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私のDarlin'

脚本・演出・主演というのは実にオイシイ役割だ。黒木瞳のような天下の美女を好きなままに動かし、しかも恋人から亭主役まで務められる。しかし、水も滴る美女を二度までも「池ポチャ」にするのはいささか「役得」の取りすぎではなかろうか?!
  ハチャメチャに笑えるミュージカル「私のDarlin'」で、この三役を兼ねる玉野和紀は実に気持ちよさそう。


ストーリー

公園の噴水池前で占いの机を出す夢子(黒木瞳)。通行人は誰も立ち止まってくれない。
素通り客72番目の橘純一郎(玉野和紀)を強引に捕まえて、手相を見ようと争ううちに、噴水池に2人でザンブリ。純一郎の背中には大きな鯉が入っている。

私のDarlin'

「二人は池に落ちて恋に落ちた」駄洒落に合わせて大真面目に紅白模様の錦鯉たちのコーラスが登場する。

純一郎は隅田川虎衛門の筆名で恋愛小説を書くがさっぱり売れず、占い師から便利屋で派遣業に転業した夢子が一家を支える。
  橘家の隣人は大人になっても人見知りの獣医(石川禅)とコワイ竜崎組の跡取り娘の麗華(愛音羽麗)と龍二(坂元健児)夫妻。夢子の自宅が事務所を兼ねているため、隣人とスタッフの出入りでいつもにぎやかだ。

玉野脚本はキャストにあてがきのためか、ファンサービスも用意。宝塚を退団したばかりの愛音がホストクラブのヘルプに派遣されるスタッフの接客訓練のために士官のコートを肩にかけて思い入れたっぷりに男役流の初対面の挨拶をする。客席からは「キャー!」の大歓声と笑い声。玉野ワールドは宝塚と吉本興業のマリアージュか。
  結婚10周年「9年と365日」のパーティーでの記念撮影で休憩となる。なぜか純一郎の姿が消えている。

私のDarlin'

第二幕目になるとミュージカルらしくなる。
  「9年と365日」の結婚記念パーティーは、夢子の筋書きを純一郎が小説にした夢の世界に入り、恋の館「Love Fete」での歌とダンスが冴えている。新歌舞伎座のパレード、「テニスの王子様」や宝塚のパロディーあり、客席は笑いが絶えない。中でもストレイトに圧巻なのは玉野と黒木のタップ・ダンス。
  ここまで冴えない中年男だった玉野が、粋で颯爽としたダンサーに変身して、黒木瞳をパートナーに舞台狭しと得意のタップ・ダンスを繰り広げる。これなら玉野和紀「作・作詞・演出・振付」を名乗る値打ちがある。

東京で思い切り笑いたければ、シアタークリエへどうぞ! (4月14日までシアタークリエ)


2013.4.1 掲載

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