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第86回「3極」


2017年、安倍首相により衆議院解散という伝家の宝刀が抜かれた。それを受けて10月、総選挙が行われるに至るが、野党第一党の民進党は混乱の極みに陥る。
小池百合子(東京都知事)が立ち上げた希望の党に合流するのか、させてもらえるのかで民進党現職は、希望の党公認、立憲民主党、無所属としての立候補に分裂した。

マスコミは、政党間提携や棲み分けを、

  • 自民党、公明党
  • 希望の党、維新の党
  • 立憲民主党、社民党、共産党

の「3極(きょく)」と表現した。
以前も聞いたことがある言葉に似ている。

5年前には新しい野党群に「第三極」という言葉が使われ、このエッセイでも「あっと前に消え去った新語」として採り上げた。(第3435回
「第三極」は英語で言うとサード・パーティー(third party)といったニュアンスに近いと思っていたが、今回の「3極」は対等感がある。古い人間は政治の世界で「極」の字を見ると、極左、極右のような過激組織を思い浮かべてしまうが、若い世代~と言っても50代以下~にそんなことを思う人はいない。

「3極」を聞いた時、全く新しい言葉という感があったが、そう言えば電気の専門用語で「3極」があった。「極」の原義は「最も高いところ、最も端のところ」で、端の意味の方から転義して電極を表すようになったと言える。

ところが今回の「3極」は思想にそれほどの違いはなく、「3極」は単に「3グループ」程度の意味でしかなかった。特に希望の党の政策は抽象的で、立候補者の力量も未知数で、擁立数の割には議席を取れなかった。
果たして、政治用語としての「3極」も見事に短期間で退場の憂き目に遭ったのだ。

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2017.12.15 掲載



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