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第106回『father カンボジアへ幸せを届けた ゴッちゃん神父の物語

カンボジア難民の子ども14人を里子として引き取り育て、カンボジアに19もの学校を建設するなど、長年に渡ってカンボジア支援を続けてきた異色のカトリック神父・後藤文雄氏。本作は、2015年8月、撮影当時86歳の後藤氏が、人生最後の旅になるかもしれないと訪れたカンボジアへの旅路を中心に、故郷・新潟県長岡市への旅、東京での司牧生活などを2年がかりで記録したドキュメンタリー映画。国境も宗教も越えて活動し続ける、人生という名の“巡礼”の旅とは…。

まず、これは、一人でも多くの人に見てほしい作品です。

これほどの物語は、そうそうありません。
「事実は小説よりも奇なり」という言葉が、この上なく当てはまる映画です。

だからといって、派手なわけでも、目立つものでもない。むしろ、地味。地道。でも、穏やかな明るさに満ちている。
究極のシンプルだからこそ、見る者、一人一人の心に何かが喚起されるんですよね。

幸せとは何か?
家族とは何か?
平和とは何か?

赦すこと、償うこと。

説教や訓示めいたことが語られるわけでもないのに、ふと、あなたの中に、いろいろなテーマが湧き上がるはずです。

また、本作は“ゴッちゃん”こと、後藤神父の人生が大きな幹ですが、そこから広がる世界も底知れません。

たとえば、ゴッちゃん神父の人生を通じて、日本の戦中、戦後、そして今を見る。たとえば、カンボジアからの里子の人生を通じて、ポルポト政権下のカンボジア、そして今を見る。遠く離れた2つの国の歴史と人とが交差する。

シンプルな作品の中に込められたものの奥深さに、ぼくはまだ気づけていないことも、たくさんあるはずです。

また、出演者の言葉1つ1つに重みがあります。決して饒舌でも、巧みでもないその言葉から、伝わるものの大きさ。
“フェイクニュース”に代表されるように、今までにないほど言葉が軽く扱われる今の時代、その在り方をも考えさせられます。

うーん、本作を見て思ったことを語り出したら、キリがないですね(笑)

カンボジアに興味があろうとなかろうと、関係ない。
本作の中に描かれているのは、自分には無関係の遠い国の話ではありません。ぼくら、誰もに関係あることです。
これを見たことで人生が変わる人も、きっといる。

いろいろな意味で、いろいろな視点で、ぜひとも見てほしい名作です!


『father カンボジアへ幸せを届けた ゴッちゃん神父の物語』
2018年4月7日より公開中
■公式サイト
http://father.espace-sarou.com/

2018.6.1 掲載

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