認められれば、逮捕・補導も当然起こりえます。

しかし、これらのことを、じゅうぶん理解している生徒はほとんどいないのが現実です。また、プロフに関し、「親が子どもの頃に携帯がなかったから、親はよくわからないから話さない」という声もあるようです。

プロフについては、渡辺真由子氏の『子どもの秘密がなくなる日』(主婦の友新書)に詳しく書かれているので、ご興味がある方は、ご一読なさることをおすすめします。私のブログからも購入が可能です。

また、携帯は重大な犯罪の温床になる可能性も否定できません。今年の初め以降、神戸市を中心に、「中学生が大麻使用で逮捕」というニュースが多く聞かれ、背筋が寒くなりました。特定の学校から逮捕者が出ているわけではなく、「友人のそのまた友人」といった形で、複数校から出ています。このような関係は、警察も「従来の非行とは異なる」と頭を悩ませているようです。

ですので、冒頭近くにも書いた通り、このような危険な状況を放置するわけには行かないので、学校が携帯電話会社や子どもの安全を守るNPO法人などと協力し、「携帯の正しい使い方」を小学校から、年齢に応じて教えるべきだと考えています。道徳やホームルームを使えば、通常授業をつぶさずに対応可能です。
  また、授業参観で保護者も同席した際に実施すれば、保護者にもダイレクトに危険性が伝わって良いのではないでしょうか。

ご家庭でも、ぜひ、携帯についてもう一度考え、この年末年始に話し合い、ルールを決めて下さい。たとえば、

      ・寝る時など(例11時以降)電源を切る
      ・食事時など、リビングには携帯電話を持ち込まない
      ・ルールを破ったら、ペナルティを課す(1週間使用禁止など)

などです。紙に書き、親子それぞれで保存するなどしていただきたいです。お子さんの部屋の壁に貼るのも効果があると思います。

保護者の中には、仕事の用件で携帯電話を片時も離せない方もいるはずです。これは、仕事でどうしても必要だから、という理由があるはずで、仕事をしていないお子さんとは明らかに理由が異なります。お子さんが「何でお母さんは携帯をいつも持っているの」などと聞くと思いますが、離せない理由があるのでしたら、毅然と説明して下さい。

その代わり、お子さんといる時には、携帯に対応する時は緊急の時だけなどにし、また、どんなにお子さんが小さくても、
「大事な用事だから見るね」
などと声をかけ、最小限にして下さい。

道で、小さいお子さんを抱っこしながらメールを読んでいる、レストランなどで食事中、お子さんとふたり連れで、お子さんが食事中に携帯を見る…これらは、私が実際に見かけた保護者の姿です。保護者が携帯を熱心に見ている時、お子さんは目の前にいても、保護者の関心が薄くなっており、親子ふたり連れなら、その間、子どもは放置されています。

お子さんの立場からは、「自分よりも携帯電話の中のことが大事なのか」、「携帯電話にはそんなに楽しいことが詰まっているのか」という考えが生まれます。保護者がわざわざ、「生身のコミュニケーションより、携帯を優先している」姿を見せることは、お子さんの成長に良いはずがありません。

人といる時に、携帯を出す時には「大事な用事だから」と声をかけるものだと、子どもが理解できれば、立派なマナー教育のひとつにもなります。以前、某一流ホテルのレストランで、大学生らしい数人が、教授とおぼしき方にご馳走になりに来ている席、その方の目の前で、何も言わずに携帯を出し、お相手もせず、携帯に夢中になっているのを見たことがあります。思わず、
「そんなに緊急ですか、一言『携帯見ます』と断りましたか」
と声をかけたくなり、のど元まで出かかりました。

各機関が正しく子どもに使い方を教えると、たとえば、子ども(孫)から祖父母世代にも携帯電話のマナーを教えることが出来ます。
  一線を退いて携帯電話を持った方は、マナーモードのセットの仕方も知らず、病院や電車などで携帯電話をけたたましく鳴らし、また、応対していることが珍しくありません。でも、子どもや孫世代がきちんと指摘することができれば、マナー違反も減るのではないでしょうか。

携帯電話は、正しく使えば、他人とのコミュニケーションを円滑にしてくれる便利な道具です。大人が責任と自覚を持ち、子どもに指導すれば、携帯電話をめぐるトラブルも防げると私は考えています。


【今回のまとめ】
  1. 携帯電話の使用方法については、家庭・学校などでルールやマナーを教えることが大事
  2. 2009年、青少年インターネット環境整備法が制定され、18歳未満の者が使う携帯にはフィルタリングを設定することになっている。しかし、保護者の認識不足や販売店の説明不足から、解除されてしまうこともある
  3. 携帯電話のプロフで、子どもは個人情報を積極的に載せており、危険極まりない
  4. 携帯電話は非行や犯罪の温床にもなりかねない危険性を持ち合わせている
  5. 家庭で、1度、携帯電話の使用方法についてきちんと話し合って欲しい

2010.12.31 掲載

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