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第104回『ウイスキーと2人の花嫁』

時は第2次世界大戦中のこと。ドイツ軍によるロンドン空襲が激しさを増し、“命の水”であるウイスキーの配給が止められたスコットランドのトディー島では住民の誰もが意気消沈していた。島の郵便局長ジョセフ(グレゴール・フィッシャー)には、長女ペギー(ナオミ・バトリック)と次女カトリーナ(エリー・ケンドリック)の二人の娘がいて、それぞれが恋人との結婚を望んでいたが、ウイスキーなしの婚約、結婚の儀式はあり得ないと反対される。そんな中、5万ケースものウイスキーを積んだニューヨーク行きの貨物船が、島の近くで座礁する事件が発生。これを神様からの贈り物だと考えた島民たちは、「ウイスキー救出作戦」を開始するが…。

1941年に実際に起きたSSポリティシャン号座礁事件を題材にした小説を映画化した伝説のコメディ「WHISKY GALORE!」(1949年製作)のリメイク。

一言、非常に好みのタイプの映画です。

作品のカギを握るのが、スコットランドの人たちの“命の水”であるウイスキー。

ぼくはウイスキーをめったに飲むことはなく、何年も飲んでいないにも関わらず、鑑賞後には「ウイスキーが飲みたい!」と心底思いました。

それは、ウイスキーがアルコール飲料という存在をはるかに超えたもの=幸せの象徴であることを感じさせられたからです。

楽しさ、ハッピーな空気の中心にウイスキーがいる。
おそらく、ウイスキーを一度も飲んだことがない人もかなり心惹かれると思います。

主人公である郵便局の父娘を軸とした島民が皆、非常にいい味を出してウイスキーと協力して作品の魅力を高めているように感じます。本当に、すごく楽しかった。

何より、第2次世界大戦中のスコットランドで起きた実話が元になっているわけですから、本来、戦時中のお話です。
しかし、一般にイメージされるような戦争的悲惨さは一切なく、戦闘シーンもありません。

島の人々が必死さが巻き起こすユーモアっぷりが、この映画の持ち味であり、イギリスらしさ、といえるかなと思います。
小さな田舎の島で暮らす人々の人生が、ここにあります。

また個人的には、伝統的民族楽器であるバグパイプが好きなので、要所に出てくる音楽にノリノリにさせられましたよ(笑)サントラが欲しくなります。もちろん原作(日本未公開)も!

バグパイプの演奏にあわせ、スコットランドの美しい風景が広がる…そして、人々の笑顔がある。そんな一場面だけでも嬉しい時間です。

『グッバイ・モロッコ』のギリーズ・マッキノン監督がおくる渾身の傑作、ぜひお楽しみください!


『ウイスキーと2人の花嫁』
2018年2月17日より公開中
■公式サイト
http://www.synca.jp/whisky

2018.4.5 掲載

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