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第74回 「自転車の乗り方」について

皆さんこんにちは。今回も連載をご覧下さりありがとうございます。
  数ヶ月更新が止まってしまい、長らくお待たせして、大変失礼しました。東日本大震災後、何を発信すべきか、現場で生徒たちと向き合いながら、自問自答する毎日が続き、発信するのにためらいを強く感じました。これは、私の中に今までになかった気持ちでした。

教員として仕事をして発信する以上、この連載に限らず、趣味のblogやtwitterも含め、無責任なことは書けないという思いでいつもパソコンに向かっております。昨年は、今までにない災害を経験し、何をどう伝えていくべきなのか、試行錯誤の日々が続きました。
  まだ試行錯誤は続いておりますが、自分なりに見えたこと、感じたことをこの場で今後も発信して参りますので、どうぞよろしくお願い致します。

* * * * *

今回のテーマは、「自転車の乗り方」です。
  東日本大震災直後から、電車が長時間にわたってストップした帰宅困難の影響もあり、自転車通勤・通学の方が急に増えました。自転車店の中には増収増益となるところも出ています。

そして、同時に、大震災直後から、自転車の乗り方で、怖い思いをすることが増えました。のちほど詳しく述べますが、違法自転車も横行するようになり、警察庁は自転車の乗り方を厳しく取り締まるようになります。

今回の記事は、「中・高生の自転車の乗り方」で気になることを主に書きますので、小学生のお子さんや、また、基本的な乗り方に関しては、お住まいの都道府県の警察のwebサイトを確認されることをおすすめします。自転車は地域によって安全活動に差があり、たとえば、地方では通学距離が長い場合など、中・高生でヘルメットを着用している者も見かけます。くれぐれも、お住まいの地域に合わせた内容を理解していただくよう、お願い致します。

私立校に複数勤務してわかったのは、「自転車通学を許可する中学・高校では、乗り方教室を開くが、許可しない中学・高校では乗り方教室を開かない」という事実でした。
  ですが、自転車通学を許可しない学校に通う生徒は、休みの日も自転車に乗らないのでしょうか。大半の場合は、そうではないはずです。それならば、すべての中学・高校で乗り方教室を実施すべきだと私は考えます。

なぜなら、自転車とは、交通事故を起こした場合、「子どもでも加害者になる可能性がある」唯一の乗り物だからです。子どもは弱者ですので、被害者になることばかり想定されがちですが、自転車に乗っている時は加害者になる可能性もあり、実際に、「無灯火で歩行者をはねて死亡させた」などの事件が起こっています。警視庁のwebサイトでも例が載せられていますので、ご参考になさって下さい。
  【参考Webサイト】警視庁:自転車の交通安全
  http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/kotu/bicycle/anzen.htm


保護者の皆さんにとって、じゅうぶん承知しておいていただきたいのが、お子さんが未成年であれば、「加害者になった場合、共に損害賠償をしなければならない」ことです。ですので、ご一緒にルールを確認し、「ルールを守らないで加害者になったら、賠償金は自分で払うこと」などと厳しく言い渡しても良いように私は考えます。

中・高生の自転車の乗り方で、多いルール違反は、次のものです。

1.無灯火
  昨年の東日本大震災直後は、道路の照明が節電や計画停電で控えられている中、ライトをつけていない自転車が目立ちました。このような無灯火自転車は、「近くまで来ないと自転車に乗っているのかわからない」ので、接近するまでわからず、非常に怖い思いを相手に与えますし、事故の可能性も高くなります。
  ライトをつけるのは、「自分の存在を知らせる」ことで、ライトをつけないのは、「自分から進んで自分の身を危険にさらしている」ことになると、じゅうぶん認識していただきたいです。

2.携帯電話、音楽プレーヤーを聞きながらの運転
  片耳でラジオを聞いたりするだけなら違反にはならないようですが、大音量(いわゆる「音漏れ」の状態)で運転していると違反になります。そもそも、これでは車からクラクションを鳴らされても聞こえない可能性があり、やはり、「自分から進んで自分の身を危険にさらしている」ことになってしまいます。

3.二人乗り
  下校の際などに友人を乗せることがあるようですが、親が幼児を乗せる、などのケース以外では、もちろんルール違反です。

4.傘差し運転
  雨の日には傘を差して片手で運転するのは危険です。レインコートなどを着て下さい。
   ※これらについて交通違反と摘発を受けた場合、主な罰金は以下の通りです。
  • 無灯火…5万円
  • 二人乗り…3万円
  • 手放し運転…3ヶ月以下の懲役か5万円以下の罰金

なお、他に気になる点としては、「急いで登下校する際に慌てて走行し、自動車や歩行者とぶつかる」ことがあります。先程も書きましたとおり、自転車は、「子どもでも加害者になる可能性がある」乗り物なので、急いでいても、一時停止などは忘れないようによく理解させることが大事だと思います。

保護者の皆さんの中で、車を運転なさる方は、「車の運転者の目から見て、こういう行動をとってほしい」ということを伝えていくのも大事だと思います。車の運転者から見て、突然出てきたら対処できないので、交差点では一時停止する、止まってもらったら一礼して行く、などのことを話し合い、「車に追突されないよう、また、お互いに気持ちよく通行できる」ことを考えていただけたら、と願います。

ものごとは、さまざまな角度から見ることで、ひとつの角度から見ていてはわからないことが多く発見できます。そして、その見方は、多くの事柄に応用できます。自転車の乗り方という身近なことで、ものごとの考え方の重大性に気づくのも大事ではないでしょうか。

また、中・高生の乗っているものには少ないと思いますが、今、問題になっている自転車があります。「ピスト」と呼ばれ、「競技用自転車で、ブレーキがない」ものです。
  ブレーキがない自転車は公道(一般の道)を走ってはならず、走ると道路交通法違反になります。ですが、「(ブレーキがないので)デザインがシンプルでカッコイイ」、「ブレーキを使わずに止まれればカッコイイ」などの意見があるようで、都内を中心に乗る人が数年前から目立っていました。
  正しく自転車に乗っている人から、「このような違法自転車に乗る人と、正しく乗る人を一緒に扱ってほしくない」という声も聞いたことがあります。

ピストを運転していた人が、歩行者をはねた死亡事故も出てしまったので、今、東京や大阪の大都市を中心に、特に取り締まりが強化されています。警告ではなく、即座に「赤切符」と呼ばれる交通切符を交付されているようで、この場合、5万円以下の罰金を納めなくてはなりません。拒否する、逃げようとするなど悪質な行動を取ると、逮捕される可能性もあります。

お子さんがこの春、学校を卒業して上京する、都会へ行くなどの場合、このことも「ルール違反」だと明確に教えておく必要があると私は考えています。
  本来、このようなことは家庭で指導すれば、学校で指導する必要はないことかもしれません。ですが、家庭の教育力に格差がある現状を見れば、学校が専門家の手を借りて伝えていくことも重要である、私はそう考えています。

学校を卒業すると「社会人」と呼ばれるようになりますが、「社会人」とは、ただお金を稼いで自立しているのではなく、「自分で自覚と責任ある行動を取れる人」ではないのでしょうか。もちろん、そこには「法律などのルールを守る」ことも含まれているはずです。
  中・高校生や大学生までのうちに、このようなことがきちんと理解できるようになっていれば、ピストに公道で乗ることは許されないとすぐに判断できるのではないでしょうか。

昨年来、「絆」という言葉があちこちで聞かれますが、「ルールやマナーを守る人」であってこそ、「絆」を周囲の人と結べるように私は考えています。ルールも守らずに自分の権利を主張したり、周囲を非難しても、そのような人と縁を結びたい人は少ないはずです。

ひとりでも多くの人が法律などのルールを守り、社会で多くの良いつながりが生まれることを私は願っています。



【今回のまとめ】
  1. 東日本大震災以後、自転車の利用者が増えたが、同時にルール違反も増えたため、自転車の乗り方に関して厳しい取り締まりがされるようになった
  2. 自転車は、交通事故を起こした場合、「子どもでも加害者になる可能性がある」乗り物なので、親子でルールを確認し、違反しないように気をつけてほしい
  3. 車を運転する保護者は、車の運転者から見て、こういう行動をとってほしいということを伝えるのも効果的。ものごとは、さまざまな角度から見ることで、ひとつの角度から見ていてはわからないことが多く発見でき、その見方は、多くの事柄に応用できる
  4. 大都市を中心に、ピストと呼ばれる競技用自転車への取り締まりが強化されている。この自転車はブレーキがないので、公道を走ってはならず、走ると道路交通法違反である
  5. 昨年来、「絆」という言葉があちこちで聞かれるが、「ルールやマナーを守る人」であって初めて、「絆」を周囲の人と結べる

2012.1.12 掲載

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