WEB連載

出版物の案内

会社案内

West Side Story 「ウエストサイド物語」誕生50周年

ミュージカルの定番「ウエストサイド物語」がブロードウエイで誕生以来、この9月26日で50年。四季は1974年の東京初演から800回以上の公演を重ね、今回の公演は約12年目の再演となった。(オリジナルプロダクション 演出・振付 ジェローム・ロビンス 音楽 レナード・バーンスタイン 作詞 スティーヴン・ソンドハイム 台本 アーサー・ロレンツ 日本プロダクション 演出 浅利 慶太 翻訳 倉橋 健 訳詩 岩谷 時子)

photo

「もう、そんなになるの?」50年を迎えるとは!ブロードウエイ公演中に留学生だった私はミュージカルといえば豪華絢爛、華やかなハッピー・エンドが好きで(今もそうだが)、「ニューヨークのプエルト・リコ移民とポーランド移民系非行少年の問題がミュージカルになるなんて!」納得が行かなかった。

ところが冷戦問題権威のニューヨーク・タイムズ記者がモスクワからニューヨークに帰るなり取り上げたのが、米ソ関係ではなく足元の非行少年問題。そこで社会問題見学のつもりで見たウエストサイド物語だが、シンプルな舞台装置の中で繰り広げられるその強烈なダンスの迫力とクラシック、ジャズ、ラテンの境界を越えた音楽性に衝撃を受けてしまった。


ロメオとジュリエット

photo

プエルト・リコのティーン・エイジャーのグループ「シャーク団」とポーランド系移民のティーンを中心とする「ジェット団」は共にマンハッタンの北ウエストサイド地区を縄張りとして競っている。「シャーク団」のリーダー、ベルナルドの妹マリアと「ジェット団」リーダー、リフの弟分トニーは少年係の警察官が仕掛けたダンスパーティーで出会い、一目で恋に落ちる。敵方同士が恋するシェークスピアのロメオとジュリエットの写しである。

ところが、マリアは弟分のチノと結婚させようとベルナルドがサンフアンから呼び寄せたのだ。

縄張り争いの決闘騒ぎの中でベルナルドは飛び出しナイフでリフを刺し、決闘を止めに来た筈のトニーはそのナイフでとっさにベルナルドを刺してしまう。ベルナルドの婚約者でありながらアニータはマリアからトニーへの伝言を伝えるため「ジェット団」の溜り場を訪れたが、「ジェット団」の彼女にたいする侮辱に怒り、「マリアはチノにピストルで殺された」と告げてしまう。

絶望したトニーは町に彷徨出てマリアと出会うが、折から彼を探していたチノにピストルで撃たれ、マリアの腕の中で息絶える。マリアはピストルをかざしながら少年たちに抗議する。警官たちが駆けつけた時にはいがみ合っていた二つのグループから二人ずつトニーの遺体を捧げて歩き出し、ベールをかけたマリアと少年たちがその列に従う。


photo

ミュージカルの古典

世界の富が華やかさを競うマンハッタンの底辺で居場所を求めて争う被差別人種差別グループの非行少年問題という重いテーマを扱いながら、巨匠バーンスタインの音楽とロビンスの振付けはこの作品を初演からミュージカルの古典にした。

指を鳴らしながら踊る少年たちのいなせな歌とジャズ・ダンス「クール」、「シャーク団」の女性たちが親米派とプエルト・リコ派に分かれて激しく歌い踊るラテン・ナンバー「アメリカ」。マリアとトニーが歌うラブソング「トウナイト」など、世界のポピュラー音楽の定番となっている。

photo

劇団四季は初演以来、「ウエストサイド物語」をレパートリーに加え、節目ごとに再演してきたが、女性ダンサーはもちろん、再演のたびにデビューしてくるその男性陣の層の厚さと身体能力の高さは驚きだ。

「クール」で頭上高く蹴り上げる脚の見事さ、決闘場である高架道路の針金の塀をよじ登り、180度回転してひらりと飛び降り、即、群舞で格闘を激しくみせる超絶テクニック!

これらの若手ダンサーを従え「シャーク団」のリーダー、ベルナルドを今も演じ切る四季トップ・ダンサー加藤敬二の全身の筋肉は鞭でできているのだろうか? (四季劇場 「秋」12月9日まで)

2007.10.15 掲載

著者プロフィールバックナンバー
上に戻る