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野津純一に懲役25年の判決

平成18年6月23日
矢野 啓司

平成17年12月6日における、矢野真木人殺人事件の殺人犯である野津純一に高松地方裁判所は、懲役25年の判決を言い渡しました。これは統合失調症を患う精神障害者がただ一人を殺害した殺人事件としては、前例がない厳罰です。

犯人の野津純一は2週間以内に上告することが可能で、新聞によれば、弁護士はすでにその可能性を示唆しています。野津純一の両親は第二次公判では、「家を売った金1100万円余りを私ども矢野真木人の両親に支払うので、純一には可能な限り軽い刑罰をおねがいします」と証言しました。このため、「両親の心も上告に傾いている」と考える次第です。もしかしたら、「1100万円は矢野に支払う必要はない、なぜなら、純一は統合失調症なので無罪になって当然だ」という主張の弁護士がすでに、野津純一の両親に接触している可能性も無きにしもあらずでしょう。

私どもは、野津純一の両親および姉と弟の家族に、純一に厳罰を甘受するように説得してもらいたいと希望しています。その理由は、野津純一の両親の老後の生活の安定と安静および純一の姉と弟の両人の幸せの条件であると信じるからです。

野津純一が懲役25年の刑期を終えると61才です。通常の場合、生活態度が優良な囚人の場合には刑期が最大3分の2まで短縮されます。早ければ54才で純一は自由を獲得します。純一は権威には弱い男のようです。したがって刑務所では優良な囚人として振る舞うでしょう。純一の父親は現時点で、既に67才です。純一が出所する頃には両親は高齢者で、自分自身で自分の身体の面倒を見るのも困難である可能性が高いのです。ひょっとしたら既に他界しているかも知れません。結局、自由を得た純一の親権者は純一の姉と弟になりますが、その二人もすでに60代前後です。これは純一の家族には大変困難な状況です。

刑期が短ければ短いほど、家族には純一を養う困難さが増すのです。また刑期が短ければ純一は184センチ体重100キロの体力をもてあまして、第二の矢野真木人のような犠牲者を出す可能性が高いと見なければなりません。これを避けるためには、野津純一は刑務所を出所した後は、精神科の閉鎖病棟で残る人生を過ごすべきなのです。しかし、国の指導で、精神科の病院では可能な限り早い時期に患者が社会に再適応して退院することが求められます。これは刑務所を出所した純一にも同じく期待される、早期退院です。野津純一の統合失調症は完解には至らないとうのが専門家の指摘です。それでも、純一は精神科の病院から退院を求められる可能性があります。それが今回の殺人事件の原因でした。その時に親権者として純一の責任を負うのは、老いた両親か姉か弟なのです。それは確実に野津家にとっても不幸であるはずです。

私どもは、野津純一は終身刑であることが、一番本人に取っても幸せなことだと考えます。刑務所を出れば、純一はすぐにも生活の心配をしなければなりません。終身刑だとその心配もありません。「彼は、刑務所の中で不自由なく生きていられるだけでも幸せだ」と証言した医師もいます。野津家の家族にはその意味をかみしめてもらいたいと思います。私たちが純一に終身刑を望んだのは、「野津家の家族のため、社会の安全のため」なのです。



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