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堺雅人、ロンドン映画祭に2本の主演作『その夜の侍』

2009年のロンドン映画祭には、松山ケンイチが『カムイ外伝』と『ウルトラミラクルラブストーリー』の2本の主演作を送り込み、日本の新進俳優として印象付けられた。
  今年は堺雅人。『鍵泥棒のメソッド』と『その夜の侍』の2本の主演作が並んだ。このところ、他の映画祭にも主演作の参加が続き、海外でも知られる日本人俳優になっていきそうだ。

『その夜の侍』は、劇団THE SHAMPOO HATの戯曲の映画化。劇作家・演出家・俳優の赤堀雅秋が自ら脚本を書き監督も務めた。

微笑みがトレードマークみたいになっている堺だが、本作では微笑まない。妻(坂井真紀)を亡くした主人公として、陰鬱、ややもすると気味悪さを感じさせるまでの思いつめた顔を見せる。気持ちを変えさせようと、同僚の女性(山田キヌヲ)を引き合わせる妻の弟(新井浩文)など周囲の人々の気遣いも届かない場所に、落ち込んでしまっているような男を好演している。

妻をひき逃げした犯人として、堺に対するのが山田孝之。女性を殺してしまったことに罪の意識もなく、むしろ、ひき逃げで刑罰をくらったことを恨みに思うような男として描かれる。その男に死ぬような目にあわされたタクシー運転手(田口トモロヲ)や、レイプされた女性警備員(谷村美月)が、その酷い行いで吸引されたように男から離れられずにいる。男を中心とした奇妙な小グループは、孤独をより際立たせる。

主人公が呼ぶホテトル嬢(安藤サクラ)も、様子のおかしい客にかまうことなく、カラオケに没頭し、つながることのない人間同士を象徴する。
  犯人への復讐を計画する主人公、復讐がどうなるのかというサスペンスに、つながりのない、個々が切れたまま存在するような世界から、戻ってくることができるかという問いも重なっていく。

それぞれのキャラクターに、長い独白のような台詞で空しい心象風景を表す、見せ場がある。その手法に魅力を感じるか、演劇的すぎると感じるかで、評価も分かれそうだ。

『その夜の侍』11月17日公開 ■ ■ ■

チンピラ風の男(山田)をつけねらう、尋常ではない様子の眼鏡に作業着の男(堺)。2人は、刑期を終えたひき逃げ犯と、ひき逃げされたすえ死亡した女性の夫だ。周囲の人々を巻き込みつつ、復讐の時は刻一刻と近づき…

 監督 赤堀雅秋
 出演 堺雅人、山田孝之、綾野剛、谷村美月 ほか

2012.11.19 掲載

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