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第28回 マジですか?(2)


「真面目(な)」は本来、「真顔」、つまり真剣な顔の意味だったはずである。
  それが「真剣(な)に取り組む態度」、「几帳面(な)」に転じた。ただし、「君は真面目だね。」と言われた時は言外に「君は融通が利かないね」のニュアンスを含むこともあるので気を付けた方がよい。
  いずれも名詞、または名詞+だ(な)=形容動詞の用法である。
  そしてさらに、1970年代位に「(話の内容を)真面目に受け止める」意味で、「マジ」が若者に使われるようになった。「マジ」は話し手の言うことを聞き手が「真面目に受け止める意味」から転じて、「それを本気にしていいですか」、さらに「本気にしますよ」というニュアンスが色濃くなってきた。

ところが、驚くことにこの「マジ」は古くは江戸時代から遊里や芸能の世界では使われていたという記録がある。江戸時代は洒落本など、話し言葉による文学・出版活動が本格的に栄えた時代だ。

・「〜“まじ”にうけ、とんだ事をおめへいふもんだぞ」
(1794年 甘露庵山跡蜂満「一向不通替善運」)
・・・「本当だと受け止める」意味で使っており、現代若者用語と同じである。
(引用文中、“ ” 印は筆者が追加した)

元々は芸能楽屋での隠語だったのである。大衆文化が栄えた江戸時代にあって、粋な言葉として出版物に使われた。それが明治維新後の西洋文化崇拝主義の台頭により、一部業界の楽屋言葉に押しこめられ、鳴りを潜めることになったと思われる。
  それが1970年代以降のマスコミ(主にテレビ)による楽屋言葉露出路線に乗っかり、また若者特有の言葉の短縮化とも相まって、一気に「マジ(ですか?)」が一般化したのだ。

しかし、あの東日本大震災〜福島原発事故のように、ほんとうに「マジですか?」と叫びたいような時に、このように氾濫している「マジですか?」の言葉ではもう用を為さない。言葉の意味のインフレが進行し過ぎてしまった。「マジですか?」に代わる強力な言葉が欲しい。

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[参考文献]
日本大辞典刊行会1990「日本国語大辞典」小学館
松本修2010「お笑い日本語革命」新潮社

2013.2.15 掲載



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