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今回の本のプレゼントは終了いたしました。当選者の発表は発送をもって代えさせていただきます。 これまでは毎回当選者のお名前を発表してきたのですが、ネット時代は、名前がいろいろ検索できてしまうので、お名前を表示するのを控えることにいたしました。本は発送ずみです。
では、また次回(不定期開催)をお楽しみに。
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■『希望』(高田昌幸編/旬報社)
定価:2,520円(本体2,400円+税)……1冊
この本では47名の人物がインタビューされています。元受刑者を受け入れる建設会社、プロゴルファーから老人ホームの管理栄養士になった人、両手のない書家、24時間年中無休の小児科医、自殺防止のNPOをつくった元警察官、イラクで人質になった高遠さん…etc。いろんな立場の人が、迷い悩みながらも自分の理想を追いかけて懸命に生きています。最初この本を手にしたときは、震災後のいまにぴったりの本だと思いました。実際に被災者のインタビューもいくつか掲載されています。けれど、全部を通して読んでみると、震災に関係なく、いつ読んでも価値のある本だと感じます。この本で描かれている「希望」は、空に輝く太陽のように、わかりやすく光輝いているものではありません。でも、読み終わったあとで、「そうだ、私も私の人生をちゃんと生きて行こう」という気分になります。心の奥に小さな希望の種をまいてくれるような、そんな本です。
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■『ロシア語られない戦争』(常岡浩介/アスキー新書)
定価:780円(本体743円+税)
サイン本……1冊 サインなし……1冊
アフガニスタンで人質になった常岡さんがロシアのチェチェンでゲリラ部隊と行動を共にしたときの体験記。いつも命ぎりぎりの世界で仕事をされている常岡さんを尊敬します。4か月の行軍のうち、食料を補給されない状況が3週間続いたこともあったとか。飢えが続いて最後は幻覚を見たといいますから、その過酷さがわかります。戦闘中はヘリコプターのミサイル攻撃を受けたり、取材が終わってもしばらく帰国が許されなかったり…と、厳しい状況の連続。常岡さんは、難民になれずに戦争の中に取り残された人や、絶望の中で武器をとって立ち上がった人たちに関心があるそうなので、どうしても危険な地域へ足を踏み入れることになるのでしょう。2006年に毒殺された、元ロシア情報機関員、リトビネンコ氏へのインタビューも掲載されています。
★1冊は、とある勉強会でご本人から直接サインをもらったので、「アフガン人質 常岡浩介」というサイン入りです。
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■『常岡さん、人質になる』
(絵・にしかわたく 文・岡本まーこ 常岡浩介/エンターブレイン)
定価1,050円(本体1,000円+税)……1冊
常岡さんが、アフガニスタンで人質になったときの話がマンガ化されたのがこの本。アフガニスタン情勢に知識がなくても、おおまかな流れがわかるのがマンガの素晴らしさです。常岡さんは、通称「ギャルハウス」と呼ばれる家で、5人の人間と2匹の猫と一緒に暮らしているそうです。著者であるフリーライターの岡本まーこさんは同居人の一人。ちなみに、マンガを描いているにしかわさんは、ロゼッタストーンの電子書籍『セロ弾きのゴーシュ』の絵を手掛けてくれた人でもあります。アフガニスタンで人質になったとき、常岡さんが「絶対に身代金を払わないように」と言っているのを聞いて私は感動したのですが、この本では、そういう硬派なイメージとはまったく違う普段の常岡さんが描写されています。イメージは崩れましたが(笑)、ますます応援したくなりました。
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■『まーこと裁判所へ行こう』
(絵・にしかわたく 文・岡本まーこ/エンターブレイン)
定価1,050円(本体1,000円+税)……1冊
上の本と同じ、にしかわ・岡本コンビで描かれた裁判傍聴体験マンガ。私は常々一度裁判を傍聴してみたいと思いつつ、日頃の生活に追われてなかなか実現できないでいるのですが、裁判傍聴というのはハマる人にとっては、やみつきになるもののようです。テレビドラマと違って、現実に起きたことだから、よけいに興味をそそられるのかもしれません。悲しかったのは、「刑務所に入りたい」と放火をした80代半ばの男性の話。初犯は50年以上前で、これまで刑務所で過ごした時間は28年半。ほとんど仕事をしたこともないという彼は、3年半の実刑判決を受けて露骨に嬉しそうだったとか。行き場のない人にとっては、シャバよりも刑務所のほうが居心地がいいという現実。なんとかならないものでしょうか。
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■『「権力」に操られる検察』
(三井環/双葉新書)
定価860円(本体819円+税)……1冊 サイン本
■『ある検事の告発』
(三井環/双葉新書)
定価880円(本体838円+税)……1冊 サイン本
かつて大阪高検公安部長という要職にありながら、検察の裏金問題を実名でテレビ朝日「ザ・スクープ」に告発しようとした矢先に特捜部に逮捕されてしまった三井氏の本。当時も検察の口封じ逮捕ではないかという声があったけれど、村木事件などで特捜部の実態が明らかになった今となっては、やっぱり「口封じ」だったんだろうなあ…と思わざるを得ません。『ある検事の告発』では、三井氏自身が、どんな状況で逮捕されたのかが描かれ、『「権力」に操られる検察』では、「鈴木宗男事件」「日歯連事件」「朝鮮総連ビル詐欺事件」「小沢一郎事件」「郵便不正事件」の5つの特捜事件の闇を、元検事として解説しています。郵便不正で無罪になった村木さんの事件も、小沢一郎氏の事件も、鈴木宗男氏の事件も、日歯連や朝鮮総連ビルの事件も、三井氏の事件も、根っこは一緒なのかもしれません。いざとなったら、どんな罪をつくってでも逮捕してしまう検察。国民の信頼を取り戻すために、改革が急がれます。
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■『記者会見ゲリラ戦記』
(畠山理仁/扶桑社新書)
定価798円(本体760円+税)……1冊 サイン本
フリーライターの畠山氏は、政府等が開く記者会見を大手メディアでつくる記者クラブだけでなく、フリーランスの記者にも開放せよ…という主張をずっと続けています。畠山氏は、アメリカでヒラリー・クリントンの選挙を取材したとき、お土産に買ったクリントン大統領のマスクをカバンに入れていたのを警備の男性に見つかりました。男性は「会場内では絶対マスクを被ってくれるなよ。ビル・クリントンは大統領だ。もし、お前が会場内でマスクを被ったら…俺たちはヒラリーよりも大統領、つまりお前を守らなくちゃいけなくなる」とジョークを飛ばしたとか。ふざけたマスクを持ちこんだ怪しい男にさえ、自由な取材活動を許してくれるアメリカと比較し、畠山氏は日本の記者会見の閉鎖性を嘆いています。記者クラブ制度について、フリー記者の視点を知るのには、最適の本。最近になって少しずつ会見にフリーランスが参加できるようになってきたのは、愚直に記者会見開放を訴え続けてきた畠山氏の功績が大きいと思います。
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■『ピカレスク』
(猪瀬直樹/文春文庫)
定価780円(本体743円+税)……1冊 サイン本
現在、東京都副知事として精力的に働いている猪瀬氏が太宰治の生涯を描いた力作。著者はあとがきで「死のうとする太宰治ではなく、生きようとする太宰治を描きたかった」と書いています。私が思い描いていた太宰像は、この本によってかなり修正されました。一種の謎解きになっているのも、この本の魅力。太宰の遺書の下書きには「みんな、いやしい欲張りばかり。井伏さんは悪人です」と書かれていたそうです。なぜ太宰はそんなことを書いたのか。太宰治と井伏鱒二の長年の交流を、猪瀬氏は丹念にたどっていきます。当時(2000年発刊)はいまよりもはるかに時間があったのでしょう。その緻密な取材に驚きます。井伏鱒二の『黒い雨』に関するエピソードも興味深いものでした。私が読んだ猪瀬氏の本のなかでは、これがベスト1(かなり個人の好みが入っています)。
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