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大人のおとぎ話『とらわれて夏』

脱獄犯と人質の間に芽生えた愛のお話。ストックホルム・シンドローム? いえ、それ以上に大人のおとぎ話です。絵空事のような話ではなく、現実の重みがあるゆえに、大団円がうれしくなります。
  『スラムドッグ$ミリオネア』(第2回でご紹介)で、スラムの厳しい暮らしをたっぷり描いているからこそ、それを一機に挽回するくらいラッキーでハッピーな結末がいっしょに喜べるのと近い感覚です。

主演のケイト・ウィンスレットは、2013年10月のロンドン映画祭参加時は妊婦さん。大きなお腹だけでなく、体全体に栄養が行き渡っているようなどっしり具合でした。さすがに映画中は、そこまでではないにしろ、しっかりお肉がついていて、息子との家庭を支える女の生活感を出しています。
  対する脱獄犯はジョシュ・ブローリン。殺人犯ですが、その殺人事件も不幸な事故とも言えるようなもの。荒々しく見える反面、根は良い人そうな雰囲気を出しているのが上手いです。
  そういう理由ありの犯人ですが、母子家庭になってしまった女の側にも事情があって…というところで、次第に惹かれあう2人。

子役のガトリン・グリフィスも、とてもナチュラル。ジェイソン・ライトマン監督は、わざと前もっては台本を読ませず、現場で教えて、フレッシュな反応を引き出したのだそう。
  その子どもが大きくなったという設定で、ナレーションを担当するのが、トビー・マグワイア。ちょっと悲しげにも響くハスキーな高めの声で静かに語るのが、考え深い青年を思わせます。ナレーションを多くやっているところを見ると、この声のファンも多いのではとにらんでいたら、耳障りな声と評している人もいて、びっくり。顔の好みより、声の好みの方が、もっと生理的なものだけに、好き嫌いがはっきり出るのかもしれません。

それにしてもウィンスレット、レオナルド・ディカプリオみたいなイケメンから、ブローリンみたいなごつい人まで、しっくりとお似合いに見せてしまえるのがたいしたもの。
  年齢を経るごとに良い女優になっていて、もし、出産後、体重が戻らず、美人女優の看板を下ろすことになっても、それはそれでやっていけそうと思ったのでした。
  そのウィンスレットも、ロンドン映画祭から2ヵ月足らずの12月に無事出産し、今では、もう、すっかりスリム。余計な心配だったのね。


『とらわれて夏』 5月1日公開 ■ ■ ■

レイバーデーの休日の頃、13歳の息子ヘンリー(グリフィス)とショッピングしていたアデル(ウィンスレット)は、傷を負ったフランク(ブローリン)と出くわす。脱獄犯のフランクに家で手当てを施し、そのままかくまうことになってしまい…

 監督 ジェイソン・ライトマン
 出演 ケイト・ウィンスレット、ジョシュ・ブローリン、ガトリン・グリフィス ほか

2014.5.4 掲載

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