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第91回 通し稽古


10月8日 日曜日

あまりにも冷えるので腹巻き購入。午後、偏頭痛がする。寒気と生あくびも連発。
  頑張って夕方からの美術打ち合わせに湊座にいくが、名物の湊座バーガー(ふだんは美味しいことこの上ない極上バーガー)の油臭がまとわりつき倒れそう。
  結局打ち合わせは宿舎ですることに。
  美術のアオヤマさんに、小道具に使うリヤカーは出演者の一人ぐらいと思って作って欲しい、と伝える。
  打ち合わせ後、そのままダウン。夜は演出家抜きの自主稽古にしてもらう。
  この日、北朝鮮が核実験をしたらしい。

10月9日 月曜日

核実験の話題でマスコミは一色らしい。らしいと書いたのは、テレビ゙も新聞もないので、よくわからないからで、近所(徒歩で10分くらい)のコンビニでいろいろと知った。
  昨日の偏頭痛はどうやら治まったらしい。よかった。
  夕方、宿泊所近くの神社で地元のお祭りがあった。プラプラと一人で散歩がてら行ってみる。
  入り口の小川にライトアップされた帆船が浮かんでいる。鳥居をくぐり、太鼓橋を渡ると幅の狭い石の階段。そこを登っていくと境内に出る。なんともいえない風情のある風景だ。
  と思っていたところに、風景とは不釣り合いな音楽が。なんと境内の一角の舞台の上で、高校生くらいの女の子が二人、ハデ目の衣装を身にまとい、パラパラ踊りが繰り広げられているではないか。
  これでは情緒もへったくれもない。なんだか暗くなる。

10月10日 火曜日

夜、舞台監督さんらと美術に関する打ち合わせ。主に小屋全体に張りめぐらす大漁旗について。その大きさや数量など。
  もちろん地元の方々の応援なしでは無理な話。なんとか交渉していただくことに。

10月11日 水曜日

仮設小屋に網目状のブルーシートと、劇中で使うスクリーンが張られた。ちょっとした映画館だ。
  でも、この網目状のブルーシート、防寒性はまったくない。四方網戸に囲まれた家に住んでいるようなもので、寒いことこの上ない。本番は11月、客が寒さに耐えきれるかどうか心配だ。
  映写実験で舞台監督が持っていたボブ・ディランのDVDを流してみる。三國の湊町に突如現れたボブ・ディラン。なんだか感動的ですらある。
  この日、舞台監督の命名でこの仮設小屋に「ブルーハウスシアター」という名前が刻まれた。
  空間構成のオオマチさんが大漁旗を試作的に並べる。大小様々な鮮やかな大漁旗群。なんとも壮観である。

10月12日 木曜日

この日、舞台監督のたっての御願いで、芝居を通すことする。「芝居を通す」とは、頭からケツまで止めずに芝居を流してみることだ。ふつうこれは、芝居がある程度固まってからやるもの。今の状態で演るのは危険きわまりない。役者が中途半端な状態で「通し」をすると、中途半端なまま芝居を固めていきそうになるからだ。
  でも仕方がない。芝居全体像を早めに掴みたいと言われれば、演るしかない。とにかく「通し」を敢行。思った通り、惨敗。すっかり落ち込む。
  稽古後、福井新聞の取材。落ち込んでいるため、何を喋っても覇気がない。がっかり。
  夜、舞台監督から、芝居のダメ出しを受ける。
  「だから、まだ芝居はできていないんだよ!!!」と心の中で叫ぶも、ジッと聞く。腹が立ち、また落ち込む。

10月13日 金曜日

今回は芝居で映像を使う。僕は基本的に芝居で映像を使うのは否定的だったのだが、今回は映像でしか語ることができない事実の重みが欲しかったので初めての使用。
  映像制作のダイザブロウくんとも初めての仕事。ダイザブロウくんはアニメーション作家。その感性を買っての起用。
  送られてきた映像はいい感じのデキ。三カ所の細かい修正以外は問題なし。こういった才能あるスタッフとの出会いもモノヅクリの面白さだ。すこぶる気分がいい。
  稽古後、大漁旗張りとラストシーンに降らせる雪の実験。
  雪がよくない。もっと怖いぐらいの猛吹雪が欲しいのに、頑張っても桜吹雪の感じしかでない。ラストの演出プランを見つめ直すことに。

10月14日 土曜日

今日から仮設小屋での稽古が始まった。これから稽古も本番もこの場所でやることになる。神社でお清めした御神酒と御塩を丁寧に撒く。

10月15日 日曜日

三國スタッフが初めて全員集合した。みんな稽古場にいる緊張感がいささか希薄。こういうところにも、意識の差が出てしまう。
  現場に緊張感がないと、必ずや怪我をする。僕は先輩達からそう教わった。みんな、もっと緊張感を持ってほしい。
  舞台監督のエビサワ氏もみんなに言ってくれた。
  「舞台は神聖な場所です、それを絶対に忘れないで下さい!!」
  ありがとう、エビサワ男爵。
  この日、アオヤマさん製作のリヤカー初登場。4人目の出演者だ。いくつか修正点はあるものの、まあまあ満足。

10月16日 月曜日

三國で初めての稽古休み。車を飛ばして、福井の鰻屋へ行く。注文すると、水槽から鰻を掴み、目の前で捌いて調理してくれる、美味い!
  ユニクロで防寒の対策の靴下と股引、アウトドアショップで釣り用の暖かカーゴパンツを買う。
  布団乾燥機も購入したかったのだが、価格がすべて1万円以上する。東京のドンキでは3千円台で売っていたのに・・・。乾燥機は断念。
  東京から持ってきた本を読んでしまったので、福井の本屋で水木しげる「のんのんばばあとオレ」、北夫トロ「裁判長!ここは懲役四年でどうですか」、テリー伊藤・佐高信「お笑い創価学会」、購入。
  夜、ラストシーンの変更についてプロデューサーと打ち合わせ。ラストに雪を降らせるのをやめて、大漁旗の幕があがると、子供がたくさん歩いている。みんなお祭りの帰りなのか、手には提灯をぶら下げている。その情緒の中を死んだ主人公達が去っていく。そんなイメージを提案するが、子供が集まらないと言うことで却下される。また考えないと・・・。

10月17日 火曜日

この日も新聞社の取材。
  取材は稽古後にと言ってあるのに、稽古中に役者に取材をする。役者が集中できなくて非常に困る。腹が立つより、取材する人間の意識の低さに情けなくなる。

10月18日 水曜日

三國に来て約半月が経過した。心身共に正直言ってシンドイ。早く帰りたいと思う。

10月19日 木曜日

ラストシーン、子供の代わりに、お祭り男を10?15人に揃えられないかプロデューサーに打診する。
  この日、小屋内の大漁旗が張り終わる。連日の徹夜続きで、オオマチさんはじめ三國スタッフは疲労困憊。お疲れ様。

10月20日 金曜日

東京チーム、舞台監督のエビサワさん・照明のサトウさん&クシダさん・衣装&メイクのハヤカワさん、車で深夜の東名をぶっ飛ばし、早朝三國到着。昼間、東京チームのための通し稽古。
  そこへ大雨が急に降ってくる。雨が小屋内に吹き込み、大漁旗も舞台もびしょ濡れ。もうたいへんな騒ぎ。
  雨が小降りになるのを待ち、スタッフ総出で修復作業。でも、雨対策の予行演習にはなった。
  大漁旗でもっと隙間を埋めないと、雨が吹き込んでくる。オオマチさんに御願いをして、もう一度張り直してもらうことに。せっかく徹夜で張ったのに申し訳ない。頭が下がる。
  深夜、照明の仕込み&シュート(照明に明かりを入れること)。照明プランナーのサトウさんのスケジュールのため、この日に照明の仕込みをしなくてはならないのだ。
  プロデューサーより、昨日の案、祭り男10人は集められないと言われる。仕方がない、人を出すのはやめよう。ラストはなにもないところにお祭り提灯だけにしようかとぼんやり思う。
  しかし、ラストが決まっていないのに、照明を仕込まなくていけないなんて・・・。はぁー・・・、こんな困難な現場はホント初めてである。
  明日は照明の明かり合わせ。今日の通しのデキも悪かった。全スタッフから、こんな芝居に関わりたくねぇよ、という声が聞こえてきそうだ。自分の才能のなさに、つくづく嫌気がさす。

         
つづく(この三國でのお話は次回で最終回の予定です)

■演劇公演「寿歌(ほぎうた)」 の詳細はこちらをご覧ください。
http://www.mikuni-minato.jp/home/pj/play/2006hogiuta.html

2006.11.15 掲載

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