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マイ・ロマンティック・ヒストリー

2010年エディンバラ・フェスティバルでフリンジ最優賞を得た「マイ・ロマンティック・ヒストリー」(作:D.C.ジャクソン、演出:栗山民也)は、スコットランド・グラスゴーを舞台に冴えないアラ・サーティーの男女と彼らを取り巻く同僚、友人家族とのウイットに富んだアケスケな台詞劇(翻訳 小田島恒志)。ミニマムの舞台装置にミニマム・キャスト。まさに省エネ、省資源の小劇団向きの作品だが、山椒は小粒でもピリリと辛い。

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人生に臆病な三十過ぎのトム(池内博之)が就職した先では、適齢期(そんな差別用語が許されれば)を過ぎたアラサ—の女子社員サーシャ(加藤忍)が手ぐすねをひいて新人男性社員を待っている。同僚のエイミィ(中越典子)の相手としてだ。彼女はお節介にもトムの就職一週間目に飲み会を設定する。

泥酔したトムはエイミィのアパートで一夜を過ごす。

マイ・ロマンティック・ヒストリー

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「ガンジー翁のロマンス版、色恋には無抵抗主義」を標榜するトムは、積極的にアタックしてくるエイミィをなんとか振り払おうとする。過去に付き合って振られたアリソン(これも加藤忍)が忘れられないからだ。一方エイミィも昔のボーイフレンド、カルヴィン(土屋裕一)のマッチョな姿が忘れられない。
  同じ会社で働く二人は意思を明らかにできないまま、だらだらと付き合っている。

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この作品の特徴は、主人公男女二人の場面割り振りを平等に扱っていること。但しトムが心境を傍白すれば、エイミィも同じように観客に語りかけるので舞台が間延びしてしまう。

これを救っているのがサンバ・ドラムの愛好者サーシャの舞台狭しと翔たく動きと、カルヴィンの筋肉美。トムの祖母、エイミィの母、他高齢者の役割を一手に引き受けている春風ひとみは、トンガッタ作品にゆとりを示す。

過去の恋愛相手の実像虚像に悩まされている二人は、エイミィの妊娠という現実にどう対処するのだろうか? (8月26日まで/シアタークリエ)


2013.8.26 掲載

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