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第72回 「弱点と向き合うこと」について

皆さんこんにちは。今回も連載をご覧下さりありがとうございます。
  前回の連載更新以来、間隔があきまして、申し訳ありません。大変長らくお待たせ致しました。

この4ヶ月、東日本大震災の影響で、3月にすべきはずのことができず、その分新年度にずれ込んだ仕事に追われながら、ずっと、頭の片隅で、「今後この場で、また、現場で何を伝えるべきか」考え続けてきました。正確に言えば、今も、考え続けております。3.11の東日本大震災以後、日本は多くの面で変わりました。ですので、それ以前に考えていた内容を、そのままお伝えするわけにはいきません。
  それらの内容は、今後改めてこの場などで書くことにして、今回は、夏休み、また、今後の受験シーズンに向け、お伝えしたい内容を書きます。
  なお、被災地では新年度が遅れて始まったため、夏休みが短縮となる学校が多いと思います。そういう皆さんにこそ、短い休みを有意義に過ごしてほしく、今回の内容が少しでも役立つように、と願います。

* * * * *

今回のテーマは、「弱点と向き合う」ことです。
  生徒たちと話をしたり、また、彼らの文章を読んでいると、「自分の弱点をきちんと認識して、克服しようと努力している」者と、そうでない者とに分かれていると気づきます。弱点を認識して克服しようとしている者は、つまり、「自分のことを客観的に理解できている」ので、自分の得意な物事も正しく認識できています。

苦手なものから逃げずに克服する努力をし、一方で、得意なものは更に高められるようバランス良く努力することで、現在いる位置より、更に高いレベルの物事に成功できる、と私は感じています。

教科はもちろん、教科の中の分野ごとに、得意、不得意があるのは、どんな生徒にとってもある意味当たり前です。毎回の定期テストや成績表、また、学校外の模擬試験などの結果をよく読み、「不得意分野からでも少しでも得点できる」ように努力して欲しいです。なぜなら、不得意分野を放置して、ハイレベルの志望校に合格できる人は、まず存在しないからです。第一志望の高校・大学受験に失敗した生徒の話を見聞きしていると、「苦手だった○○の教科を入試で失敗した」などの意見が多く出ます。

自分の力を客観的に認識させるため、私は、定期テストが終わると、必ず「間違えた問題の解きなおし」と、「今回のテスト勉強で良かった点、良くなかった点」をノートに書かせています。ここから次の勉強、また、テストに向けて続けるべきこと、改善すべきことが生徒自身にも自覚できます。こういったことは家庭でもできると思いますので、早速実行なさってみて下さい。

今は夏休み、受験に向けて懸命に勉強している受験生の皆さんも多いことと思います。この2年ほど、日本の大学で受験者数が日本一多いのは明治大学で、この春はおよそ11万人が受けました。大学全体の定員は約6500人ですので、大まかに見て、16倍の倍率となります(もちろん実際の入試は学部・学科別に実施されますので、倍率は学部・学科で異なります)。
  最近の私立大学受験では、「早・慶・上智」に続くレベルとして「GMARCH」という呼び名があり、「学習院・明治・青山学院・立教・中央・法政」大学をそれぞれ指します。国公立大学だけでなく、この「GMARCH」クラス以上の大学にどれくらい合格者を出せるか、という点で、高校間の競争が激しさを増しています。これは少子化の進む中で、学校の評判、つまり、生き残りへの評価に直結するからです。

その、勉強の弱点克服ですが、私は国語教員ですので、国語に関してお話します。高校までの学習で、古典・漢文は文法や句系・重要語句をしっかり覚えて、問題練習を重ねていけば、ある程度弱点が見え、また、克服すべき点もわかるはずです。

ですが、現代文は漢字や語句を覚えるだけでは不充分です。「本をほとんど読まない」、「新聞はテレビ欄しか見ない」などの生徒の場合、思考力、また、現代文を読む上で前提となる知識や教養がないので、簡単に実力アップには結びつきません。これらは、単に「覚えれば良い」ものではないので、結局面倒くさいと思って放置した結果、直前になっても問題の正答率が上がらず、挙げ句の果てに、入試でも失敗してしまう生徒を多く見てきました。

また、本などをあまり読まない、つまり、日常でものごとをあまり考えない生徒の書く文章は、深く考えている生徒の書くものとの間に、歴然とした差があります。あまり考えない生徒の文章は、「思い込み」で世の中を見ていたり、また、「自分の周囲」しか見えていません。これでは読み手を納得させることなど、到底不可能です。
(こういう状態のまま、大学に進学しても、本人が気づいて改善しない限り、就職活動をしてもまず内定は取れないでしょう。今は中学の補習を行なう大学もある時代ですが、一般的に考え、本も新聞も読まない者が、大学は卒業できても、大卒の社会人として通じる可能性は低いのではないでしょうか)

現代文の場合、「新聞のコラム要約」をさせると、生徒の読解力や知識がわかります。簡単なコラムでも、読解力の弱い生徒は読み間違いをしたり、また、関連して短文を書かせると、思い込みで、ありもしないことを述べたりするからです。
  このようなことは、多くの教員が取り入れていると思うのですが、家庭でもできますし、夏休み後、担当教員に話して、提出して添削してもらっても良いと思います。

方法は次の通りです。

  1. コラムを読み、新聞から切り抜く。インターネットでプリントアウトしても可。社説が良いが、難しければ、「天声人語」(朝日新聞)のような「新聞1面掲載のコラム」で構わない
  2. 200字で要約する。B5版・400字詰めの原稿用紙を半分に切って使うと便利
  3. ノートに、「コラム(社説)」の「新聞名・日付」を書き、同じページに要約した文章と共に貼る

毎日続けるのは大変でも、1日おき、あるいは週に2本程度なら続けられるのではないでしょうか。現代文が苦手、また、もっと力をつけたい、という皆さんに、この方式はぜひおすすめします。

最後に、弱点を認識することは、スポーツでも重要だと私は考えています。「やみくもに生徒に練習させる」のではなく、「自分なりに考えて自覚を持った練習をさせる」ことを目指す指導者は、「練習ノート」を生徒に書かせています。練習メニューや体調、食べたものや、成果の出たこと、成果の上がらなかったことなどさまざまのようですが、こういう面からも、「弱点を知っても卑屈にならず、得意なものとバランス良く努力する」ことの重要性が見て取れます。

そして、恐らく、「弱点を知った上で、それをカバーし、得意なものとバランスよく努力」したからこそ、サッカー女子日本代表・なでしこジャパンの選手の皆さんも、ドイツでのワールドカップで世界一になれたと考えています。平均身長163cm、体格では圧倒的に外国選手より不利な皆さんならではの、数知れない工夫や努力があったはずです。同じ日本女性として、この優勝に心からの祝意を表し、また、ここから、私たちも大いに学ばなくてはならない、と感じています。


【今回のまとめ】
  1. 弱点を認識し、それを克服しようと努力することは、得意なものをきちんと認識している裏返しでもある。弱点を知っても卑屈にならず、得意なものとバランス良く努力することで、更に高いレベルの物事に成功できる
  2. 教科だけでなく、教科の中の分野ごとに、得意、不得意があるのは当たり前。毎回の定期テストや成績表、また、学校外の模擬試験などの結果をよく読み、「不得意分野からでも少しでも得点できる」ように努力して欲しい。不得意分野を放置して、ハイレベルの志望校に合格できる人は、まず存在しない
  3. 少子化だが、ハイレベルの大学(関東で言えばGMARCH以上)の受験は厳しい
  4. 国語では、古典・漢文は文法事項などを覚えて問題演習を重ねれば正答率は上がるが、現代文は「本を読むのが嫌い」、「新聞はテレビ欄しか見ない」などの場合、思考力や現代文を読む上で前提となる知識や教養がないので、簡単に実力アップはできない
  5. 現代文の基本的読解力は、コラムや社説の200字要約が基本的でおすすめ
  6. 弱点を認識することは、スポーツでも重要である

2011.7.28 掲載

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