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第51回 燃費(1)


不思議な言葉である。字義通りだと、「燃料にかかる費用」のはずなのだが、その意味で使われることは少ない。もっぱら、「プリウスは燃費がいい」とか、「燃費は16.3km/ℓ」などと使われる。後者の話し言葉では、さらに省略されて「燃費は16.3キロ」となる。
  「○費」と言いながら、単位が円ではなく、体積当たりの距離(km/ℓ)となっていることに違和感がある。

本来は「燃費効率」と呼ぶべきだと思っていたら、最近見たMINI COOPERの広告(*) の16.3km/ℓの注意書きに、

 ・燃料消費率は定められた試験条件のもとでの値です。

とあった。

燃費は燃料消費率の略らしい。そうか、「燃費率」、あるいは「燃率」という略語にしないからおかしいのか? しかし、燃料をいくら消費するかの率は「kmあたり」なのでは。。。と考えると、ますます名称と単位が混乱していることに気づく。

「燃費当たり走行率」、あるいは「走行燃費率」と呼ぶべきだと思うが、それでも単位表記とのずれがある。

人は経済情勢によって変化するガソリン価格のことを気にして燃費、燃費と言っているのだから、本来は160円/ℓというような表記を燃費と呼ぶべきで、走行燃費率を表したいのなら、16.3km/160円/ℓとすべきだと思う。あるいは円あたりを計算して約0.1km/円としてもわかりやすい。。。。が、とは言っても、ガソリンは時価変動するから、車種による性能比較には16.3km/ℓとするしかない。

となると、振り出しに戻るが、「燃料当たり走行距離」と呼ばざるを得ない。百歩譲って、会話での「燃費リッター16キロ」を、まあ許すとしても、少なくとも文書ではきちんと書いてほしい。

(つづく)

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(*) 2014年11月22日付け朝日新聞

2015.1.15 掲載



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