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第45回 写メ(1)


女子会で、料理が運ばれてきて、珍しい料理だったりすると、「あ、写メ撮ろう!」、そして盛り上がってきたところを見計らって、「ねえねえ、お店の人に写メお願いしよう!」、お開きの時には「ばいばぁーい、写メ送るからね。」などと使う。さて、三回出てきた「写メ」の中で意味が違うのはどれでしょう。そう、三回目の「写メ送るからね。」であり、これが「写メ」の原義のはずであり、「写真付メール」のことである。最初の二回の「写メ」は単に写真のことを指してしまっている。

このような言葉の使い方は10年位前からだと思われる。今やケータイの写真機能の性能が向上し、いつでもどこでも手軽に鮮明な写真を撮ることができるようになった。
  スマホともなるとさらに写真機能の性能が向上しており、デジタルカメラの売れ行きにも影響する勢いである。メールに写真を添付して送るというよりも、写真にメールを添付して送る感覚になってしまったのだろう。メール文章無し(いわゆる空(から)メール)で写真(=写メ)を送ってしまうこともあるだろう。そのため、「写メ」が単に写真を表す言葉になってしまっている。

「写メ」が「写真」だけを表すことに変化したということは意味が狭くなったと言える。
  言語学で言う「シネクドキー(提喩=ていゆ)」の一種である。「花見」が普通は「桜の花を見て楽しむこと」を表すのと同様である。
  また、本来メールと隣接した写真の方だけを表すようになったということは「メトニミー(換喩=かんゆ)」の一種であるとも言える。隣接した概念が同時に存在する時に一方で他方を表してしまう技法である。例えば、「ボトルを空ける」と言って、ボトルに入っているウィスキーを飲んでしまうことを表すのと同様である。(この稿、つづく)

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[参考文献]
町田健・籾山洋介(1996)
『日本語教師トレーニングマニュアル3 よくわかる言語学入門』バブルノベルス


2014.7.15 掲載



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