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第47回 「少子化、拉致」を担当する?


毎回の組閣報道の中で、「少子化担当相」「拉致担当相」という表現が気になる。

前者は正式には「少子化問題担当相(大臣)」であるが、後者は「国務大臣(北朝鮮による拉致問題の早期解決を図るため企画立案及び行政各部の所管する事務の調整担当)」という長ったらしいのが正式名称である。

メディアでの表現は見出し文字数の関係で、できるだけ短くした呼称で済ませようとする。
  今回は事前報道で、「山谷氏、拉致担当相に」(朝日新聞)という見出しが目についた。

「担当大臣」には厳密に言うと、「内閣府特命担当大臣」と内閣官房に置かれる「担当大臣」とがある。前者は縦割り行政の弊害をなくす目的で2001年、森喜朗内閣で誕生し、少子化対策担当大臣もこれに含まれる。後者の中に拉致問題のための大臣がいるのだが、その正式名称は前述したように国務大臣の中のカッコ書きである。

特に後者ではメディア報道でいちいちそのまま書くわけにいかない。「問題」、「対策」よりも「担当」の方を重視し、「少子化担当相」、「拉致担当相」、という表現が目立つ。「担当」の方を重視する背景には、あくまでも傍流の大臣であることを強調するニュアンスを感じる。
  筆者が以前勤務していた会社では、部下を持たない管理職の呼称を「担当課長」、「担当部長」としていた。ライン&スタッフ組織のスタッフの方(横串し)を「担当〜」と位置付けていたのだが、ライン上に複数の管理職待遇が在籍している場合も「担当〜」とされていたことを思い出す。つまり、本来は役職呼称である名称が待遇ランク名にも使われていた。

内閣の場合は、省略するなら「担当」を省略し、「少子化対策相」、「拉致問題相」の方がずっと実体を表していると思う。

「対策」、「問題」を省略し、閣僚の氏名一覧に「少子化」、「拉致」とだけ表記されることも多い。しかし、「拉致問題を解決しようとする」担当大臣を「拉致(担当)相」と呼ぶのは如何なものか? まるで、「拉致行動を担当している」かの呼称ではないか? 「少子化相」然り。少子化推進を担当してもらっては困る。

ジャーナリストには言葉を大切にし、論理的におかしい省略をしないでほしい。


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[参考文献]
2014年9月1日 朝日新聞夕刊
マネー辞典m-Words 「担当相(担当大臣)」


2014.9.15 掲載



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