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Guys & Dolls

異常寒気が居座るおかげで桜花が散り残っている日比谷劇場街に女性群があふれている。シアタークリエでは"Guys & Dolls"が4月3日に、帝国劇場では"Rebecca"が4月7日に開幕したからだ。


"Guys & Dolls"

ブロードウエイ大ヒット・ミュージカル"Guys & Dolls"は1950年代には映画にもなり、マーロン・ブロンドの賭博師スカイ・マスターソンとジーン・シモンズの救世軍軍曹サラ・ブラウンのカップルは、東京の映画ファンに古き良きニューヨークを印象づけた。

今回のクリエ・ミュージカルはニュー・バージョン。役者も背景も若返っている。小太りのブロンドに代わってスリムなイケ面スカイ〔内博貴〕はサラ〔笹本玲奈〕をハバナ料理店ではなく、豪快に本物のキューバはハバナのリゾートへつれてゆく。


カリブ海の陽気な酒 Bacardi

サイコロ博打の賭場代千ドルに困るネイサン〔錦織一清〕が「どんな女でもオトセル」と豪語するスカイに清純なる超堅物、救世軍の女軍曹サラとのデートを賭けたのだが、参加者不足で本部からニューヨーク伝道所閉鎖命令を受けたサラは、罪人10人を連れてくると約束するスカイの誘いに応じたのだ。

バーなど入ったこともない「ミルク・シェーク」を注文するサラに、スカイは「バッカルディ」割をバーテンダー注文。口当たりのよいミルク・シェークをココナツのカップ5−6杯も飲んだサラは、気持ちよく酔っぱらって段々とスカイに惹かれてゆく。

余談だが、キューバ産のバッカルディーのアルコール度は40度から75.5度まである。ウイスキーどころかウオッカ並みの強烈なラムだ。

スカイにしな垂れ掛かるセクシーなキューバ女には一発パンチを見舞い、群がってくる男どもにも無差別攻撃。救世軍の硬い殻から解放されてゆく笹本玲奈の酔っぱらいぶりが可愛い。スカイはサラを抱きかかえてニューヨーク行き最終便にのる。

ブロードウエイ夜明け前、紫色の空の下、賭けのデートから本気になってしまったスカイは、サラに自分の本名(オべダイア)まで打ち明ける。カリブ海リゾートの乱痴気騒ぎから一転ロマンチックな舞台となる切り替えぶりがスマートだ。


"Luck be a lady tonight"

ところが、自分の留守中に伝道所がデトロイトの賭場になったと知ったサラは、裏切られたと怒り狂う。「自分は知らなかった」と弁明するスカイとは口をきこうともしない。

一方、賭場に困ったネイサンはニューヨークの下水道の中で開帳する。そこに現れたスカイが伝道所での告白に一人千ドルを賭けてサイコロを振う。

賭博師仲間と歌い踊る"女神よ今夜は淑女でいて"は。内博貴の白いスーツに長い脚がカッコよく、アイドル俳優の面目躍如たる場面である。

スカイは「デトロイトとの賭けには負けた。ハバナには行ってはいない」と宣言し、そのまま伝道所を出てゆく。伝道所に現れた賭博師たちが「スカイとの賭けに負けて」と告白するのに対しサラは混乱するが、本部から伝道所閉鎖のために訪れた救世軍のカートライト将軍は「『悪を以て悪を制す』素晴らしいアイデアだ」と太っ腹にもスカイを褒め上げる。

スカイを追い求めるサラは、ネイサンに14年間も婚約者のままでいるキャバレーのダンサー、ミス・アデレイド(高橋由紀子)と偶然にも出会い、二人は結婚への決意を固める。

フィナーレの結婚式へ救世軍の赤い制服で大太鼓を叩きながら登場する博貴に、満場の笑いと拍手。錦織一清、田中ロウマはじめミュージカルのヴェテランと若手に支えられた内博貴のシアター・クリエ・デビューは、チケットの確保が難しい盛況ぶりだ。(シアター・クリエ 4月30日まで)

2010.4.23 掲載

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