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ええから加減

日比谷のお洒落なシアター・クリエが浪速のコテコテの演芸場に変貌した!
  頭の先から足の先まで芸人魂にあふれる藤山直美。彼女が高畑淳子を相方に上方女性漫才コンビを演じるとなると、劇場は中年女性を中心とした長年のファンで満席。ロビーには大入りの提灯が高々と掲げられ、夕方5時からの開演を前にお寿司とお弁当が飛ぶように売れている。この分ではオヒネリやお札の紙飛行機が舞台めがけて飛ぶのではなかろうか?


ストーリー

 「美貌で売っている海野宇多恵です」(高畑淳子)
 「貧乏で売っている海野濱子です」(藤山直美)
  そこそこ売れている中堅女性漫才25年のコンビだが、何かにつけて反発する仲の悪さでは有名である。男社会である漫才界。師匠は頼りにはならず、若手人気コンビには追い上げられて二人のフラストレーションは溜まるばかり。濱子の夫(赤井英和)は料理買い物に励む理想の主夫だが、濱子にはそこが不満。

ええから加減

ところが或る日、マンネリで仕事をしているかに見えた宇多恵が突如として今年の上方演芸賞を目指そうと言い出す。年間に最も優れた芸人たった一組に贈られる賞を取るのに、あと数カ月の余裕しかないのだ。鋭いツッコミの濱子と天然ボケの宇多恵は時代に合った新ネタを作り、持ちネタは練り直して心身の限界まで全国営業。

赤いスーツの藤山と青いスーツの高畑が舞台の置かれた数本のマイクの間を駆け抜けては漫才し、呼吸もタエダエなのに平然と笑って観客を楽しませるドタバタとギャグが絶品だ。持ちネタもAKBから更年期、暴走族とその日の観客に合わせて融通無限。こればかりはクリエ演芸場に出向いてライブでお笑い下さい。この体力、気力の限界に挑戦した巡業中に、仲が悪かったコンビもお互いに相手の人柄を認めざるを得なくなる。

中年女性漫才と小馬鹿にしていた若手コンビも、お互いに「間」が取れないと「ダメだし」を乞う。「間は自分で決めるものでも相方が決めるものでもない。お客さんが決めてくれはる。(間は客層によって毎日変わる)」と教える宇多恵。

濱・宇多恵コンビは見事に上方演芸賞に輝き、晴れてそれぞれの道を歩き始める。

ええから加減

それにしても松竹新喜劇のプリンス藤山寛美譲りの直美の「間」は、完璧に観客を掴んでいる。(シアター・クリエ 7月29日まで)


2012.7.9 掲載

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