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ミュージカル「ビューティフル」

シアター通よりシアター好き

渡辺晴子
著者プロフィールバックナンバー

オープニングはたった一人でカーネギー・ホールのピアノに向かうキャロル・キング。フィナーレも同じく一人でピアノに向かう姿。この二つの同じ場面の間に、作詞家としてシンガー・ソング・ライターとして生きた一人の女性の半世紀をジューク・ボックスの名曲でつなぐ。

ニール・セダカがデートした同窓生の彼女を唄った“Oh! Carol”、“Be-Bop-A-Lula”。ツイスト、マッシュポテト、カーボーイ…、留学先の大学会館のダンス・フロアを沸かせた曲に乗って金曜夜から土曜朝になるまで踊りあかしていた筆者にとって、実に懐かしい曲の数々。

トランプ大統領によって“Blue States vs Red States”に分断され政治的混乱を極めている今日の米国の現状からみると、1960年代は米国が“Great Society”として輝いていたBeautifulな時代だった。

ミュージカル「ビューティフル」
作曲家としてデビューするキャロル(水樹奈々)

ブルックリン育ちのキャロル(水樹奈々・平原綾香のWキャスト)は二度も飛び級で進学するなど頭脳抜群で、母親ジニー・クライン(剣幸)は音楽教師を勧めるが、本人は16歳でプロデューサーのドニー・カーシュナー(武田真治)に飛び込みで売り込みをかけ作曲家としての道を歩みだす。同じカレッジで学ぶジェリー・ゴフィン(伊礼彼方)と出会い恋に落ちた二人は、作曲家・作詞家としてチームを組み、キャロルの妊娠で二人は結婚。

ミュージカル「ビューティフル」
キャロル(水樹奈々)とジェリー・ゴフィン(伊礼彼方)

“Some Kind of Wonderful”、“Will you Love Me Tomorrow”などのヒットを飛ばす彼らにシュレルズ、ドリフターズなどヴォーカル・グループも争って曲を求め、ついに作詞・作曲のメジャーチームとなる。

なかでも抜群にイカスのは、ベビー・シッターのLittle Evaが唄う“The Loco-Motion”。ソロで歌ってもキュートだし、列車ごっこをしながらコーラスでも歌い踊れるのが楽しい。

ミュージカル「ビューティフル」
リトル・エヴァ(中央)とロコモーション・ダンサーたち

ところがアメリカも60年代後半になるとヴェトナム厭戦気分がひろがり、ボブ・ディランやジョーン・バエズなどのシンガー・ソング・ライターの時代となる。

ヒットを出せない焦りから神経を病むジェリーは浮気を重ね、やがて二人は離婚する。

友人であり好敵手であるシンシア・ワイル(ソニン)とバリー・マン(中川晃教)のコンビとドニーが歌う“You've got a Friend”は傷心のキャロルを暖かく支える曲だ。

作曲家であっても普通の女性として歌手として脚光を浴びることをためらっていた彼女だが、やがて “(You make me feel like) A Natural Woman”で女性としての自立を宣言し、シンガー・ソング・ライターとしカーネギー・ホールの舞台に立つ。開幕前の楽屋にジェリーは彼女のレビューを助けた記念の品をもって駆け付けたのであった。(2020年11月5日~28日 帝国劇場)


2020.11.26 掲載

著者プロフィール
渡辺 晴子(わたなべ はるこ) : HKW、シカゴ・サン・タイムズ、アジア新聞財団(東京支局長)を経て、現在HKW代表メディア・リポート特派員。30年来の(公益社団法人)日本外国特派員協会会員で、副会長、理事、監事、選挙管理委員長を歴任し、現在は永世会員。特別企画委員長としての同協会の取材活動、文化事業を主宰している。また上智大学講師、ユネスコ「女性とメディア」開発コンサルタントとして内外のジャーナリストを育成。
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