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第66回 「子どもに必ず伝わっていてほしいこと」について

皆さんこんにちは。今回も連載をご覧下さりありがとうございます。
  今年は明治31年(1898)に気象庁が平均気温の統計を取り始めて以来、最高の暑さとなりました。真夏の部活動や9月前半の猛暑日中、運動会・体育祭の練習で体調を崩したお子さんも多いのではないでしょうか。

ですが、特に関東から西では、「暑さ寒さも彼岸まで」のことわざ通り、本格的な秋がやってきました。この寒暖の差で体調を崩すお子さんも既に出ており、発熱で欠席したり、マスクをして登校する者も目に付きます。栄養、睡眠、休息のバランスの良い生活を送れるよう、親子揃ってお考えいただけますようお願い致します。

* * * * *

今回は「子どもに必ず伝わっていてほしいこと」について考えます。第27回28回連載も、併せてご参照お願い致します。

まず、根本的に伝わっていなければならないことは、「大事に思っている、愛している」というメッセージです。幼い頃なら、ためらいなくできたはずのハグや頬ずりなどですが、思春期はしにくくなると思います。また、思春期になれば、親子で意見の対立やすれ違いなども起こるのが当然でしょう。

だからこそ、この時期には、「大事に思っている」ことがお子さんに伝わっていることが肝心なのです。大事に思われていない、とお子さんが自分で思い込んでしまうと、何事も投げやりになったり、家庭に帰ってこなくなり、それをきっかけに非行に走ったりする、などのことが起こりえます。

のべつまくなしに言う必要はありません。メールなどで工夫して伝えていただきたいです。文面の最初か最後に「大事な○○へ」などとつける、といった形です。突然始めるとお子さんから見て唐突で、場合によっては逆効果ですので、誕生日やスポーツの大きな試合、習い事の発表会や、テスト前などのきっかけからで良いと思います。

そして、「大事なので、良いことも悪いことも正しく伝える」という信念を持ち、「親はそういう姿勢である」ことを、お子さんに折に触れ伝えて下さい

第64回連載でも触れましたが、悪いことが改善できねば、社会で通用しないことを子どもに理解させる必要があります。一度で理解するように仕向けるのではなく、生活態度や学校での様子などを見ながら、折に触れて話していきます。

理解できていない場合、たとえば、保護者の前ではおとなしくしていて、学校で態度が悪い、という行動で現れます。男女問わず、「家が厳しいから学校で発散する」生徒がいるのですが、これは親から子どもへの「大事なので注意する」というメッセージが正しく伝わっていない結果と言えます。

学校で家庭のストレスを発散するお子さんは、学校で当然注意されます。保護者も呼び出されたり、電話で注意を受けたりします。
  ですが、この後お子さんをただ叱ってしまうと、また反動から、学校で荒れることにもつながりかねません。「態度が悪いのは、結局自分にとってマイナスにしかならない」ことを子どもが自覚できなくては、意味がないのです。

こういう生徒の多くは、「どうせ成績が悪いから」、「面倒くさいから」などと言って、課題を逃れようとします。私は、よく、生徒にこのような話をします。
  「全員が100点を取る必要はないの。苦手な人がいることは、わかっているから。でも、苦手でも一生懸命努力してほしい。その努力を、きちんと見ているから。そして、努力しないで社会で一人前に生きていくことは、絶対できないから」

また、強く反抗できない生徒は、課題や提出物を紛失などしても、嘘をつくことがあります。

「その日休んだので課題プリントをもらっていません」
(実際は登校しており、自分がプリントを紛失したための言い逃れ)

「課題は先生の机に昨日置きました」
(課題を面倒くさがり、実際には出していないのに出したことにしたい)

  このように、教員側から見れば、すぐに嘘だとわかるような形で現れます。悪質な場合、多教科で嘘をついていることもあります。少しでも面倒くさいことからは逃れたい、という気持ちからのようです。

怠け癖のあるお子さんには、たとえば、注意などの形だけではなく、このように普段の会話などでも話していただきたいです。

「嘘って、必ずどこかでぼろが出たり、ばれるものだから」
「嘘をつく人は、社会で通用しないから」

保護者の皆さんが、実際に出会われた、嘘をつく人の話、騙されて困ったことなどを交えて下さい。

お子さんが、保護者から見て大事な存在だと伝わっていないと感じられる家庭もある一方、困難な社会状況を反映してか、家族に感謝している生徒も多くいます。たとえば、

「お金がかかる私立校に行かせてくれて嬉しい」
「今は○○部でがんばって、将来は親孝行したい」

など、大変けなげで、私も自分の思春期にこんなに親に感謝していたかどうか、我が身を振り返って反省することも多いです。

ただ、お子さんの思考が、このようなレベルのままで許されるのは、中学生くらいまでです。高校生になれば、将来の進路を具体的に考える時期に入ります。「自分も含めた、家族が生活できる(自分が義務教育でない学校に通える、習い事ができる)のはなぜか」、社会とのつながりを考え、「自分は社会で何ができるのか、どんな仕事をしていけるか」調べたり、将来を考えていけるようにする必要があります

社会ではどのような仕事に注目が集まっているのか。それはなぜなのか。自分にその仕事は向いているのか。向いていないとすれば、何が向いていると思えるのか…。
  あるいは、保護者の仕事で、今どのようなことが行なわれているのか、おおまかに話されても良いでしょう。ニュースと関連させられる話題があれば、それを交えても構いません。

このためには、一緒にニュースを見る、話し合うなど日々の小さい積み重ねが大事です。こういうものは突然できるようになるわけではありません。週末の食事時など、工夫してみて下さい。

このように強調するのは、今、大手企業などで、大学生の採用で「当初の予定から定員割れしている」ケースが相次いでいる、との報道があるからです。「日本経済新聞」で、「ある企業の採用試験で、小論文の内容が大変悪く、採用できるレベルではない者が2割もいた」、「金融業界を中心に採用予定者が定員割れをしている」いう記事を見ました。(なお、「日経」は、登録すれば無料で、一部記事が、電子版=web版として購読できます)
  つまり、「採用できるレベルの大学生だけ採用した結果、予定数を下回った。しかし、レベルの低い学生は不要なので、追加採用はしない」という意味です。
  大学生の就職活動が大変だ、という報道を聞かれる方は多いと思います。実際に深刻だとは思いますし、気の毒だと感じます。

ただし、内定が出ない大学生の中に、「指示されたことが理解できる読解力や思考力がない=社会人としてのスタートラインに立つ資格がない」者がいるのではないかと思います。学校を選ばなければ、簡単に大学生になれる時代です。勉強をしていなくても、それまでは大学に進学できたので、同じように就職もできると勘違いしている者もいるかもしれません。

私に、「人柄が良ければ、成績が悪くても採用してもらえるんじゃないんですか」と言った高3の生徒がいます。このような生徒が、大学で成長できなければ、勉強をしないままでも採用されると思っていても不思議ではありません。

国語教員として、生徒たちの文章を日々読んでいる立場から発言しますと、「日常でどの程度ニュースに触れ、また、身の回りのさまざまなことについて、深く考えて行動しているか」は、文章を読めば一目瞭然です。それは、企業などでも、採用ご担当の方は同じだと思います。

お仕事をされている保護者の皆さんは、容易に想像ができるはずですが、「指示が理解できない、指示を誤解する」、「意志の疎通ができない」同僚は、職場で困った存在になっているのでありませんか。
  確かに、共に働く上で人柄は重要ですが、現在のような困難な経済状況で、指示が理解できない、思考力が低いと思われる学生を採用したい会社があるとは、決して思えません

お子さんに伝わっていてほしいことを、根本的なことから、社会人になるための準備まで書きました。1日でできることではないので、気が遠くなりそうに思われた方もいるかもしれません。

でも、少しずつでも本気で、時間をかけて取り組んだことは、必ず結果として現れます。また、このようなことは、学校でだけ、家庭でだけ取り組んでも、子どもは「必要ない」などと思い、結局身につかない、という結果になりかねません。

どのようにしたら良いかわからない、また、今回記したこと以外に、「我が子に伝えたいことがあるが、どう伝えれば良いかわからない」などの場合、感想掲示板やメールなどで、ご相談いただければ、メール、また、この連載記事などでお答えしていきます。


【今回のまとめ】
  1. 大事に思っている、愛しているというメッセージが子どもに伝わっていることが大前提。幼い頃ならためらいなくできたハグも、思春期はしにくくなるので、メールなどで構わないので、工夫して伝える
  2. 大事なので、良いことも悪いことも正しく伝える信念を持ち、そういう姿勢だと子どもに折に触れ伝える。悪いことが改善できねば、社会で通用しないことを理解させる。理解できていない生徒は学校で何かしらのトラブルを起こしている
  3. 困難な社会状況を反映してか、家族に感謝している生徒も多い。ただ、それだけで許されるのは中学生まで、高校生以上は「家族が生活できるのはなぜか」社会とのつながりを考えさせ、「自分は社会で何ができるのか、どんな仕事をしていけるか」行動していけるように仕向ける
  4. 就職活動の厳しさが伝えられているが、「質の高い学生を採用する」志向が強まり、採用定員割れしている上場企業の報道もある。しかし、「勉強せずに大学まで入るのが当然」と思って育った場合など、小論文などで大学生にふさわしくない学力・思考力が必ず表れる。一緒にニュースを見る、話し合うなど小さい積み重ねが大事

2010.9.29 掲載

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