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第10回  「オオカミと石のスープ」

オオカミと石のスープ

「オオカミと石のスープ」(徳間書店)
アナイス・ヴォージュラード作・絵
平岡敦・訳
定価:1,785円(税込)
私的おすすめ年齢 5歳〜
ちょっとした「謎解き」が好きになったら


石のスープ、僕も飲みたい!
えーっと……このくらいの石でいい?(両手に大きな石が!)


さて、大好きなオオカミ本です。
私も息子も、こぶた好きで、オオカミも好き。
「ちょっと変わったオオカミいないかなー」
と思って見つけたのが、この本です。

石のスープって、なんでしょね!

年とったオオカミが、動物の村にやってきます。
みんな、オオカミをみたことがない。

ふくろに入れて、しょっているのは
大きな石。いや、ホントただの普通の石です。

さいしょは、めんどりの家のドアをたたくのです。
不審に思うめんどり。

オオカミは言います。

「こわがらないで、めんどりさん。
わたしはもうとしよりで、歯だって
いっぽんしか、のこっていないんです。
だんろで、すこしあたたまらせてくださいよ。
そうしたら、石のスープをつくってあげましょう」

めんどりは、石のスープって何?
飲んでみたいわ! オオカミもはじめてみるし…。

というわけで、家に入れるのです。

なべに、石を入れて煮ます。
水で、煮るだけなのです。

「あたしはスープにはセロリを入れるのよ」
とめんどり。

「なるほど、セロリを入れればおいしくなりそうだ」
とオオカミ。

こうして、近所のぶたやらあひるやらうまやらがやってきて、
好きな野菜を入れるともっとおいしくなる!
と、どんどん野菜を入れ、
おいしいスープをみんなで楽しくいただくのでありました。

あかずきんなど、いろんなおはなしに出てくる
悪役、オオカミ。

晩年は、こんなふうに過ごしているのね!と
思いをめぐらしたりして。


でもね、悪役のオオカミですが、
石のスープは、決してだましてなんかいないんです。

こわいものみたさで家にいれ、
おせっかいにいろいろ口出すめんどり。
まるで、どっかによくいる
ニッポンのオバちゃんみたいです。

だますんじゃなくて、とんちんかんな善意を
オオカミは「そうだね」、とうながすだけ。

そんなずるいやりかたで、
結局ただで、うまいスープ飲んだんじゃん!
というむきもありますが、
それは無粋というものでしょう。

動物たちにしてみれば、

・おはなしでしか知らないオオカミに会えた
・めずらしい石のスープというものを味わえた
・それも、みんなで楽しく食べて過ごした

いいことばっかりじゃないですか!

ちょっぴりずるがしこいかもしれない、オオカミ。
でも、だれかが幸せになれたなら、それでいーじゃないか。

きっと、動物たちは死ぬまで、

「オオカミってやつにあったことがあるのよ!」
「めずらしい、石のスープというのを作ってくれたのよ!」
「これがまた、おいしくてねえ」
「オオカミって、会ってみるといい人なのよ」

と、いろんな人に言い続けることでしょう。
あ、よくいる、普通の日本人みたいですね!

わたしも、だまされるなら、こんなふうに幸せな
だまされかたがしたいなあと思う、小市民なのでした。
そして仮に、人をだますならこんなだましかたがしたいと。


ラスト。 オオカミは、
最初から最後まで
ひとつも笑わず出て行くのですが、
でも、オオカミも幸せな気持ちだったのだろうと思うのです。
動物たちは、石のスープで遅くまでたのしい晩餐を過ごしたんだから。

だましたとしても、人に喜ばれて、いやな気分の人はいないと思うから。

2006.7.18 掲載

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