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抱腹絶倒なのに実話『ヤギと男と男と壁と』

壁を通り抜け、眼力で敵を倒すエスパー部隊のお話、ならSF映画だが、それを目指して日々精進した部隊のお話だと、あら不思議、爆笑コメディになっちゃう。しかも、これがアメリカの実在の部隊。

大真面目に壁抜けに取り組む部隊なんて、想像しただけで可笑しいが、映画の基となった、部隊を追った本「実録・アメリカ超能力部隊」の著者ジョン・ロンスンも、ロンドンの会見では、これが実話ということを説明しながら、笑いを抑えきれない様子だった。

その本のそのまた基となったのが、イギリスのチャンネル4で放映されたテレビドキュメンタリー。プレゼンターを務めたのがロンスンだ。アメリカの軍で起こった実話を紹介する3回シリーズの1回が『The Men Who Stare At Goats』で、本、映画とも原題は番組タイトルをそのまま使っている。
  プロジェクト・ジェダイという作戦や、壁を通り抜けられると信じながら、不成功続きでまいったなんていう話だけ聞くとバカバカしいが、部隊のできる前後のアメリカの戦争、ベトナムやイラクなどとあわせて見せられると、笑ってばかりもいられないドキュメンタリーだ。
  映画は、そこから上手くコメディタッチの部分を抜き出し、ひたすら笑えるものとなっている。

見つめただけでヤギを殺したという逸話のある主人公を演じるのがジョージ・クルーニー。そんなパワーを持っているとは思えないマヌケな失敗で、ついてきた記者まで窮地に陥れたりもする。可哀想なヤギさん、たまたま、急に具合が悪くなったんじゃ…と勘ぐりたくもなる主人公だが、窮地でも余裕をかましてるあたり、ただ者ではないような気もしないでもない。

それに対抗するエスパー隊員がケヴィン・スペイシー。本にはない、映画のための架空キャラクターらしいが、主人公にライバル心を燃やし、白目をむいて、声を裏返し、すっかりその気のトランス状態を見せてくれるスペイシーは傑作。
  ドキュメンタリーに出演した本物たちと比べて、一番似ているのは隊長役のジェフ・ブリッジスかもしれない。元ヒッピーの軍人という、マッチョな自由人の雰囲気をよく出している。

映画にもジェダイ作戦を登場させていて、それにも関わる記者を演じているのがユアン・マクレガーと、細かい笑いをとることにも抜かりなく、主役級のスターがそろって笑わせてくれる豪華コメディだ。

『ヤギと男と男と壁と』8月14日公開 ■ ■ ■

イラク戦争に赴いた記者(マクレガー)の案内役を務めることになったのが元エスパー部隊所属だった男(クルーニー)。その部隊では伝説的な存在だった男についていく記者だったが、あにはからんや、とんでもない事態に巻き込まれていく。

 監督 グラント・ヘスロヴ
 出演 ジョージ・クルーニー、ユアン・マクレガー、ジェフ・ブリッジス ほか

2010.8.13 掲載

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