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世界初演ミュージカル「レディ・べス」

在位45年の長きにわたり英国を統治し、大英帝国の礎を築いた処女王エリザベス一世の若き日の姿を描く。レディ・べスとして異母姉メアリー・チューダー(英国女王)から受ける迫害、吟遊詩人ロビンとの恋、カトリック教とプロテスタント教との確執の中で彼女がどう生き抜いたのか。脚本・歌詞/ミヒャエル・クンツェ、音楽・編曲/シルヴェスター・リーヴァイ、演出・訳詞/小池修一郎の「エリザベート」トリオの描く歴史ミュージカル大作で、日本資本によるミュージカル作品として海外への輸出も視野に入れている。

筆者は4月13日のオープニングと5日後の18日でダブルキャスト2組を観劇することができた。初日と5日目では演出も手直しされ洗練されているのでハンディキャップは否めないが、宝塚出身の花總まり(レディ・べス)には貴族としての説得力と品格がある。ロビンとの恋を捨て英国臣民統治のため王冠への階段を歩む姿には客席のハンカチが目立った。

帝国劇場の「守護神」山口祐一郎と元劇団四季スター石丸幹二が演じる、レディ・べスの家庭教師ロジャー・アスカムは、それぞれの個性が表れている。山口がいかにも重厚なのに対して、石丸は理性的。後者の明解なセリフで16世紀の英国でべスのおかれた環境が理解できた。

ミュージカル「レディ・べス」

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山崎郁三郎と加藤和樹の吟遊詩人ロビン・ブレイク、平方元基と古川雄大のスペイン王子フェリペには今後の活躍が期待される。

ミュージカル「レディ・べス」

ミュージカルには観終わっても響き続ける曲があるものだが、不貞の濡れ衣で馘首されたべスの実母アン・ブーリン(和音美桜)の歌う「あなたは一人じゃない」が印象深い。

この超大作で特筆するべきは舞台に君臨する天文時計(美術/二村周作)。べスの父ヘンリー八世のパレスにあった巨大な天文時計を模したものだが、16世紀当時のヨーロッパの世界観やべスの運命を象徴するものとして迫力がある。(5月24日まで 帝国劇場)

2014.4.28 掲載

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