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第154回 森氏女性差別発言と女性役員30%を求めるメディア労組

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女性役員30%を求めるメディア各界代表。
左より、松元ちえ氏(メディアで働く女性ネットワーク世話人)、酒井かをり氏(日本出版労連中央執行委員長)、吉永磨美氏(日本新聞労連中央執行委員長)、岸田花子氏(民放労連女性協議会副議長)

二つの潮流が同時期に起こっているようだ。

女性役員30%を求めるメディア労組代表たちが、昨年12月1日に厚労省に出した文書に返事を受けたのは、森喜朗東京オリ・パラ組織委員会会長の女性差別発言と、その後の対応批判の嵐の中。日本の「メディアと女性」の現状は、ついに国際標準に向かうか? 

日本外国特派員協会では至急2月10日、メディア労組代表たちを記者会見に招いた。


労組代表オール女性

従来、経営側と同様に労働組合側も幹部は男性で占められていたが、今回登壇した労組代表はオール女性。外国メディアは「組合側からは経営側へ昇進できなくなったから、男性が(組合職を)敬遠するようになった」と皮肉るが、女性ジャーナリストたちが労使交渉の決定権を持つのは前進である。

「女性が多く入っている理事会は時間が掛かる」という森差別発言にオリ・パラ評議会で迎合するような笑い声が起こり、男性社会での生き方を「わきまえている」女性を歓迎する本音が日本社会に根強く存在している。明らかにメディアにも責任がある。女性役員は無に等しい。民放連45人中ゼロ、日本新聞協会53人中ゼロ。出版協会は40人中女性2人、雑誌出版協会は21人中たった1人。

労組代表たちは新聞の読者、テレビの視聴者のおよそ半数が女性であることを鑑み、メディア企業各社にジェンダー平等委員会を設けて今年4月までに特別クオータ枠を設置、役員・マネージャーの30%を女性にするよう求めていた。

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司会 イルガン・ユルマーズ氏(ダイヴァーシティ共同委員長/右端)

メディアとジェンダーは、特派員協会にとっては古くて新しい話題なので気軽な質問が続いた。

ピオ・デミリア(イタリア スカイTV)「女性陣がストを決行したら?」
カルドン・アズハリ(シリア パン オリエント ニュース)「大使との真面目なインタビューの裏にポルノ写真が載っている。外交問題ではないか?」

筆者は数字の報告中心では飽き足らず、講演者個人が組織の代表という立場だけでなく、個人的にどう問題に取り組んでいるのか尋ねてみた。

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講演者の見識と覚悟を質問する筆者

新聞労連の吉永磨美委員長は、辞めた同僚が「女性が6割、7割の新聞なら戻ってきたい」と言った例を挙げて、「女性中心の新聞を興したい」と言った。かって毎日新聞のヴェテラン記者、増田れい子さんが月一で発行していた「女のしんぶん」をイメージしているのだろうか?

出版労連の酒井かをり委員長は、「女性編集者がファッション誌を“かわいい女性”から自立した女性向けに作るようになった」と答えた。

新しい時代の「風」を受けて、女性ジャーナリストの「個人」の見識と「スマートな連携」が進行してきているという印象を受けた。

2021.2.16 掲載


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