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第117回 東北-函館プレス・ツアー

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函館の五稜郭タワーより五稜郭を眺める。

北海道新幹線 新青森-新函館間の開通を機会に、(公)日本外国特派員協会では国土省観光庁の協力を得て10月31日より11月2日まで青森―函館の空と陸からのプレス・ツアーを行った。参加者はヨルダン、デンマーク、中国、イタリア、アメリカ-ドイツ(両国のメディアに出稿)、日本の7か国6名の記者で、晩秋から初冬にかけての東北と函館の取材を行った。

特派員にとって東京におればグローバル・スタンダードで、ニューヨークやロンドンで生活するのと感覚的にあまり変わらない。ところが東北に旅すると「日本発見」があり、日本人記者にとっては古き良き昔への郷愁が偲ばれる旅となった。


なまはげと対面

秋田空港から秋田自動車道、なまはげラインを経てなまはげ館に到着。館では色彩豊かな「なまはげ人形」の展示に加えて、隣接する古民家(男鹿真山伝承館)での「なまはげ」実演がある。秋田方言での対話なので日本人でも分かりにくいが、そこは「おもてなし精神」豊かな東北、山から下りてきた「なまはげ」と主人の対話の英語訳が配られる。

年に一度、お正月に山から下りてきた鬼が酒肴のもてなしを受けて家庭での躾や勤勉を強要する寸劇は、デンマークやイタリア人の記者には物珍しく、熱心にスチルやビデオ・カメラを回していた。「ヨーロッパではサンタがやって来て子どもたちにプレゼントをくれるのだが、日本では反対に饗応されるのが文化の違いだ」。

【秋田・なまはげ館に隣接する男鹿真山伝承館の写真】

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宿の不老ふ死温泉は波打ち際に設けられた露天風呂から日本海の最高の夕焼け空が眺められるのが最大の売り。仲間内の記者に宣伝してツアー参加を呼びかけたのだが、生憎の荒天。当日は海水が混浴、女性用両方の温泉にかぶさり、使用禁止。翌日も雨天のため露天風呂は荒れ模様で「晴子さんもたまには雨女になるネ」とジョークの的にされてしまった。

この宿での一番の問題は雷のためWi-Fiが使用できなくなったこと。連日締め切りのあるイタリア人記者にアテンドのJTB職員が自分用のルーターを提供してくれたのだが、これもNG。最終的には携帯で送稿することになり送信料金が膨大になってしまった。観光客倍増をうたうなら、東北の宿でもWi-Fiの整備は最低必須条件だろう。


白神山地・十二湖

2日目のユネスコ日本自然遺産の白神山地、十二湖のブナ林のマタギをガイドにしての散策は、参加記者全員が大満足だった。前日の10月31日に季節初めての雪が降り、峰々の雪と赤黄色に染まった木々、インクを流したような青池、晩秋と初冬の色彩の饗宴に米人記者は日本にはこんな美しい自然が残っているのかと驚嘆していた。

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晩秋と初冬の十二湖。峰には初雪が。

砂漠地帯ヨルダン・メディアのレバノン人記者は「小雨のトレッキング」が気にいったらしく、グループから先行して紅葉や淡水繁殖の大型魚「イトウ」撮影に夢中だった。75歳の猟師はこれまで50頭の熊を仕留めた、と自慢して記者たち一人一人に証拠写真を見せるのも一興だった。

[白神山地・十二湖の写真]



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陸路長時間バスで移動中のご愛敬は「世界遺産活動 特別大使“犬”(ワンバサダー)わさお」訪問で、国道101鰺ケ沢の街道筋にある七里長浜きくや商店では、看板犬として「ぶさ可愛さ」を堅持していた。日本の家族向けのテレビ番組に2度も取り上げられたというので、記者たちも「わさお」を熱心に観察していた。

【青森・ぶさかわ犬「わさお」の写真】

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東北青森自動車道を経て青森に入り「ねぶたの家 ワラッセ」では巨大なねぶたに記者一同圧倒された。上海からの記者は2階からしか全貌が眺められない巨大なワラッセが制作費に200万円から300万円。毎年これが8月のねぶた祭りには20台以上も連なって200万人の観光客を楽しませると聞いて盛んに自分撮影(自撮り)していた。来年は彼女の読者が上海から団体旅行で「跳人(はねと)」(即興での踊り子)にやってくるのではなかろうか?

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ねぶた「夷族と九郎義経」

はやぶさ

3日目はいよいよ新青森駅から新函館駅まで新幹線列車「はやぶさ」。瀟洒なスリム・ラインの列車がホームに入ってくると、記者たちのカメラの列が待ち構えた。車内、車窓の洗練さに加えて、なんと全車両に温座、温水シャワー・トイレが設置。他の新幹線では一部車両にしかない快適さに添乗員の女性たちも「外国人に日本の清潔感覚がアピールできる」と感激していた。

お昼に到着した函館では、昼なのに開いている「朝市」取材。イカ釣りでは上海からの記者が見事に釣り上げた大型のイカをそのまま焼上げてもらって一同がムシャムシャ。イカの値段は当日の相場次第であり、普段は800円から1000円のものが荒天で不良のため1600円の高値だった。

外国人グループが揃ってイカの串刺しを食べる姿は珍しいらしく、取材と反対に観光客の携帯カメラで撮影されることとなった。

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函館朝市で「イカ釣り」

函館の夕映え

函館は日本最初の国際港だったため教会が多く原存し、独特のロマンチックな雰囲気を残している。カソリック国のイタリアから来た記者はハリストス正教会、函館聖ヨハネ教会など教会の内外の撮影に息を切らしていた。筆者は函館港で同志社大学校祖、新島襄先生の密脱国記念像に立ち寄れる時間が出来て安堵したものだった。

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脱国を目指す若き日の新島襄像と

不老ふ死温泉では見損なったが、函館山頂上から眺める壮厳な北海道の夕焼けが東北-函館プレスツアーのフィナーレとなった。

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函館の夕映え

2016.11.28 掲載


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