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第95回 シルヴェスター・リーヴァイさん茶話会会見
世界トップのミュージカル作者

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シルヴェスター・リーヴァイさん

「マリー・アントワネット」、「レディ・ベス」、「エリザベート」など盟友ミヒャエル・クンツェ(脚本・作詞)との絶妙のコンビでミュージカルの世界的ヒット・メーカーであるシルヴェスター・リーヴァイ氏(作曲・編曲)が、韓国での「マリー・アントワネット」初演と帝国劇場での「モーツァルト!」再演の機会にこのほど来日した。

「私の父はジャーナリストだったので、このプレス・クラブで内外のジャーナリストと話すのはとても嬉しい」。司会のルーシー・バーミンガムさんが彼を紹介するのに「リーヴァイ」でなく英米読みの「リーヴェイ」と何度も言い間違えるのを「私はハリウッドでも仕事をしているのでリーヴェイでも結構」と気さくに微笑み、会場を和ませた。確かに彼はジョージ・ルーカスやスティーヴン・スピルバークなど映画界の巨人たちとも作曲家として仕事をしている。

また、このミュージカル界の大物は言語の変更にも臨機応変に対応し、取材者たちを安心させた。最初は「ドイツ語−逐次日本語通訳」で設定した会見は、プレス・クラブの公用語が英語であり英語の方が取材者にとって便利だとわかると英語に変更。お蔭で質疑応答がスピーディになった。

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左より、司会のL・バーミンガムさん、通訳、池田篤郎さん(東宝株式会社取締役演劇担当)、
S・リーヴァイさん、筆者、松田和彦さん(東宝株式会社演劇部国際室長)

リーヴァイ氏は、モーツアルトの人柄と音楽を理解するため100冊近くの参考書籍を読んだという。更に、リーヴァイ夫人のモニカさんが行間を読んで文章の裏の意味までも夫のために掘り下げてくれた、と話した。客席に座っていた夫人は終始ニコニコ微笑みながら夫の話に頷いていた。

「盟友のクンツェ氏はまさに天才で、彼の脚本を読んだ時には思わず感動して泣いてしまった」。「日本、韓国とヨーロッパの観客の違いは、日本も韓国も演技が終わってから大拍手するが、ウイーンでは一曲ごとに拍手してくる」。


会場からの質問に答えて

「日本とは俳優、オーケストラ・メンバーとも18年来の交際があるので安心。韓国とは新しいが勤労意欲はともに誠実で、修正個所があれば徹夜してでも仕事を完成させる。ただ韓国は感傷的な音楽を好むが、会話は大声で強烈。ワインが飲みたくなり酒屋で『シャブリ』と注文すると日本では静かにボトルを持ってくるが、韓国では『シャブリ!』と大声で足を踏み鳴らして怒鳴る」
  リーヴァイ氏はヘッド・テーブルの下で足をドラマティックに踏み鳴らし、同席者に地震が起きたのかと驚かした。

「日本をテーマにしたミュージカルの創作は? 紫式部の源氏物語などは?」
  「(国際室長の)松田和彦さんとこの18年間相談しているが、日本の音楽を誤った方法では使いたくない。将来的には文化の違いを超える方法を見つけたい」


筆者からの最後の質問

「日本では永遠のモーツァルト役と考えられている井上芳雄さんがこの公演を最後とすると宣言されているが?」
  「最後とは思わない。彼からその話をウイーンで聞いたときには、作者らしくフーンと聞き流しただけだ。ヨシオはウィーンまで私に会いに来てくれた。彼はファンタスティックなアーティストだ」

プレス・クラブではシルヴェスター・リーヴァイ氏の初訪問を記念して、川口総料理長が通常の茶菓ではなくウインナ・コーヒーと特製のケーキを用意した。

また、この会見に先立ち、東宝演劇担当取締役の池田篤郎氏が、遠藤周作原作、東宝制作、リーヴァイ・クンツェ創作のミュージカル「マリー・アントワネット」は日韓文化交流の一環としてソウルでロングラン公演されていることを報告した。

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池田篤郎さんが「マリー・アントワネット」の韓国公演を説明

2014.12.26 掲載


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